9月1日から6か月ぶりに学校が再開したイタリア、学業の遅れを取り戻すことはもちろんソーシャルディスタンスを守った机の並べ方や教室など再開まで学校側の準備は大変だったようです。州によってはソーシャルディスタンスを保っていられればノーマスクで良いなどありますが、どこでも一旦感染者が出れば休校にしてオンラインでのレッスンに戻すとか。国は万が一の場合に備えるように学校側に通達したようです。
欧州では感染者が再び増加しているので感染第2波と見られます。スペインでは8月31日に新たな感染者23,572人と大幅に増えました。同日の感染者数、フランスは3,173人でしたが前日は10,866人で増減を繰り返しています。一方イタリアの同日感染者数は978人と数日前から1,000人を下回るようになりました。政府は再開していたディスコやダンスルームを閉鎖させ、公共の乗り物ではソーシャルディスタンス維持、公共の場ではマスク着用義務化するなど春の惨状の再来を防ぐための措置が効いているのでしょう。
そのような状況で新型コロナに感染している難民を巡って市民から受け入れ拒否のデモが散発的に起きています。イタリアに漂着した時点で既に感染している、難民収容センターでクラスターが起きる、感染しているかどうか不明のまま収容センターから脱走する、などクラスターを除いて何れも今まで日常的にあった問題ですが新型コロナを抱えて市中をウロウロされるのは市民としては堪らないといったところですね。新型コロナがあろうとなかろうと難民がイタリアを目指すのは変わらず、海に投げ出されて亡くなる人たちも後を絶ちません。
先日fanpage.itに「イタリアで新型コロナ感染者が増えていることは難民が増えている事とは関係ない」という記事が載りました。長い記事なので要約しました。
「イタリアの新型コロナ感染者が増える原因は難民が増えている、難民数のピークが真の国難と表現されることが頻繁にあるが本当だろうか?内務省のデータを検証して確かめた。新型コロナに感染したイタリア人は268,218人、パンデミックが発生してから新型コロナに感染した難民は1,218人すなわち感染者全体の0,4%である」記事中では北部同盟の党首サルヴィーニが新型コロナと難民を結び付けてイタリア人をミスリードしている、実際に内務省の数字を確認すれば彼の言説には根拠がないと非難しています。
「今年の7月から8月半ばにかけて昨年同時期と比較して難民が3倍になり、それが疫学的な流行曲線と関係していると北部同盟は非難の矛先を向けている。事実、7月1日~8月14日までの内務省の資料を見ると8,500人の難民がイタリアに上陸している一方、昨年同時期に上陸した難民は2,350人である。内務省はレプッブリカ紙のインタビューでこう断言した「2019年と比べて難民数が多い傾向とはいえ現在の数字は緊急事態ではありません。アラブの春があった2011年にイタリアに来たチュニジア人は約3万人、一方今年は1月から合計しても8千人です。問題は新型コロナ感染症の予防に関わる国の保健体制にあります。」」春のロックダウウンの際にも貧弱な保健体制が問題を大きくしていると指摘されていました。イタリアでは年を追うごとに保険関連予算が削減されていたので緊急事態に対応できなかったというわけです。この辺りはイタリアに留まらず世界中で変わるでしょう。ランペドゥーサでは受け入れ可能人数を大幅に超えてしまいましたがシチリアの大規模な検疫センターでは収容能力に余裕があり、夏の初めから難民4千人を他州に送り出したそうです。難民に感染者がいるという事で移送先の自治体でデモがありましたね。
「夏の到来と共にイタリアや欧州の他国は国境を開放したため、人の往来が復活し多くの市民が休暇を過ごすために他国に旅立った。人の往来が増える=ウイルスにとって絶好の機会と専門家が指摘する通り、8月半ばに政府はスペイン、ギリシア、マルタ、クロアツィアなど感染者数が多い国からの帰国者は検疫期間におくことを義務化した。EU外の国からの入国者は自動的に検疫期間におかれるため、チュニジアやリビアからの難民の扱いも同様である。難民がイタリアに入国した場合、新型コロナ検査は義務であるためこの時点で市民に脅威があるかどうか判明する」とはいえ検査結果を待たずに脱走…とかありましたけれど。
この記事によると難民増加と新型コロナ感染者数増加は関係ない、実際に外国からの帰国者が増えるにつれて感染者が増えたことは明らかでしょう。Iss(高等保健機関)によると「今週はウイルスが蔓延している地域を旅行したイタリア人の感染が増えているのが目立っています。資料の中には2月末から8月半ばまでイタリア、外国を問わず感染した地域と国籍別感染者の推移を表したグラフがあり、その中でイタリア人以外の入国者で既に感染していた人たちのカテゴリーに難民も入っていることを指摘しておきます。グラフを見れば一目瞭然ですが、難民の増加とは無関係にここ数か月はほぼ落ち着いています。(中略)保健高等会議は「州によって異なるがイタリア在住の外国人もしくは旅行から戻ったイタリア人が感染しているケースは全体の25~40%で、難民が関係しているのは非常に少なく、難民の感染者は3~5%。一部は難民収容センターでの感染で、こうしたセンターでは適正な衛生基準を維持することはとても難しい。」とインタビューに答えた。」難民センターの問題は衛生以外に以前から治安とかいろいろありますね。
この記事は難民と新型コロナを結び付けて攻撃するサルヴィーニ(北部同盟)に対する反論記事です。イタリアは今年地方選挙の年で9州で各政党が戦いますが、現在まで既にカラブリア州、エミリア・ロマーニャ州の選挙は終わり、いずれも中道右派が勝ちました。 中道右派と北部同盟は盟友なのですが、北部同盟としても選挙に勝ちたいところです。ところがメディアはサルヴィーニを嫌いなので… 州選挙、残るはヴェネト州、カンパーニャ州、トスカーナ州、リグーリア州、マルケ州、プーリア州、ヴァッレ・ダオスタ州です。さあどうなりますか。