コラム

「地獄の猛暑7月の事件あれこれ」

karakimami

 7月は史上最高の暑さに見舞われたイタリアです。南部プーリア州レッチェでは女性(59歳)が42度の高熱で自室で倒れているのを息子が発見、救急搬送されました。当時レッチェでは史上最高に暑い日が続いていたので、高熱の原因はそれが原因でした。

ちなみに熱中症のことをイタリア語でColpo di calore(直訳すると熱の一撃、英語のヒート・アタック)またはIpertermiaと言います。一般的にはColpo di caloreが定着しつつあるような気がします。

閑話休題。

ともかく病院に搬送された女性は回復することなく亡くなりました。理由は熱“を冷ます氷がなかった”から…死亡後数分で氷が届いたことを思うと、あまりのタイミングの悪さに言葉もありません。アフリカ熱波による猛暑への準備をメローニ首相は各病院へ指示していましたが規模が小さい病院では万全の体制をとることは難しかったのかもしれませんが。

昨夏も猛暑でした。2022年、欧州全体で5月30日~9月4日までの猛暑による死者は6万1千人、イタリアに限れば1万8010人。死亡率に関して言うとイタリアは欧州で最高でした。イタリアの建物は屋内がとても涼しい作りで、直射日光を遮れば夏でもエアコン不要でかなり快適な状態で過ごせます。そのためエアコンがない家が多いです。2023年7月のイデアリスタ・ニュースの記事によると不動産市場の物件でエアコンが付いているところはわずか31%、それも賃貸住宅のほうが多いということです。具体的には売り物件&賃貸物件合計58万件(2023年7月3日時点)を対象に調べた結果で、地域別ではマントヴァ(ロンバルディア州)の物件は61%がエアコン付きで最も割合が高く、次いでトレヴィーゾ(ヴェネト州)58%、ヴェローナ、モデナ、パドヴァの3市は57%と言う結果でした。北方地域、通常であれば涼しい地域もここ最近は猛暑なのですけれど、エアコン付き住宅はまだ少ないですね。ただし一番エアコン無住宅が多かったのは中部アブルッツォ州アークイラ(ラークイラ)です、アッペンニン山脈の盆地にあるためもっとも標高が高い州都なので涼しいのが理由でしょう。2位はフランス語も公用語になっているヴァッレ・ダオスタ州のアオスタ、モンブランの山間に位置するため通常であればとても涼しい場所で、そこではエアコン付物件は4%となっています。今後は夏イタリアに行く場合は滞在先のエアコン有無を確認することは絶対必要条件ですね。皆様お忘れなく。

さて、地獄の猛暑のなか、78歳のグローリア(仮名)が亡くなりました。彼女は治療できない癌患者で、イタリアで安楽死を選択した2番目の人です。イタリアでは2019年のカッパート・アントニアーニ事に関する憲法裁判所(最高裁)の判決242/2019により、一定の条件下の安楽死が認められています。イタリアでいう安楽死とは、不治の病の患者や病気が末期状態の患者の生命を絶つことを意味し、積極的に第三者が関与するものではありません。一方、自殺幇助は犯罪なので、自ら毒物を摂取しなければいけません。で、安楽死には方法が二つあり、一つは薬物を使用する積極的安楽死、もう一つは患者の生命維持に必要な治療をやめる消極的安楽死、です。積極的安楽死が合法化されている国は、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、スペイン。消極的安楽死が合法の国はインド、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ハンガリーです。自殺幇助が合法の国はスイス、コロンビア、アメリカ(ワシントン、オレゴン、バーモント、モンタナ、カリフォリニア)です。

実はイタリアでは安楽死、自殺幇助ともに非合法ですが、法律は患者(患者が無能力の場合は法廷代理人)の同意があれば、不必要あるいは害になると見なされる治療をやめることを認めています。すなわち、患者に死をもたらすからという理由ではなく、患者に苦痛を与えないために患者にとって有益ではない治療をやめることが可能なのです。

安楽死合法化を目指す“ルカ・コシーニ協会“や“安楽死に関する国民投票“の標語に「La mia vita appartiene a me」(私の命は私に属す)がありますが、ヴァチカンの見解は「任意の安楽死は、どのような形であれ殺人になる。人間の尊厳と、創造者である神を冒涜する行為である(2324)」です。

宗教と安楽死、非常に難しい問題ですね。

ではまた

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