今回は二つの話題を取り上げたいと思います。
まずは選挙について。9月20日と21日は今年のイタリア政治で最も熱い選挙の日で以下4つの項目に関して選挙が行われました。
① 国民投票
これは昨年2019年10月8日に議会で決定された議員数を減らすための憲法改正(56,57,19条)の是非を問うもので、3月29日に行われる予定でしたが新型コロナの影響により遅れて先日実施されました。具体的には議会議員数を630人から400人に、また上院議員315人から200人に減らすことが賛成69,96%、反対30,04%で可決されました。
② サルデーニャ特別自治州とヴェネト州の議員2名が死亡したことによる補欠選挙
③ 7州で行われた地方長官選挙(トスカーナ州、マルケ州、カンパーニア州、プーリア州、ヴェネト州、リグーリア州、ヴァッレ・ダオスタ州の7州)
トスカーナ州は得票率48,6%で中道左派(Centrosinistra)Eugenio Gianiが選出
プーリア州は得票率46,8%で中道左派(Centrosinistra)Michele Emilianoが選出
マルケ州は得票率49,1%で中道右派(Centrodestra)Francesco Acuaroliが選出
ヴェネト州は得票率48,6%で中道右派(Centrodestra)Luca Zaiaが選出
リグーリア州は得票率56,1%で中道右派(Centrodestra)Giovanni Totiが選出
カンパーニア州は得票率48,6%で中道左派(Centrosinistra)Vincenzo De Lucaが選出
ヴァッレ・ダオスタ州は得票率23,9%で北部同盟(Lega Nord)Nicoletta Splegattiが選出
選挙前、中道左派は6州を占めていたのですが、今回は左派と右派で等分に分かれ、ヴァッレ・ダオスタ州で北部同盟が初めて勝利しました。今回の選挙結果がイタリアの国政に直接影響を与えるわけではありませんが、現与党のM5S(五つ星党)のディ・マイオ副首相は次回の選挙でしっかりリーダーシップを示さなければならないでしょう。中道左派のPD(民主党)は「同盟を組んでいれば全ての選挙で勝てたはず!」と雪辱を晴らすために意気込んでいます。北部同盟は南部への浸透を図ったものの失敗し、ヴァッレ・ダオスタ州で初めて勝利したもののサルヴィーニ党首の責任を問う声が出るかもしれません。今回の選挙結果で支持政党を持たない弁護士出身のコンテ首相は安心したことでしょう。民主党が大敗北した場合、彼の2与党の均衡を図るバランス政治が崩れてしまったでしょうから。 ちなみに1月に行われた地方長官選挙の結果は以下の通りです。
エミリア・ロマーニャ州は得票率51,42%で中道左派(Centrosinistra)Stefano Bonacciniが選出
カラブリア州は得票率55,29%で中道右派(Centrodestra)Jole Santelliが選出
④ イタリア全国962地方自治体選挙(住民1万5千人以上の自治体は10月4日、5日に選挙)
次の話題はカトリック教徒が少ない日本では話題になりませんが、ヴァチカンの列聖省 の長官であるAngelo Becciu枢機卿がロンドンの高級マンション購入のために不正にヴァチカンの小口献金が使われた疑惑を受けて辞任しました。列聖省とは1969年教皇パオロ6世が設立した省で“神のしもべ”を聖列や列福にする手続きを管理するところ。それ以外にカトリックの教理にも関わる重要な部署です。献金不正流用疑惑は調査段階でまだはっきりしたことは分かりませんが、Becciu枢機卿の辞任で責任の所在がうやむやになってしまうかどうか。とにかく今後枢機卿はコンクラーヴェや枢機卿会議などに参加できなくなります。ヴァチカンは世界最小の国です。そして“神のしもべの国”とは言っても政治があり、派閥と権力闘争から無縁ではありません。今回のBecciu枢機卿の辞任で、フランシスコ法王は信頼できる側近を失うことになりました。この影響が今後どのように出るのか興味深いですね。