コラム

「タオルミーナから”ピスタチオ風マフィア”はいかが?」

karakimami

 マフィアはイタリア語ですがもともとはアラビア語のmahjas(イタリア語millanteriaで、「底なしの自惚れ」または「自惚屋の言葉や行動」を意味する)です。マフィアは犯罪組織の代名詞のように用いられますが、そもそもははったり屋を指す言葉だったわけです。  

 さて、そんなマフィアという名詞ですが、今やクリミナル組織を意味する本来の使われ方から離れて様々な所で使われています。最近話題になっているのがシチリアの観光地タオルミーナで菓子の名前に使われたこと。甘いスイーツとマフィアはイメージ的に正反対ですが、そのアンバランスさが受けているのでしょう。

 ANSA通信の記事によると:

 「タオルミーナはシチリアの最も有名な観光地の一つで、世界中から多くの観光客がやって来る。そこの“カンノーリの王様”ロベルトの菓子屋のウインドウに“mafiosi al pistacchio(ピスタチオ風マフィア)”や“cosa nostra alle mandorle(アーモンド風コーザ・ノストラ)”と名付けられたスイーツが並ぶ。これらの菓子はトリップアドバイザーの“マフィアのファン”部門でも取り上げられ、大変な人気だ。だがこうした名前はただ観光客や客の注意を引き付けるために付けられたのではない。 “ピスタチオ風マフィア”の外側はアーモンドが全体を覆い、中はピスタチオ100%のペーストである。一方“アーモンド風コーザ・ノストラ”はいくつかのシチリア伝統菓子の内々の通称だ。これらは専門的ガイドブックやHPでも批評されている。

 コルディレッティ:マフィア・スタイルがスイーツからWebまで汚染している 

 菓子屋やレストラン、果てはWebに至るまで世界の半分でイタリアの加工農産物に犯罪に結びついた名前が使われ大きなビジネスが生まれることに警笛をならす。コルディレッティはパレルモの学生グループからタオルミーナの菓子屋でこれらのスイーツが売られていて、トリップアドバイザーの“マフィアのファン”部門でも取り上げられているという報告があったと述べた。「だがこれはWebや世界中でマフィアに関係するマーケティングの最新例に過ぎません。マフィアを想起させる名称を利用することはMade in Italyのイメージを大きく損なうことになり、統一規格にまでなってしまうような陳腐なマフィアのイメージを悪用する、苦しく嘆かわしい現象です」とコルディレッティの会長は述べた。(訳ここまで)」

 ここでマフィアのイメージはイタリア・ブランドを大いに損なうと指摘されていますね。実際数十年前までイタリア移民や料理は非衛生的とか栄養学的に偏っているとか悪いイメージがありましたので、今や世界的に評価されているイタリア料理やモノづくりのイメージに傷がつくことを大いに危惧しているわけです。コルディレッティによるとメキシコからタイのプーケットにいたるまでコーザ・ノストラやマフィアが使われていて「Bella Mafia(美しいマフィア)」といった名前のバーまであるとか(実際のマフィアは全然美しくありません!)。またスペインのレストラン「La mafia(ラ・マフィア)」の壁は残酷さで有名なギャングスター(Vito Cscio FerroやLucky Luciano、アル・カポネ)が描かれているそうです。日本のやくざも近年知名度が上がってきています、HarakiriやKamikazeほど一般化していませんが。ところでイタリアのジャーナリストたちが使うKamikazeの使い方に関してはイタリア人自身からも誤用が指摘されています。  

 話は変わりますが、この記事を読んでいて戯れにカンノーリ(イタリア語名詞cannoloで、日本で広まった名称cannoliカンノーリはcannoloの複数形です。当コラムでは日本で一般的使われている名称を優先して使用しています。)の起源を書いた記事を見つけました。なかなか面白いので最後に載せておきます。

  「シチリアの伝統菓子カンノーリの起源を明確に記したものはないが、古い文献にカンノーリと思しきものが記述されていることから推測することは可能だ。カンノーリの起源はとても古く、現在知られているような菓子になるまで様々に変化してきたのは明らかである。紀元前70年、大キケロがシチリアを旅行中に“Tubus farinarius dulcissimo edulio ex lacte fartus”(柔らかいミルククリームが一杯詰まったチューブの形をした小麦粉菓子)の虜になってしまったと書いたのが最初の記述で、どうやらこれが現在のカンノーリの祖先らしいがまだ初期の形ではっきりと定まっていない。どのようにして現在のカンノーリになったのか?嘘か誠か、歴史か伝説か不明だが複数の言い伝えがある。  

 仮説①、アラブ支配に関係している。古来よりシチリアでリコッタが作られていたにもかかわらず、砂糖とリコッタを混ぜ合わせることを考えたのはアラブ人で、これがシチリア菓子の基盤になった。  

 仮説②、カンノーリはカルタニセッタで生まれた。一部の歴史家は、世俗から切り離された修道女たちがカンノーリを考案したと主張している。別の歴史家によると、古代のレシピを念入りに作り直して変えたのはカルタニセッタの街に住んでいたハーレムの女たちで、彼女たちは贅沢な菓子を作って毎日を過ごした。このような経緯で伝統的アラブ菓子にシチリアの伝統食材を加えて改良したのだという。  

 仮説③、ジャーナリストや歴史家ガエターノ・バジレが強く推す説ではカンノーリはカーニバルの時期の特別な菓子として生まれた。カーニバルの菓子にはユーモアのセンスが欠かせず、同時に楽しく驕慢であるべき。こうして男根の形に作った果物の皮にリコッタのクリームを一杯詰めた菓子が考案されたのが最初。とはいえ、オリジナルの形そのままでは卑猥すぎて無理なので、両サイドを切る形にすることで見る人に敢えて口にしないがカーニバル精神満載のスイーツを思い起こさせることができる。(訳ここまで)」

 日本でも密かに売り出し中?のカンノーリ。日本的魔改造のカンノーリが現れる日が待ち遠しいですね!

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