コラム

「Corsie Sistineコルシエ・システィーネの修復が終わって」

karakimami

 ○○が発見された、あるいは○○の修復が終わって一般公開される、などのニュースが毎年話題になるイタリア。このようなニュースを見るたびに歴史と文化を感じます。7月22日ローマではCorsie Sistineコルシエ・システィーネの修復が終わって一般公開されて大きな話題になりましたが、7月23日のアンサ通信の記事によるとシチリアのSelinunteセリヌンテで古代では最大級の33000mのアゴラが発掘され、象牙のセイレンや銅製の笏を作るためのものと思われる石の鋳型などが発見されたと伝えられました。セリヌンテの方はまだ発掘途中なので一般公開は遠い先ですが、Corsie Sistineコルシエ・システィーネでは7月22日修復完成式典がマッタレッラ大統領を招いて行われました。コルシエ・システィーネは西欧で最古の病院Arcispedale di Santo Spirito di Saxia(サント・スピリト・ディ・サクシア大病院)を代表する建物です。ヴァチカン市国近くに位置し、現在のサント・スピリト病院の隣にあります。

ここにはかつてSchola dei sassoni(サクソン人の学校)がありました。サクソン人の学校と行ってもウェセックス王イネ(688-726年)がキリスト教的友愛精神に基づいてローマに巡礼にやって来るアングロサクソン人の宿兼療養所として建てられたのですけれど。以来この場所は“サクソン人街”といった様相を呈し、現在でもその名残でローマの旧市街にある地区にも関わらず“Borgo”(村、集落)と呼ばれています。“都会の真ん中に「村」”!?歴史を知らなければ不思議な地名ですよね。

教皇レオ4世(在位期間847-855年)の初期、激しい火事(ラッファエロ・サンティの絵「ボルゴの火災」で有名)がサクソン人街やその他ゲルマンの部族が住んでいた地区を襲いサン・ピエトロのバジリカまで達し、その時サクソン人の学校も損壊しました。これほど広範囲な火事の原因として人災が疑われ、実際犯人と目されたサラセン人の集団が絞首刑になったようです。その後サラセン人の学校やサンタ・マリア・イン・サクシア教会は再建され、アルフレッド大王など西欧中から王侯貴族が旅の疲れを癒すために訪れるようになりました。

2世紀後、1066年のノルマン・コンクエストや十字軍が始まる頃学校(病院)は衰退し、ただ名前が残るだけになりましたが、時の教皇インノケンティウス3世(在位期間1198-1216年)は第4回十字軍が準備される中テンプル騎士団の騎士ガイ・デ・モンペリエに建物の再建を委ねました。こうして建てられたのがサント・スピリト病院です。またインノケンティウス3世が特に力を入れた孤児の養育と保護で、病院に「赤ちゃんポスト」が作られました。1201年教皇からサンタ・マリア病院(サント・スピリト病院のこと、当時はこう呼ばれた)に同名の教会と(教会の)収入を与えられ、初めて病院として機能するようになりました。とはいえ当初は病人300人、貧者600人を収容する小さな窓が付いた長方形の建物だけでしたが。また12世紀から13世紀にかけてサント・スピリト病院はフィレンツェやミラノなどイタリアのいたるところに建てられました。

1471年、病院は再び大火の犠牲になりました。時の教皇シスト4世(在位期間1471-1484年)が視察した感想は「壁は崩れ、狭くて暗い。新鮮な空気もなく、快適さは皆無だ。ここは病を治すというより病人が打ち捨てられるところのようだ」。よほど印象が酷かったのでしょう、シスト4世は直ちに再建を命じました。おかげでサント・スピリト病院は当時最大級の医療研究施設も備えた立派な病院に生まれ変わりました。教皇クレメンス10世の侍医ジョヴァンニ・ティラコルダやジョヴァンニ・マリア・ランチージなど高名な医者が集うようになり、さらにマラリアの治療にキナの樹皮を使う実験も行われました。

16世紀には聖フィリッポ・ネーリや聖カミッロ・デ・レッリスの姿もありました。また解剖学の世界ではミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチやサンドロ・ボッティチェッリなど芸術家も活躍しました。特にボッティチェッリはシスティーナ礼拝堂のフレスコ画「キリストの誘惑」のハンセン病患者を治療する場面で背景に病院のファサードを描きました。

1605年、合理的な病院運営と安定して資金を確保するために教皇パオロ5世(在位期間1605-1621年)はサント・スピリト銀行を設立しました。1896年から1976年までサント・スピリト病院は他のローマの病院と統合されて欧州最大の複合病院でしたが1981年建物は全てローマ市に寄付されました。2000年からGiubilarte srl社が文化施設として管理運営しています。

ここまで長々と説明してきましたが、コルシエ・システィーネの内部は1200㎡の巨大なフレスコ画やファルネーゼのユリも美しい重々しい祭壇などが見どころです。一般公開は7月22日~24日の3日間だけでしたがYouTubeで見ることができます。イタリア語学習者はイタリア語の説明も勉強になりますよ。

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