コラム

「命がけで海を渡る不法移民&その他ニュース」

karakimami

見事な試合で日本が優勝し、感動の嵐でWBCが終わりました。イタリアはMike Piazza監督率いるチームが準々決勝で日本に負けました。日本では連日お祭り騒ぎでしたが、イタリアでは話題にならず終わってしまいました。この間、イタリアの話題はサッカーのヨーロッパ・リーグ、税制改革など、サッカー王国で野球の存在感のいかに小さいかを実感しました。

話は変わって、今回のコラムでは時事ニュースを幾つか取り上げたいと思います。

去る2月26日トルコを出発した木造の難民船が難破し、イタリア南部のカラブリア州クロトーネ県クトゥロのステッカート海岸に80人近い遺体が流れ着いた事件は不法入国の難民に慣れているイタリアでも衝撃的で大きなニュースになりました。実は不法難民がヨーロッパに入る陸路では利用者は減少傾向にある一方で、海路は死ぬ危険があるにもかかわらず増えています。件の難破船の生存者は「出発して4日目に海が荒れた。私たちは祈るしか手立てがなかった。衝撃があって、木造の船の木片にしがみついて各自生き残るために必死だった」と話しました。また17歳のパキスタン人の少年は「出航前、密航業者は(イタリアの)港か海岸に安全に着くかどうかは分からないと僕たちに言った。でも僕たちはイタリア領海内に入ってしまえばイタリアが僕たちを助けてくれるだろうと当てにしていた。船に衝撃があった後、船にいた密航業者のなかで僕たちを助けようとしたのは誰もいなかった2人のカラビニエリ(憲兵隊)だけが海岸で僕たちを助けてくれた。僕も他の人達を助けた。僕は陸に着くまで10分か12分泳いだ」と裁判所で証言しました。

赤ちゃんや小さな子供も犠牲になった難破事故の犠牲者&その家族と、3月16日メローニ首相が官邸で約1時間面会し、遺体の捜索を続けることと差し当たっての支援を約束しました。難民側からヨーロッパで暮らす親戚のもとで生存者がヨーロッパに住み続けられるように具体的に支援してほしいとの要求がありましたが、これに対しては「ヨーロッパの他の国々を代表してイタリアがその要求を引き受けることはできないが、ブリュッセルで開かれる欧州各国首脳との面談でその旨を伝える」と約束するにとどめました。またメローニ首相は生存者に対して「不法に海を渡ってくることがどれほど危ないか認識していますか?」と言ったのですが、メディアでも大きく報道されたこの言葉は効果なかったようですね。3月25日、チュニジア沖で難民船が再び難破し現時点で行方不明者は34人になっていますから。

不法移民がイタリアを目指す海路は3つあります:出航場所はトルコ、リビア、チュニジア。またイタリアに来る移民数は今年だけですでに1万8800人と過去2年間(2021年、2022年)の合計6千人と比較して非常に増えているのが分かります。またトラーパニでは密航業の容疑者4人が逮捕されて現在拘留中、厳罰化もされているのですけれど、来る日も来る日もSAR海域では沿岸警備隊による難民救助が休みなく続く…そして死者が出る難破事故が起きるたびに沿岸警備隊の対応に不備がなかったか検証?記事が出るのでした。メローニ首相は欧州議会で不法移民に対する抜本的対応を訴えましたが、欧州議会の主要課題はウクライナ支援継続と産業のエコロジー化で不法移民問題を検討する時間は短く具体的な成果は得られなかったと左派系のメディアはスーパードライに報道しました。とはいえメローニ首相は冷却関係にあったフランスのマクロン大統領と面談して、不法移民問題、ウクライナ支援、欧州産業政策やエネルギー問題などを話し合い和解しました。首相は記者会見で難民政策草案について満足していると答えていることから、欧州議会で確かな手ごたえを得たようです。

エネルギーといえば、イタリアはもちろん欧州各国で今冬は国民総出で節約して乗り切りました。イタリア政府肝いりで、3億5千万ドルかけてスナム社に購入させたLNGタンカー Golar Tundra がシンガポールから約1か月かけて3月19日の夜トスカーナ州リヴォルノ県ピオンビーノの港に到着しました。Golar TundraはLNG貯蔵・再ガス化設備を備えたLNGタンカーで、定期的にLNGが補充されて再ガス化します。年間50億立方メートルの再ガス化が可能と言うことで、これによりイタリアの再ガス化能力が大きく向上します。稼働は5月半ばから。ちなみにピオンビーノの港では環境活動関連の反対デモが連日繰り広げられています。イタリアのガス供給元は以前はロシア(リビアからも若干)で、天然ガスを年間約110億立方㍍購入していましたが2021年にはわずか30立方㍍になり、2023年は…もうお分かりですね。代わってアルジェリアやアゼルバイジャン、ノルウェー・オランダからの輸入が急激に伸びています。このような状況で再ガス化能力を向上させることが急務でした。2024年夏にはラヴェンナに2台目が配備される予定です。Golar Tundra到着の一報を多くのメディアが“ロシアの脅しに対抗する切り札”と伝えていたのが印象なニュースでした。

ではまた

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