コラム

スーパーの棚から消滅する運命のイタリアの炭酸入りミネラルウォーター

karakimami

 猛暑の日本でも”ビックリ報道”されている今夏のヨーロッパの酷暑。20日のイタリアの天気予報によるとローマ34度、ミラノ37度、ナポリ33度と一応30度台をキープしていますが今後熱波のピークが来て40度越えは必至だということです。一方イギリスは19日史上初の40度越え、スペインは45度を超える日もあったほどの酷暑のために一週間で510人が熱中症で亡くなりました。土曜日は僅か一日で150人亡くなったのですが、死者510人のうち321人が85歳以上の高齢者、121人が75歳~84歳、44人が65歳~74歳ということで圧倒的に高齢者が占めています。

 ヨーロッパは家にエアコンがないとよく言われますが、イタリアの中部から南部は以前から夏は暑いのでエアコンを設置ししている家は珍しくないです。日本と比較して暑くてもカラッとしているのでエアコンがなくてもこれまでは大丈夫だったのですが(経済的に余裕があればエアコンをつける、エアコンは一種の贅沢品扱いだった)さすがに40度越えは厳しいでしょう。湿度が少ないと言っても砂漠ほど乾燥しているわけでもないですしね。

 気温がこれほど高く、また水不足も相まって今年はとても火事が多いです。ローマ東部のチェントチェッレの公園火災はチルコ・マッシモからも立ち上る黒煙が確認できるほど大規模な物でした。現在は鎮火、炭化した車や木など火災の痕跡が生々しく残っています。グアルティエーリ市長は、火災原因は人為的なものと言っていますが現在調査中です。ローマが鎮火したら今度はフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のカルソの火事。トリエステ-モンファルコーネを繋ぐ鉄道から出火したのですが広がっているので付近の高速道路30㎞が交通止めになっています。昨年のシチリアやサルデーニャの山火事でもかつてないほど広域を燃やした火事に驚きでしたが、今年も出火したらあっと言う間に燃え広がるという印象です。高い気温&水不足の怖さを心底実感します。

 ドロミーティのマルモラーダで起きた雪崩や連日の酷暑の原因は気候変動で、その原因は私達人間にあることは間違いありません。それを皆が実感したからでしょう、二酸化炭素は欧州人の公認の敵になりました…ということで炭酸入りミネラルウォーターはスーパーの棚から消えつつあります。いえいえ炭酸水の愛好家が読んだら怒ってしまいますね、すみません。実はエネルギー危機でCO2の確保すらも難しくなっているのです。

 イタリアで売られている炭酸ミネラルウォーター・メーカーのうち、天然の炭酸水を売っているところは僅か数社で大部分は人工的に作っています。ですから炭酸水というより発泡性の飲物全体が危機になると言っても過言ではないでしょう。さらに言えばイタリアの食品業界では、CO2はバクテリアやカビの繁殖を抑えるために使われ、またコーヒーからカフェインを抽出するため、あるいは新鮮なトルテッリーニやラヴィオリの包装に使われています。ですからスーパーに並ぶ食品全体に影響が及ぶ深刻な問題なのです。

 さらには泣きっ面に蜂と言わんばかりに、まさしくメーカーに追い打ちをかけるように半年後の2023年元旦から砂糖税が施行されます。100リットルに対して10€課税(イタリアではノンアルコールで甘味飲料にのみ課税)されます。当然ながら大部分のイタリア人から不評を買っている税です。ノンアルコール・イタリア産業総連盟(Assobibe)が1,200人(18歳~65歳)を対象に行った調査から、この税によって“貧困層がより打撃をより受ける”ことが分かりました。

 また別の調査(Nomisma)によると消費者全体の67%がこの税に反対(部分的に反対も含む)で、さらに消費者を怒らせたのが砂糖不使用の飲料水まで課税されるから(この点で反対している人の割合は部分的に反対の人を含めて83%)。

 要するに甘い飲み物には何でも課税するこの税の導入が決まったのは2019年コンテ政権時でした…新型コロナの流行が始まる直前ですね。今となっては遥か昔のように思えます…あの頃は良かった、と世界中で老若男女問わず遠い目をして呟きたくなるでしょう。

―閑話休題―

 話を戻しましょう。ということで、CO2が入手困難なため各炭酸水のメーカーは現在の在庫がなくなり次第生産終了すると発表しました。代表的メーカーの一つ、Sant’Anna(サンタンナ)によると2021年から二酸化炭素を確保することが困難になっていたとあり、また二酸化炭素メーカー側としては衛生(保健)分野のほうに二酸化炭素を優先的に割り当てる方針で、それを翻すことは困難であるとして生産終了することになったとコリエレ・デッラ・セーラの記事に書かれていました。

 日本の愛好家の皆さん、買い溜めしておきましょう。今後いつ手に入るか分かりません。しかも手に入ったとしても…それはイタリアの水ではないかもしれませんよ。というのもサンタンナの株主兼最高経営責任者であるアルベルト・ベルト―ネは「原材料不足と旱魃は今後も続くだろう。わが社はフランスに行く。」と述べていますからね。フランスは誰もが知っているEvianエヴィアンの王国ですから、イタリアから殴り込みをかけるに等しいわけです。

 また同氏は「アルプスの向こう側で12,000店舗持つスーパーマーケットCasinòで既にわが社の水の販売を始めている。わが社の水の高い品質と軽い口当たりが売りだ。さらに地元の水と比較して固定残留物が圧倒的に少ない。わが社がイタリアでしていたようにミネラルウォーターの成分や果てはラベルの読み方まで消費者を教育するキャンペーンを展開中だ」とコリエレ・デッラ・セーラのインタビューに答えていました。今はまだイタリアのアルプスの水かもしれないけれど、仮にこのままイタリアで水不足が進んだらサンタンナのミネラルウォーターはフランス製になってしまうかもしれません。

 ちなみにスパークリングワインは、まず天然のワインの場合は一定の温度に保った密閉容器の中で加糖して発酵させる過程を何度も繰り返して作られます。この時二酸化炭素が発生するのでこの件の影響は受けないでしょう。

一方スプマンテはブドウやブドウのしぼり汁あるいはワインをアルコール発酵させる最初の過程か2回目の過程で作られます。天然スパークリングワイン同様発酵過程から生じる二酸化炭素なので問題ないでしょう。さあ、これでワインに関しては安心しましたね。でもやはり買い溜めできるようであれば買い溜めをお勧めします。なぜならあらゆる原材料が高騰していることに加えて、現在の水不足によってブドウの生産が3割ほど減少すると小規模農業組合のColdirettiが危機感を露わにしているからです。まったく…なんでも値上げでため息が出ますね。

 ではまた

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