コラム

「イタリア近況報告~新型コロナ第2波、ヴェネツィアのMOSEプロジェクトなど~」

karakimami

 欧州は新型コロナ第2波に襲われています。10月9日以降フランスでは1日の感染者が2万人以上になり、同様にイギリスも2万人(一日の感染者数)に近づいています。スペインは1万人以上(1日の感染者数)で推移しています。イタリアは9月末まで2千人未満に抑えていましたが10月に入り次第に数が増え10月7日からは一日ごとに1千人増えて10月15日の1日の感染者数は8,803人になり、各紙危機感を露わにトップで報じています。こうした状況をうけてクリスマス時期にロックダウンすることが囁かれていますが、政府としては経済への悪影響を考慮して避けたい意向です。業種や地域を限定したロックダウンは可能性がありますが、春のような大規模な全面閉鎖はないようです。

 ロンバルディア州(ミラノが州都)の感染者は相変わらず多いですが、人口も南部カンパーニア州(ナポリが州都)に比べて倍以上ですので仕方ないかもしれません。春の感染爆発を免れた南部、カンパーニア州では感染者が急増し、ナポリでは救急外来の前に救急車の長蛇の列ができました。ナポリで新しくできた総合病院が機能しないことが度々報じられるなど医療体制が北部に比べると貧弱なのかもしれません。カンパーニア州の学校は急遽10月末日まで閉校になりました。学校でのクラスターが懸念されるのですが、9月に再開したイタリアの学校では大きなクラスターは今まで発生していないので先生など関係者の努力の賜物でしょう。

 9月に学校が再開し子供たちが登校するようになりましたが、イタリア国籍を持たない生徒は学校に通うことができない状態です。Fanpage.itではバングラデシュの少年を取材していました。以下部分訳。

(Rubel君、14歳、ベンガル出身)「イタリアが恋しい、もうバングラデシュにいたくない、3月10日からずっと閉じ込められている。」10年以上イタリアに住んでいるRubel君は新型コロナが原因で故郷の国から出国できない。(中略)今年から高校1年生になる予定だった。「(学校から)ファイルが送られ、僕をWhatsAppのグループに入れてくれた」けれど、彼が現在暮らす地域ではネット接続にも問題がある。彼はまだクラスの仲間のことも知らない。(訳ここまで)

取材を受けたRubel君のケースは恵まれているのかもしれません。ロックダウン中にイタリアを離れ、国籍がないため再入国できず行方が分からなくなってしまう子供たちがいます。新型コロナの別の意味での犠牲者ですね。

 またシチリアのトロイーナの障碍者施設で稀な遺伝的障害を持つ26歳の女性がロックダウン期間中担当の職員によってレイプされていたことが9月末、女性が妊娠25週目になって両親が気づいて通報し発覚しました。女性は病気のため性交同意できる状態ではないということで、レイプ犯(39歳、既婚、1児の父、2018年から勤務)の所業に施設関係者は動揺しています。さらに女性は新型コロナに感染しているということで気の毒なことです。

 イタリアのブランドもまた新型コロナの影響で大打撃を受けています。Il Sole 24ore 紙の記事によると

(部分訳): Centro Studi Mediobanca の Nadia Portioliによると「ファッション業界は新型コロナの悪影響を最も受けた業界の一つです。多国籍企業の2020年の第一四半期の総売上高は平均でマイナス7%でしたが、ファッション業界では同時期と比較して28%も減少。中国のロックダウウンでマイナス15%、続いてイタリアがロックダウンと第二四半期の収益はマイナス41%を記録しました…」第二四半期までアジア(中国)マーケットが欧州より激しく減少したが第三四半期から盛り返している。ローマに本拠地を置くブルガリ(現在はLvmhグループ)では第三四半期の収益が2019年の水準に近づいたということで嬉しい驚きに見舞われた。中国市場が回復した恩恵を受けた形だ。ブルガリは:ロックダウン期間中2年後を目標にしていたeコマース対象を8か国から15か国に拡大しネット市場強化に努めた。効果はすでに出ている、アメリカでの宝石の収益の18%はオンラインで2019年は2%だった。宝飾業界には厳しい時代だが Valenza Po も2024年開業を目途に新しい工房をヴァレンツァに準備中で、採用人数は500人を予定している。Valenza Po ジュエリーは全ての生産工程をイタリアで行う唯一の工房だ…(訳ここまで)

復興資金を利用したり他業種と提携したり、イタリアが誇る「made in Italy」ブランドのクオリティの維持に各社ビジネスプランを大幅に前倒ししてeコマース強化に舵を切っているので今後は自宅でネットショッピングがとても充実しそうですね。それと共に詐欺も増えるであろうことは想像に難くないので皆様注意しましょう。

 さて、イタリアの秋と言えば悪天候がつきものということで、水難で死亡者が出たり、橋が流されたりしていますが茸の生産には最適のようです。新型コロナで人込みを避ける行楽としてキノコ狩りが大人気です。秋の王様トリュフの100グラムあたりの値段も今年は250€(約31,000円)と例年よりお手頃です。2012年には100グラムなんと500€(61,500円)にもなったことがあります。ここ数年トリュフの値段は350~450€だったので今年はいかに豊作か分かりますね。

 水害と言えばヴェネツィアが満潮時に水没することは今や有名です。度重なる水害と古い建物の維持・修繕に費用がかかることが原因か、近年は建物1階部分が放棄されることが多くなっているような印象を受けます。水害からヴェネツィアを守るために2003年5月14日から始まったMOSEプロジェクトは大金を投じて機能するのか疑問視されていましたが2020年10月3日十分に機能することを無事証明し、サン・マルコ広場は乾いたままで済みました。Moseプロジェクトとはヴェネツィアのラグーナ(潟)に海水が流れ込む流入口3か所(Lido, Malamocco, Chioggia)の海底に設置された78個の可動式堤防(満潮時にラグーナを守るための水門)で、満潮時(3mまで対応)の水位の上昇をヴェネツィアの最も低い場所から+110cmまで緩和する装置です。具体的には海底に設置された水門が満潮時にせり上がって海水の流入を堰き止めます(詳細は専用サイトhttps://www.mosevenezia.eu/progetto/参照)可動式堤防を海底に建造する工事は非常に困難で問題は砂、海藻、そして錆でした。また想定通り機能するのか疑問視されましたけれど、プロジェクト開始から17年を経てようやくその本領を発揮することができたのでした。しかしMoseプロジェクトの運用を誰が(どこが)するのか?Mose効果が証明されて次はシステムをいかに適切に運用するかにヴェネツィアの命運がかかっています。ヴェネツィア共和国時代、ラグーナを流れる水流管理は政府の非常に重要な仕事でした。イタリア共和国の時代になっても、最新テクノロジーがあっても、その重要性は変わりません。どうかシステムが適切に管理・運営されて美しいヴェネツィアがこれ以上損なわれないことを切に願っています。

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