今年1月新型コロナ関係を除いて最大の話題は大統領選挙(1月24日~29日)でした。新大統領選出のために7回も選挙(議員による投票)するも決まらず、結局2期目を辞退する予定だったマッタレッラ大統領(80歳)が続投を決めて決着しました。マッタレッラ大統領の1期目の選挙時も4回目の投票で圧倒的多数の665票獲得して決まった経緯を考えると、今回は7回目の投票で759票(75,2%)が退任を表明している大統領に集まったことに、いかに適任者不在の選挙だったかが分かるというものです。マッタレッラ大統領&ドラギ首相のコンビが国民や各政党から支持されていることも理由でしょうが。こうして2月4日マッタレッラ大統領はイタリア共和国憲法に宣誓して第12代大統領に就任しました(関連動画 https://youtu.be/MIBw9I62oCE )。ちなみに14歳から25歳の若い世代ではドラギ首相を推す声が圧倒的に多く(4人に1人)、他の候補者で若者の心に響く人はいなかったようですね。現在74歳のドラギ首相は欧州中央銀行総裁で後にイタリア銀行総裁を務めた銀行家ですが、マッタレッラ大統領に請われる形で首相職を引き受けました。政治家出身ではない人が次期大統領になる可能性は大いにあると思います。
さて、若い世代といえば政府系シンクタンクOsservazione nazionale sull’adolescenza(国内の青少年に関する観測機関)による最新のデータから、現代のイタリアの青少年は「勉強や仕事もなく、仲間内で敬意を払われたい欲求があり、自由になることを多く望む」とあり、未成年の6,5%は不良仲間に属していて、16%が暴力行為をしたことがある、さらに10人中3人が殴り合いの喧嘩経験があるということです。子供たちの問題行動を“大人が分からない、あるいは分かっても遅すぎること”さらに“子供たちの心の問題が認知されていないし治療されたこともないこと”をあげています。また“落第する、もしくは退学してしまう子供は社会で仕事をするための規律を学んでいない”。青少年の犯罪の厳罰化は限定的効果しかないとも述べています。2021年の統計局のデータでは前世代の失業率は9~9,4%で推移していますが、若者の失業率は27%と相変わらず高いことを考慮しなければいけないでしょう。学歴も仕事もない若者はギャング団に所属することで存在意義を見出そうとしますが、やみくもに暴力に溺れて現実逃避することが多いのです。有罪になって収監された青少年の再犯率は60%、何らかの措置が取られた場合は20%未満に減少しています。青少年の犯罪で最も多いのが盗難、麻薬取引と麻薬所持、傷害と続くということです。ところで新型コロナ禍で学校を離れてしまった子供たちが一定数いることを考えると、状況は近い将来少し変わるかもしれません。
一見すると明るいイタリアですが子供達に自殺が増えています。フランシスコ教皇はTVのインタビューで子供たちの辛さについて「原因が分からないし、答えが見つからない」と述べました。さらに、子供達のケアに携わる医療関係者を労うとともに、子供たちの生きづらさや暴力性が増していることに関して「親が子供に向き合って、一緒に遊び仲間になりなさい、子供たちと対峙するのを恐れてはいけない」と言っています。教皇が若い夫婦に「子供と遊んでいますか?」と尋ねると残念な答えが返ってくることが多いとか。「お父さんが家を出るとき子供は寝ていて、帰宅するときも子供は寝ている」これではいけないと教皇は危機感を露にしています。家族優先と思われがちなイタリア社会でも意外とそうではないようですね。現代社会は国も性別も関係なくモーレツに働かないと生活が成り立たなくなっているのでしょうか…
暗い話題はここまで。先週土曜日2月5日閉幕したサンレモ音楽祭ではMahmood&Blancoの”Blividi”が優勝しました。2位はElisaの”O forse sei tu”、3位はGianni Morandiの”Apri tutte le porte”でした。マムードMahmood(29歳)とブランコBlanco(18歳)は既成概念を否定する自由世代の象徴と言われています。この世代は男性がピンクを着て、女性がズボンをはき、男性が友情から同性を愛撫することが当たり前、なぜなら性によって人間を定義するわけではないから。マムードは同性愛者でブランコは異性愛者ですが、映像からもとても仲良く歌っているところも聴衆の目に好ましく映ったのではないでしょうか。さて同音楽祭では何らかの批判がおきるのも恒例行事と言えます。今年はスペインの歌姫Ana Menaアナ・メナの曲“Duecentomila ore”の歌詞がジャンナ・ナンニーニの“Amandoti”の歌詞(Giovanni Lindo Ferretti作詞)とそっくりだとネット上で論争が起きました。ジャンナ・ナンニーニが2004年に歌ったカバー曲“Amandoti”はもともとイタリアの音楽グループCCCPが1990年に出したアルバム“Epica Etica Etnica Pathos”に収録されていた曲です。当時大ヒットして今でも愛されている曲ですが、それと歌詞が似すぎていると指摘する人が続出したのです。アナ・メナの曲の作詞はイタリアのラッパーRocco Huntoロッコ・ハントが手掛けたのですが、彼からのコメントは今のところないです。近年アナ・メナは複数のイタリア人の男性歌手とのデュオで高評価を受けていましたが、一転して批判されてしまい、その影響からか音楽祭最後まで下から2番目という低評価に終わってしまいました。もっとも、このようなネット上の批判は音楽祭の閉幕と共に消滅することが多いので、ロッコ・ハントもアナ・メナもあまり気にしていないかもしれません。サンレモ音楽祭に参加できた、ということだけでも歌手としてのキャリアに箔が付きますからね。
関連動画
Mahmood&Blanco https://youtu.be/Te236EDr_-k
Elisa https://youtu.be/AzoiVvE8k6M
Gianni Morandi https://youtu.be/Sym1JSadkys
Ana Mena https://youtu.be/9T66UjRH3Jk
Gianna Nannini https://youtu.be/Th1WVdaCNbY
ではまた