イタリアは連日政治話題で持ち切りです。13日と14日に行われた上院(元老院)と下院(代議院)の議長選出選挙では、上院ではイニャツィオ・ラ・ルッサ(イタリア同胞党)、下院ではロレンツォ・フォンターナ(北部同盟)が選出されました。この人選を巡ってメディアからは「メローニが本性を表した」「この手の政治家を重要な役職に就けるべきではない」など非難の声が上がり、果ては「誰が(彼らに)投票した?」とまるで犯人捜しの声まで出る始末。またEUの他国まで一斉に報道したところを見るとよほど衝撃的な人選だったのでしょう。イタリアのメディアは概ね左寄りですが、この二人の経歴をイタリアのWikiで見てみましょう。
イニャツィオ・ベニート・マリア・ラ・ルッサ
「1947年7月18日パレルモ生まれ。政治家。2022年10月13日から第19議会上院議長。1992年から下院議員、2018年から上院議員を務める。最初はイタリア社会運動・国民右翼に参加、後に国民同盟に移り、2008年から副議長も兼任。2009年に国民同盟が解散しナショナル・コーディネーターとして自由の人民党に合流、その後2012年グイード・クロセットとジョルジャ・メローニと共にイタリア同胞党を結成した。2008年から2011年まで第4次ベルルスコーニ政権で国防相を務めた。第12議会(1994年~1996年)では下院の副議長を、また第17次議会(2018年~2022年)では上院の副議長を務めた。」
ロレンツォ・フォンターナ
「1980年4月10日ヴェローナ生まれ。政治家。2022年10月14日から第19議会下院議長。北部同盟のスポークスマン、同党の副党首。2009年~2018年まで欧州議会議員を務めた。2018年の選挙で下院に選出された。第18議会では下院副議長、その後コンテ政権で家族・障碍者省の大臣に任命され2019年7月までその任に当たり、同年7月から9月まで欧州担当大臣を務めた。2022年の選挙で下院議員に再選された。」
政治家としての経歴を見る限り一見するとそれほど破天荒な人選には思われませんが、ラ・ルッサ最近公開したムッソリーニ胸像収集趣味や、ファシストという批判に対して「イタリア同胞党には懐古主義が入る余地はない」とばっさり切り捨てました。一方フォンターナはシビル・ユニオンやプロLGBTの性教育に反対の「立場をとっています。また妊娠中絶を「世界におけるフェミサイドの第一原因」と定義し、ギリシアの極右政党「黄金の夜明け」にビデオレターを送り、プーチンが君臨するロシアを「社会的アイデンティティを信じる人にとっての模範」と評しています。うーん、なかなか凄い人選ですね。
議長の人選はさておき、政権が変わるたびに出てくる言葉があります。「テクニカル(tecnici)」あるいは「ポリティカル(politici)」という一種の政治用語ですけれど、どういう意味で使われているのでしょうか?外国人にはイマイチ分かり難いので、二つの違いを述べたイル・ジョルノ紙の記事を見てみましょう。
「テクニカルとポリティカルの違い」
テクニカル政府(governo tecnico)とポリティカル政府(governo politico)の違いについて見てみよう。簡潔に言えばテクニカル政府とは、国会内の各政党から選ばれた閣僚と首相で構成されるのではなく、経済、社会学、環境、司法、科学技術の専門家たちから選ばれた政府の事である。紙の上ではテクニカル政府は右派でも左派でもなく、構成員は選挙を経て選ばれるのではなく、能力を基に任命される。近年では債務危機の際、ベルルスコーニ政権後の経済学者マリオ・モンティが率いた内閣(期間:1年半)が最も有名なテクニカル政府である。
一方ポリティカル政府とは国会議員によって構成された政府以外の何物でもなく、何れにせよ通常は国民から選ばれた勢力の方針を反映する。従って政治を主体とした政府であり、政治的多数派で共有する方針と目的に導かれる。ポリティカル政府は外部の人選を排除しない(例えばコンテ元首相)が、これは数少ない例外である。
(訳ここまで)
EU各国大注目の中、メローニ次期首相は北部同盟と連携するのは確実ですが、先日メディアのカメラに偶然写ったベルルスコーニのメモにメローニの中傷が書かれていたことから、メローニとベルルスコーニがかなり真剣に険悪の仲になってしまいました。右派連合早くも瓦解?とまでメディアで騒がれていますが、イタリアの未来にとどまらずEUの未来をも左右する新しい内閣と初女性首相、さあどうなるでしょうか?