ここ連日ローマの東、 Tor Sapienza 市では緊張状態が続いています。
不況に苦しむ貧困層 vs. 難民
大不況に苦しむイタリアの貧困層はついに、ほぼ連日押し寄せる膨大な数の難民に怒りを爆発させ、市の難民収容センター前で抗議集会を開くに至りました。
話は横道に逸れますが、今年に入って目にするニュースでも毎回言われることに、イタリアにやって来る難民の年齢は若年化の傾向にあります。赤ちゃんから未成年まで、保護者はいません。 Tor Sapienza 市の難民収容センターでも約60名の難民のうち三分の二が未成年だったといいます。
ここでは抗議集会が始まって3日後、
「Duce (ムッソリーニを指す言葉。総帥の意味)!」
「やつらを焼き殺せ!」
と口々に叫ぶ民衆の怒りに安全を確保できないと早々に移転が始まりました。最初に未成年の難民が移転させられ、その他の難民の処遇は検討中との事です。
この騒動の間、(11月13日早朝)同市の別の場所でも未成年の難民がバールに入ろうとして「おまえはバールに入ることはできない。お前のための場所じゃないんだ。」と入店を断られたり、難民収容センターの職員が街の様子を見に外出した際も歓迎とは程遠い対応をされました。
この事件前日の夜も、別の難民が襲われて ipad を強奪され、ナイフで切りつけられる事件が発生しています。難民は「もう我慢できない、外に出るのが怖い」と言いますが、センターの職員も同じ恐怖のうちに息を潜めています。
続く騒動の渦中に、移転させられた未成年難民(14歳ぐらい)の子供達が抗議を続けている集団の前で「ここは僕たちの家だ」と歩道に座り込み、欧州議会議員の Mario Borghezio が現れて状況は一時混乱しましたが、数時間後子供たちは再び連れて行かれました。
連日の緊張状態のなか、住民たちは「私たちはもう難民に我慢できない。」と言います。
抗議が行われた Morandi 大通りで勝利したのは憎悪でした。そしてもっとも懸念されることはこのような抗議集会が連鎖的に他所に飛び火するかもしれないということです。いわゆる『ドミノ効果』によって Magliana, Pigneto, Tor Bella monaca など Tor Sapienza と似た状況にある街ではいつでも同様の事態が起こる可能性があるのです。
さて前述のように、子供だけの難民が増加しています。 この半年で1万2千人の、保護者が同伴していない子供達がイタリアにやってきました。本来であれば彼らは保護されなければならないのですが、役所にたらい回しにされています。
シチリアから北部ヴァレーゼまで4人のマリ人の子供達が送られて、そして北部の市長は彼らの保護責任を負えないとして小包のように南部に送り返しました。
ちなみに Save the Children によると保護者がいない未成年に限ってイタリアに滞在することができます(滞在許可証が発行される)。また子供たちは滞在許可証の有無にかかわらず学校に通わなければならず、働くことは禁じられています。18歳になる(成人する)と未成年限定の滞在許可証の範囲外になりますが、この場合一定の条件を満たせばイタリアに引き続き滞在することが可能です。
閑話休題。
2014年だけでイタリアには総合で2万4千人の未成年難民が来ました。彼らはより良い未来を夢見て海を渡るのですが、その半数は前述のように保護者がいません。保護者がいない未成年難民を保護することは非常に困難です。送り返された4人の子供たちは現在はシチリアに収容されていますが、ここで市長の差別的な扱いが一層の困難を招いています。 4年間学校へ通えない子供、大人が言うことを信じて待っていてもたらい回しにされる現実。
その場しのぎの行政の対応が子供たちの未来を奪うことにつながるのではないか、そのような心配も杞憂ではないかもしれません。
一方で、多数の難民がイタリアに押し寄せることは、以前からイタリアにとって大きな問題の一つでした。そこに未成年難民が増えることは、不況に喘ぐイタリア人にとってさらに大きな重荷になることは想像に難くありません。また以前「イタリアにやって来る難民」で見たように、移民(難民や亡命者)の2世や3世が犯罪者テロリストになる可能性があり、イタリアの社会治安を不安にさせていることもあるのでしょう。
さて、次回は引き続き難民問題を経済的側面から取り上げたいと思います。