イタリアでは3月の総選挙から87日過ぎました…が政府は決まっていません。首相のポストが未定なため暫定首相のジェンティローニ氏は引き継ぎができないようです。そもそも2年前の12月に行われた国民投票の責任をとって当時のレンツィ首相(民主党)が職を辞し、暫定首相として同党のジェンティローニ氏が首相になったのでした。当時総選挙は数か月後と言われたのですが、予想を翻して1年以上もジェンティローニ政権が続き、今年の春の総選挙で大方の予想通り民主党は大敗北、レンツィ氏は議員辞職したのです。
それから何カ月が過ぎたのでしょうか。本来なら選挙後1週間ほどで組閣人事が発表されるはず…なのですが得票率1位の五つ星運動(イタリア語での略称はM5s)、2位の北部同盟は主導権争いに終始しているようです。ベルルスコーニ氏が率いるフォルツァ・イタリアは3位につけています。エゴ丸出しの両党の党首2人が、いがみ合うか抱擁するか、ときどきベルルスコーニ氏も登場してイタリア各紙の連日の報道はめまぐるしく変わり、ミラノの株価は低迷しています。この状況は最近では遠い日本でも報道されるようになりました。EU域内の他の国々も注視しています(特にフランス)。
2週間ぐらい前からM5sと北部同盟がようやく歩み寄りをして、第三者を首相に据えることにしました。そこで登場したのがジュセッペ・コンテ氏です。ツィートで既出の情報ですがコンテ氏は53歳、弁護士、大学では私法を教えていて、10歳の息子がいます。バツイチ、ローマの自宅では息子と母親と暮らしています。政治未経験の彼ですが、レンツィ主義に共感を示しレンツィ政権の頭脳でもあったアンナ・マリア・ボスキ氏と友好関係にあります。コンテ氏の名前が報道されるや否やものすごい勢いで時の人になり、まもなく経歴詐称疑惑やローマの家の固定資産税未納や罰金未納などが話題になりました。経歴詐称といっても噂が独り歩きした感が否めないので、首相になるには問題ないと見なされたのでしょう。
〔ここ数日の動き〕
コンテ政権、マッタレッラ大統領の承認待ち状態へ
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大統領、組閣人事で難色を示す
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五つ星運動のディ・マイオ党首、北部同盟のサルヴィーニ党首両名とも怒り心頭で「選挙をするぞ」と叫ぶ。「組閣もしないで選挙…世界初だな、これは」と某紙に呆れられ、コンテ氏は首相職を辞退しました。
組閣人事で難色を示す、なぜ?
イタリア政府内では経済相のポストは大変重要なのですが、大統領に提出した人事案では経済相にパオロ・サヴォーナ氏が予定されていたのです。サヴォーナ氏は1961年経済と商業で優秀な成績で大学を卒業後イタリア銀行で働き、1976年政治家へ転身した人です。複数の大学などで教鞭を執ったこともあります。政治家としてはチャンピ政権時に産業相や経済相を務め、第3次ベルルスコーニ政権時も幾つかの役職につきました。
さて、サヴォーナ氏は政治家として経験豊富な人ですが、マッタレッラ大統領は彼が「EU脱退への道」を支持していると思われ、そこにイタリアの複数の銀行の不良債権問題が関わり「イタリア人の貯金保護に対して重大な危機」が予想されるためサヴォーナ氏の就任は認めない、となったのです。この決定以来マッタレッラ大統領は脅迫もされているそうで、イタリアをEUに留めるための最後の牙城のようですね。ちなみに脱EU主義はイタリア第一主義で、イタリアの利益のためという考え方が根底にあり、脱EU=悪者というわけではありません。
現在ディ・マイオ党首とサルヴィーニ党首はサヴォーナ氏を別のポストに移動する形で決着をつけようとしていますが、先の見通しは不明です。
イタリア政治劇場、登場人物たちは真剣ですが傍目にはドタバタ喜劇よろしく、続報はツィートでお知らせします。