前回書いたようにイタリアには多くの国から難民が豊かな欧州を目指してやってきます。もちろん難民が思い描く生活は容易には手に入りませんが、基本的人権が保障された世界で生活したいと望むのでしょう。
さて、今回は難民受け入れに必要な費用についての面白い記事をご紹介しましょう。
移民問題が引き起こすの複雑な感情が垣間見えます。
「移民や亡命者にいくらかかるのか(誰がもうけているのか)
難民受け入れは間違いなく大仕事である。誰のためのことなのか理解しよう。(移民に一日30ユーロを払う人間なんていやしない。しかも Mare Nostrum (ラテン語「我らが海」の意味。古代ローマ人は地中海をこのように称していた)に年120万€(1億7,676万円相当)の費用がかかるなんて冗談じゃない)
Tor Sapienza で起こった『暴動』を巡って、難民センターに滞在している難民たちに関して論議が起こった。また地元の政治家や行政担当者の視察はおおむね歓待されている一方で、この流れとは反対に政府は手を引く事にしたようだ、Pd (与党・民主党)はローマ市長 Ignazio Marino に問題を丸投げした。
暴動を巡って多様な議論が降って沸いたように起こり、異なった視点で今回の暴動が研究された。ローマという地域の特殊性(プレネステだけで4つも難民センターがある)からより一般的な郊外の問題、また不況によって貧困層の生活が苦しくなった事や、難民の受け入れあるいは排除をどのように決定するのかという規定の欠如にいたるまで議論された。
しかし憤り、怒り、憎しみの感情が増大しているという点について各識者の見解は一致している:とりわけ大都市郊外においては。
悪感情は政治的な理由で増大したのはもちろんだが、誇張、根拠の無い不安感、強烈な拡声器であるソーシャル・ネットワークで流される考察といった一連の正しくない情報が肥やしになって大きくなった。 問題のすべて、あるいはほとんどはイタリアの海岸に辿り着く移民を集めて、移動させて、助けるために国が費やす資金を巡るものである。
地中海での難民対策は正確にどの程度の費用が必要なのか?またこの数ヶ月間は拷問ですらあったけれど『欧州はイタリアを助けない』根拠なき理由や移民にかかる費用が社会費用全体の3%以下であるという事実などをを明らかにするように我々は今まで務めてきた。
だがこのような疑問に関する情報は大量にあり、部分的または断片化されていてまじめに吟味することさえできない。
全体で費用がどのぐらいになるのか、prezzo de Il Giornale が非現実的な方法で見積もった金額は120億€(1兆7652億円相当)である:
『最も費用がかかるのは保健(36億€)と学校(34億€)だ。家族手当、年金、所得など金銭の移動は16億€に相当する。裁判費用は驚きの17億5千万€である。』中略…難民センターに登録された移民は全体で一日に2,400€(35万3040円)である。入管管理局の警官の月給の2倍だ。単純な計算である。私的な買い物用に30€の『手当』、免税900€と種種の補助金。それ以外にB&B 、個人宅、宿泊所に難民を滞在させている人に1日30€の払い戻しがある。加えて月額600€の保険、これらを合わせると難民認定された外国人一人当たりにかかる費用は月額2,400€になる。』
この雑多な数字スープのなかに本当の数字や大雑把な数字、不正確な数字、曖昧な数字が交じり合っている。間違った情報が拡散してしまったのだ。どのデータや数字(偽りやこじつけ、偽造された数字)を使って算出するのか、これに関する議論は複雑で時間がかかる。例えば海岸警備の費用10億5千万€は2005年から2012年にかけての数字で本当である。
幾つかの点をはっきりさせておいた方が良いだろう。
まずは国が移民に与える『日当』はいくらなのか?
答えはとても単純だ:国はイタリアで生きている難民に1€も払わない。ただし
Cie(centri di identificazione ed espulsione 身元確認及び国外追放センター、)、
Cda(centri di accoglienza 収容センター)、
Cpsa (i centri di primo soccorso e accoglienza 緊急収容保健センター)、
Cara(centri di accoglienza e centri accoglienza per richiedenti asilo 避一般収容及び亡命者収容センター)
で分類されている区分によって一律に適用されない部分もある。 収容センターにいる各移民が実際に受け取る金額は平均して2,5€(約368円)、いわゆるポケットマネーで、身の回りの物や温かい飲み物、それにタバコを買うことができる程度の小遣いだ。
このように、『支給されている』とされている30~40€の日当の金額がいかに不正確で、それが正されないままネットなどを介して広まってしまった、ということが良く分かる。
とくに、国の要請によって寄付金や義捐金の効果と用途に関して深刻な疑念があることが明らかになった。すなわち、寄付金や義捐金が最終的に投機家や利権家の手に渡ることが頻繁にあり、このような人種は文字通り移民の肌の上で繁栄している。
移民収容センターでかかる一切の費用は一日約30€、国が支給している。もっとも緊急収容保健センターと外国人市民を臨時に収容するセンターは部分的に異なっている。
施設の『徴募』は県に一任されていることが明らかにされたこと(サウナ、賭博場、プール付きの幻の五つ星ホテルで移民が暮らしているという言及もあった)、
内務省が用意した膠着した基準と手続きを盛り込んだ寄せ集め以前の書類が出てきたことは興味深い。
ポケットマネー(一家族7,5€未満)と15€のテレフォンカードの支給のみならず、行政や、福祉全般、環境の保健衛生、食料の割り当てに関する規定をセンター管理人が作成する。 センターにいる個々の移民にかかる費用総額は県とセンター管理人の合意によって決定するため様々であるが、平均してほぼ40€だとRedattore Sociale のSrpar (il Sistemadi Protezione per richiedenti asilo e rifugiati 難民及び亡命者保護システム) サービスセンターのDaniela Di Capua は説明する:
「作業員や不動産の賃貸料、小売商人への支払いに充てられます。割り当て金は収容センターから出た時に独立して生きていかれるために研修などの専門的な再教育プログラムを施すことに使われます。(中略)こうした活動の費用は一般財政に計上されています。」
未成年の移民の場合、費用は更に高くなる。
Internazionale 紙によると「未成年の移民を受け入れる各市町村の下宿代は計上済み、(中略)下宿代は140€を超える場合もあり得るが Sprar に戻る未成年は市町村の下宿代とは無関係に毎月80€が支給されます。」
要するに、簡単に言ってしまえば国はイタリアに居住する不法入国者には何も払わない、一方政治的亡命者や避難民のように国に保護を申請中の人々や、移民センターや身元確認センターに定住する人たちには日当2,5€を支給している。これらのお金は彼らの懐にはいる、当たり前だが。 このような状況で「誰がもうけているのか」ということを探すならば、他所に目を向けた方がいいだろう。」