コラム

「ベルルスコーニの遺言書」

karakimami

7月13日、ベルルスコーニの遺言書が開けられて莫大な遺産は5人の子供達、“ベルルスコーニの最後の女”であるマルタ・ファシーナ、弟のパオロ、友人である政治家マルチェッロ・デッルトゥリに相続されることになりました。ではベルルスコーニの財産はどのくらいあるのかというと、推定50億€と言われています。Fininvestの価値だけでも30億€、これに加えて7億€相当の不動産屋や芸術品、ヨットなど7億€分も加えなければなりません。ベルルスコーニの資産の根幹であるFininvestの株の53%は先妻との子供2人マリーナとピエールシルヴィオ、残りは2番目の妻との子供3人バルバラ、エレオノーラ、ルイジが相続することになりました。相続分が最も多いマリーナとピエールシルヴィオの相続額は少なく見積もっても15億€、残り3人の相続分は6億6千万€になるとみられます。一方“最後の妻”であるファシーナと弟のパオロには各1億€、デッルトゥリには3千万€贈られました。

 2022年1月19日の日付の遺言書は手書きで封もされていなかったので、入院前に大慌てで書いたものと思われます。さて、ここで問題が。そう、5人の子供のうち誰がファシーナとパオロとデッルトゥリに払うのか?3人の相続分は2億3千万€と大金ですから、解決には数年かかるぐらいに言われています。さらに最も重大な問題は、遺言書に末子ルイジの名前がなかったこと!ベルルスコーニには3通の遺言書があるのですが、最新の遺言書に名前がなかっただけで他の2通にはちゃんと名前があります。入院を前に慌てて書き忘れたようです。まあ、この一件でもわかるように直筆の遺言書とはいえ雑過ぎるということで、5人の子供たちは遺言書通りにする前に父親の財産全体(死亡時の財産状況及び生前分与も含めてベルルスコーニが生涯で行った寄付全てを加算する)を見直す作業をしているそうで、これには数年かかるとか。因みに民法566条と567条によると子供(養子も含む)は、父母の財産を均等の割合で相続できます(子供や配偶者に養われている場合は除く)。

 ベルルスコーニが公にしていた事実婚妻ファシーナですが、ベルルスコーニと暮らしていた家、アルコレにあるヴィッラ・サン・マルティーノを10月一杯で出ていくよう子供たちに要求されたとメディアが報じています。子供たちはファシーナの相続分は認めています。ラ・レプッブリカ紙によると相続分を認める見返りにファシーナを家族とは認めず、アルコレの邸宅も立ち退くように求められたとか。2016年のチリンナ法によると同性・異性共に配偶者の居住権が守られることが決められています。相続人ともめた場合には新しい家を探すための時間が与えられると法律にあるのでファシーナは邸宅から蹴りだされることはなさそうですね。ところでファシーナはフォルツァ・イタリア党所属の下院議員です。次回の選挙はどうなりますか。

 そして遺言書自体に問題があるとも言われています。筆跡学者が遺言書3通を比較分析した結果、最新の遺言書にはおかしな点が多々あると言います。2006年の遺言書と2020年の遺言書に異常な点は見られず、2022年の遺言書には詳しく調べた方が良い点があるというわけですね。モデナの裁判所でコンサルタントをしている筆跡学者Giachinは相続人によって異議を申し立てられた遺言書を数多く見てきました。Giachin曰く、特におかしな点は2022年の遺言書にはファシーナとデッルゥトゥリへ遺産分割の記載が追加された一方末子ルイジの名前がないことですが、もっと際立った相違点は先の遺言書との筆跡の違い。原因はベルルスコーニの高齢化と、病院での治療を前に書いた時の切羽詰まった状況がそうさせたと言います。Dalleやquelloなどの単語やサインにも慌てて書いた様子が良く分かる兆候が表れているそうです。長男ピエールシルヴィオの綴りを間違えた、文法を間違えた点などは通常では考えられないと言います。今後相続人の誰かが異議申し立てをした場合、先の2通の遺言書と明らかに異なっている点が厳しく追及されるかもしれません。

 さらにサレント大学の教授で公証人でもあるダマシェッリもまた、この遺言書で使われている言葉は的確ではなく、またベルルスコーニが一人で書いたことも普通ではないと言います。治療を前に急いでいたことが分かると言っていますが、子供たちへの生前分与などを考えると争いの原因になり得るそうです。

 最後に相続税はどうなるのか?実に下衆な好奇心ですね。配偶者及び直系の子孫(子、孫、両親、祖父母)は手取りの4%。直系親族の相続税が免除される金額は100万€。その他の親族は4頭身まで、直系の姻族及び傍系の姻族から3頭身までは6%かかります。

 ベルルスコーニの遺言書、果たしてすんなり収まるのでしょうか。莫大な財産の行方を鵜の目鷹の目で詮索するイタリアのメディアなのでした。

ではまた

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