先日9月9日にローマで死去したStefano Delle Chiaie(死亡時年齢83歳)ステファノ・デッレ・キアイエの葬儀が12日~13日にかけて行われています。デッレ・キアイエはネオファシズムの主要人物の一人だったので若い軍人やネオファシスト、鉛の時代(1970~1980年代、政治テロによる凄惨な事件が頻発したためこう称される)の主要人物らが大集結しデッレ・キアイエの葬儀に参列しました。
1936年カンパーニア州カセルタで生を受けたデッレ・キアイエは政治家ですがネオファシストの破壊工作の黒幕と疑われる人物で、1987年まで潜伏生活をし、その後Avanguardia Nazionale(国家先兵隊)の創始者になった人物です。1977年ミラノで起きたフォンターナ広場爆破事件(死者17人、負傷者88人を出したテロ事件だが起訴されたフランコ・フレーダは証拠不十分で放免された)後にはスペインのフランコ政権に保護され他のネオファシスト達と共にアルゼンチン、チリなど複数の南米の独裁国で活躍した経歴もあります。ローマの葬儀に集まった彼の友人や支持者は黒いシャツを着るのがドレスコードで、全員黒シャツでファシスト式片手を斜め前方に挙げる敬礼で棺を送り出しました。因みに極右グループと相性が良い北部同盟からの参列者もいました。
デッレ・キアイエの国家先兵隊は1960年4月25日に創立、ファシズム再来を阻止するために導入されたシェルバ法(legge scelba)の適用により公式には1976年に解散させられました。とはいえ国家先兵隊は極右のシンボルとして今でも讃えられています。
他のEU諸国同様イタリアでも極右の台頭が著しいです。前世紀には居るかいないかわからないぐらい一部でしかなかった極右のうねりが目立ってきました。極右のグループはイタリアのいたるところに出来ていて、経済格差著しい北と南でもそれぞれ別な動機から複数の極右グループが存在し、大きい組織は選挙にも積極的に立候補しています。フランスの黄色ベスト運動との連帯にみられるようにEU諸国の極右グループとの連携も積極的に行っています。ところで黄色ベスト運動が盛んだったころフランスのマクロン大統領はこの事態に非常に危機感を持っていたようで連日のようにイタリアをかなり厳しく非難していました。
さて、ここで改めてイタリアの極右グループを整理して、ちょっと古めですが2017年の新極右分類図を見てみましょう。
① Manipolo d’Avanguardia(ベルガモ)
② Lealtà Azione(ロンバルディア)
③ Do.Ra.(ヴァレーゼ)
④ Militia(ローマ)
⑤ Generazione Identitalia(ミラノ)
⑥ Fascismo e Libertà-Partito socialista nazionale(イタリア)
⑦ Fasci Italiani del Lavoro(マントヴァ&パレルモ)
⑧ Avanguardia Nazionale(ローマ)
⑨ Fortezza Europa(ヴェローナ)
⑩ Forza Nuova(ヨーロッパ、Alliance for peace and freedomに加盟)
⑪ CasaPound(ヨーロッパ、Alba DorataとJobbikと連携)
⑫ Veneto Fronte Skinheads(ヴィチェンツァ)
⑬ Skin4Skin(ミラノ)
⑭ Hammerskin(ミラノ)
⑮ Rivolta Nazionale(ローマ)
なかでも頻繁にメディアを騒がせるのがForza NuovaやCasaPoundです。今年に入ってからはCasaPoundの事務所で女性が若い党員にレイプされ、ちょっとした話題になりました。2018年には両党とも選挙で華々しく戦いましたが得票率は3%にも届かず、北部同盟から切り捨てられましたね。まだまだ選挙では通用しませんが、こうしたグループの多くが21世紀初めに設立され瞬く間に存在感を増しているわけで今後を不安視する人は少なくありません。
先日発足した第2次コンテ政権から極右グループと相性が良い北部同盟は切り離され、党首のサルヴィーニが情熱的に進めていた移民帰還と移民阻止政策は今後180度変わるでしょう。
では質問です、与党ではない=国民から支持されていない?
答えはNo!
政治の不協和音が影響して北部同盟の支持率は若干落ちたとはいえ、今月行われた最新のTgLa7の政治調査ではコンテ首相の支持率47%、政党では北部同盟は33,4%(-0,2%)で不動の首位に位置しています。五つ星政党と組んで与党に返り咲いた(ただしレンツィ元首相は枠外)民主党は1%稼いで五つ星政党を抜いて22,1%に、五つ星政党は21,4%と3位落ち、イタリアの同胞党はちょっと上がって7,2%、一方6,2%から5,2%と低下が著しいのがフォルツァ・イタリア党でベルルスコーニが主役だった時代は終わったことを実感させられます。第2次コンテ政権はいつまでもつか、とメディアから大真面目で新内閣の大臣に質問される現状に、イタリア政治の混乱が本当に収束するのはいつになるのでしょうか?