コラム

中国からの移民

karakimami

12月1日のイタリアの新聞記事トップをいっせいに飾ったのは悲惨な火事の記事でした。

トスカーナ州プラートで起こった火事の各紙の記事を要約すると、

「12月1日未明、トスカーナ州プラートにある中国系織布工場が火に包まれた。工員宿舎の寝室で7人が焼死、5人が負傷。この工場は中国人が経営し、犠牲者も全て中国からの不法移民ということで氏名年齢は不明である。7人が亡くなった場所は、縫製作業所内ロフト部分に石膏ボードと厚紙で仕切った穴倉のような寝所だった。犠牲者の一人は仕切り壁が燃え上がり、ロフトが崩壊し、黒い煙が濃く立ち込めるなか空気を求めて窓のガラスを割り腕を突き出したが遅すぎた。また窓にはガラス以外に鉄製の柵もつけられていたため、消防士は炭化した遺体を運び出すために鉄柵をのこぎりで切断しなければならなかった。当局から公表された犠牲者は中国籍の7人で、彼らは工場内で寝起きし、働いていた。」

現在30万人の中国人移民がイタリアにいます。これはイタリアにやってきた移民のなかでも4番目に多い数字で、イタリアに居住する外国人総数の8,1%を占めます。ミラノでは2万4千人、フィレンツェには1万4千人、ローマとプラートには1万3千人です。中でもプラートでは市民総数にたいして中国人が占める割合が最も高く39%にもなります。近年急増したように見える移民ですが、イタリアに移民する中国人の歴史は実に30年前に遡ります。もっともこの十年間で中国移民は3倍に増えたことも確かです。彼らの大部分は今回火事で亡くなった犠牲者と同じように「メイド・イン・イタリー」のイタリアのブランドを支える縫製工場で働きます。仕事はいたって簡単、布地にボタンを縫い付ける、ジーンズにファスナーを縫い付けるだけ。とはいえ中国人移民の多くが仕事を続けるうちに自分の工房を開くことができます。中国人は低コストで仕事が速く、柔軟な労働者という名声を勝ち得ていますし。

警察によると多くの移民は労働ビザや滞在許可証を所持していないため、長時間の不法労働に従事させられています。こうした移民は何年も人目につかない様に生活・労働をさせられ、警察はしばしばそれに気付かない振りをするのです。またこの十年間中国人がイタリアで手にした成功にイタリア人は憤慨しています。失業率の高く経済危機にあえぐ地域では状況は一艘深刻です。中国人は労働法を守らず、労働者から搾取し、安い労働力で低コストの商品を市場に流通させることでイタリア人の工場を倒産に追いやっているので多くのイタリア人が不満を持ち、抗議しています。パドヴァ大学教授の社会学者 Valter Zanin イタリアにある中国人の工場を調査し、低コストの労働力が中国人の高い競争力を支えているという結論を出しました。 Zanin 教授の調査では中国人労働者は18時間労働を義務付けられている事実を浮き彫りにしたのです。

イタリア及びヨーロッパが経済危機によってイタリア人の工場のみならず中国人の工場も後退しました。そこで中国人移民はそれまでとは違った目的を持ってイタリアに入国するようになりました。縫製工場からサービス業へ。もっともサービス業では鉄柵を窓に打ち付けて逃亡を防ぎつつ、人目に触れさせないようにして長時間労働を強いることは難しいでしょう。イタリア語を勉強し、イタリア人の生活に溶け込もうとするーそのような移民の新しい姿。例えば中国人移民の安い労働力で周囲のバールより安い値段でコーヒーを提供する、このようなバールはいまやイタリアの至る所で見られます。こうしたバールで働く中国人移民は貯金し、家族や親戚を中国から呼び寄せ、自分自身のバールを開く夢を支えに必死に働いています。

急激に伸張する中国人移民とイタリア人の確執の解決は容易なことではありません。

さて、最後に12月3日のパノラマ誌の記事をご紹介しましょう。

「7人の死者のうち5人は未だ氏名不詳。5人の中国人がプラートの縫製工場の宿舎で寝起きし働いていた。イタリアには思いもよらなかった社会的害悪が流れている。この火事をきっかけにあらゆる人々の眼前に日々横たわる問題がゆっくりと社会の表面に浮かんでくる。人々はそれを知っている。この問題を解決するためにイタリア政府は決して取り出さない武器を放棄したーすなわち州知事が責任転嫁したことに始まって皆が責任転嫁をしたことがまさに問題解決を放棄したことに他ならない。Toscana Enrico Rossi は、移民省の Cecile Kyenge とともにこの件を解決するために、不法労働全般に関して安全策を講じる必要性を主張した後、主題として中国人コミュニティーの閉鎖性について述べた。

他者を入れない中国人の閉鎖性にを指摘した。イタリア国内で最も排他的な中国人コミュニティーの性質:中国人独自の言語、中国人独自の銀行や法律、中国人独自の名誉の掟、中国マフィアやその影響力、祖国中国とのつながり、移民した国(イタリア)に合わせていこうとする興味も気持ちもない、ことに全ての原因があるとした。

それは言い換えれば Alberto Forchielli がレプッブリカ紙のインタビューで「公的でも私的でも中国人企業家は根底に犯罪思考がある。」と答えたことと同様である。では、全ては中国人のせいなのか?今の中国人コミュニティーはイタリアのマフィアやカモッラ( camorra ナポリの犯罪組織)やンドランゲタ(‘ndrangheta カラブリアを拠点とするマフィア)の活動が最も活発になっているときと同じ、とも形容できるかもしれない。

しかし、答えは違う。罪はイタリア政府の各部門や各部署にある。財務警察はプラートやその他の地域でできることは全て行うつもりだ。聞き込み、調書の作成、罰金を科す、さらにその先まで腕を伸ばそうとしている。かくて罰金は払われ、全てが元に戻る。しかし事は地方行政府の単なる解決済み案件で終わるというのでもない。プラートに拠点を置く膨大な数の中国系企業で働く中国人が不法で危険な恥すべき状況に置かれていることに、政府は片目どころか両目をつぶる傾向があるのだ。トスカーナのみならずイタリアに君臨する寛容、言い換えれば我々の国で奴隷状態の労働者の生血をすするグローバリゼーションの劣悪なメカニズムを認める寛容さこそが問題の原因なのである。

最後にナポレターノ大統領の高潔な書簡を州知事に送ったことと、

Cgil (Confederazione Generale Italiana del Lavoro イタリア労働総同盟の略称) のリーダー Susanna Camusso が今回の悲劇に対して耳を聾するばかりの沈黙を守っている事を指摘しよう。

プラートの問題は移民ではなく、他国でも中国人であることをやめない中国人でもない。問題は崩れてしまったイタリアという国にあるのだ。それも今起こったことではない。何年も前からだ。だからお願いしたい、偽善はもうやめにしよう。」

 

 

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