コラム

「水害といえば…」

karakimami

G7広島サミット2023では初来日したメローに首相が原爆資料館を見学後辛そうな表所をしたことが話題になりました。メローニ首相には6歳の娘がいるので、幼い子供を持つ母親として思うこともあったと推察します。今回の来日前からイタリアのエミリア・ロマーニャ州とマルケ州では尋常ではない規模の水災害が起きていました。日本滞在中も被害は大きくなる一方で、天気が回復し水が引き始めたのは今週に入ってから。日本滞在中はメローニ首相および政府関係者は夜を徹しての対応だったのではないかと思いますが、首相は早々に帰国し間髪入れずに被災地に行き、被災者に対する全面的な支援を発表しました。

 当初は、雨続きは旱魃に苦しむポー川流域にとって恵みになりました…が、今度は反対に水没する厩舎の牛や羊を助けなければならなくなりました。一方ラツィオ州の農家さんたちにとって五月はもう何が何だかわからないようです。Raiニュースによると今月は maggio ならぬ maggembre。Maggio というのはイタリア語でいう5月のこと、マッジョと発音します。ところが今年はまるで秋のような天気なので9月を意味する settembre (セッテンブレと発音)と掛け合わせた造語 maggembre が巷に登場したというワケですね。意味としては“秋もどき”といったところでしょうか。イタリア語学習者であれば当然気が付くと思いますがイタリア語では9月 settembre 以降、10月 ottobre 11月novembre 12月dicembreとこのように -mbre で終わる言葉が続きます。だから秋を意味する言葉の語尾と maggio を合わせた造語なのを分かりましたね。とまあ、このように涙目になっているラツィオ州の農家さんが何を言いたいかというと、季節の変わり目が変わるのが問題なのではなく果物と野菜の時期が変わってしまうのが問題だとか。ローマ農業食品センターは「メロン、スイカ、サクランボ、ビワの売り上げが停滞している。キロメートル・ゼロのサプライチェーンと地方生産物(ローカルプロダクト)と輸入品および輸出入について市場と消費者を巻き込んだ何らかの対応策を模索しなければいけない」と話しています。気候変動によって水道代やエネルギー料金も勘定に入れなければならないので、農業関係者は本当に苦労が絶えません。イタリアは観光業が目立ちますが一方で農業国でもあり、“メイド・イン・イタリー”というブランドをとても誇りに思っています。気候変動に翻弄されつつ、そのブランドを支えるために四苦八苦する農家さんの苦労は大変なものですね。とにかくこんなことにはなりませんようにーE dopo maggembre arriverà mica giugnaio? (“秋もどき”の5月の後に“冬もどき”の6月はやってこないよね?) ここでいうgiugnaioは何の造語か、イタリア語学習者は考えてみよう!

 水害と言えば半世紀経った今でも語り継がれる洪水があります。フィレンツェを訪れた人ならその話を聞いたことがあるでしょう。今を去ること55年前、1966年11月4日フィレンツェを流れるアルノー川が氾濫し、35人の死者を出しました。損害額は天文学的数字になったと言います。この窮状を救うために世界中から“泥の天使たち”がやってきました。洪水が起きたその日は金曜日の祝日でした。この時期イタリア半島の広範囲に何日も非常に強い雨が降り続きました。その日の朝市民が目覚めた時アルノー川が全てを引きずりながら襲ってきました。サンタ・クローチェ地区のネーリ通りにある銘板には、洪水による水位が達した最高点4m92㎝が記録されています。犠牲者は市内17人、郊外で18人でしたが、祝日でなければ犠牲者はもっと多かったろうと言われています。フィレンツェにとどまらず、マレンマは水に浸り、グロッセートでもオンブローネ川と支流のオルチャ川が氾濫しました。その他ヴェネト州の多くの川も氾濫、ヴェネツィアは“極端な高潮”(アックア・アルタと言う。ヴェネツィア特有の言い方)で水に浸かり、フリウリではタリアメント川が氾濫など中北部の広範囲にわたって大水害が発生しました。ちなみにフィレンツェでは美術館や博物館の収蔵品にも大きな被害が出ました。

 55年前と違って今回の水害は気候変動が原因であり、これからもこのような規模の災害は続くと識者は述べています。日本でも同様に災害規模は大きくなるばかり。私たちは真剣に未来を考えて行動するべきなのでしょう。

 

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