コンテ内閣が議会で無事に承認され発足し、新首相は先日カナダで行われたG7サミットで外交デビューも果たしました。トランプ大統領とも会食し、フランスのマクロン大統領ともなごやかに握手する写真が紙上に載るなど政治未経験の首相としてはまずまずの出来だったようです。
一方でイタリアとフランスの国境の街ヴェンティミリアで難民を強硬に自国に入れないようにするフランスは、サルヴィーニ副首相の難民への対応を非人道的と非難しています。というのもサルヴィーニ副首相の就任後初の難民対応策に不満を募らせているからです。副首相は北アフリカを出港した難民船のイタリアへの入港を許可せず、難民船は海上を漂う事数日、結局スペインが難民船を受け入れることになったのです。この対応には国連も非難の声をあげています。でもイタリアが難民を受け入れれば、不況にあえぐイタリアに腰を落ち着けたい難民は少数派なので結局フランスの方へ流れていくことになるのですけれど、フランスとの国境地帯ではフランス側は難民を強硬に締め出し(フランスに入国できない難民が行き場をなくしヴェンティミリアには難民キャンプができている)ているのです。だからといってイタリアが難民受け入れを拒否すれば非難されるのです。その他いろいろ小さな事件があり今のところサルヴィーニ副首相が一身に政権の悪役を担っているような雰囲気です。
イタリアの現政権はM5s(五つ星運動)党と北部同盟が契約を交わして成立しました。連立といっても同盟ではなく契約なのです。なぜなら北部同盟は北部独立を標榜し結成された政党なので北部が政権基盤である一方、ポピュリズム政党のM5sの政権基盤は南部。事実先日行われた新政権成立後初の地方統一選挙でも北部同盟が北部での支持率を順調に伸ばし、M5sは南部で支持される構図は特に変わりませんでした。ちなみに前政権の民主党はシチリアを除きここでもあえなく敗北しました。
ファシズム的な北部同盟とポピュリズム政党のM5s、契約したとはいえ見解の相違は財政再建でも露見しています。
イタリア語で言う「Pace fiscale」とは直訳で「国庫の平和」、いわゆる健全な国庫=財政再建を意味しています。財政再建のために、予想では2年間で600億€(日本円約76兆8千億円)を国庫に納めないといけないとされていますが、実際は130億€に留まると予想されているのです。この問題をどう解決するか―M5sと北部同盟という契約政府の最初の試練となります。
(以下Corriere Della Sera紙から)
『北部同盟が長年提案してきた案は、健全な財政のための税収600億€のうち2019年に350億€を国庫に納めること。それは2種類の課税率で算出した一律課税の減税の初動費用を白紙に戻して得られるはずだが、実際ははかなり低い数字でせいぜい130億€あたりと見られる。なぜか?北部同盟は歳入庁の古い貸付総額(8千億€以上)を基に計算しているからである。問題はこうした貸付の大部分は机上の空論であり、もはや回収は不可能である。債務者は死者か無産者、また法律で手を出せない1番目の家だけを所有する人や失敗した事業に関するものだからである。議会の公聴会で、後に欧州会計監査院で歳入庁が過去に指摘したことによると回収可能な額は510億€と予想される…』
分かり難い訳で恐縮ですが、ここで問題になっているのはいわゆる「condono tombale墓場の恩赦」というもので、ベルルスコーニ前首相が提案したものです。
『2003年の財政法第9条で法人所得税、個人所得税、州税、生産活動州税、所得地方税などを脱税している納税者が国税庁と合法化できるようにし、その他のあらゆるアセスメントの棄却、税金の制裁措置の消滅、さらに税関係のいくつかの違反行為に対する処罰を除外することを規定した』のです。
こういう恩赦はイタリアでは数多くありました。1900年から2011年まで実に58回もあったのです。
財政を再建するための魔法の杖は、即効性がありますがマイナス面もちろんあります。脱税に対する戦いは無価値になり、どうせいつかは恩赦があると考えて真面目な納税者が減るなど。しかも北部同盟が考えているほどの金額にはならないということです。この『墓場の恩赦』は、従来であれば国税庁に記録されている債務を免除するだけなのですが、今回はどのようにするのでしょうか?ベルルスコーニ政権時の2003年の恩赦のように大規模に行うのでしょうか?M5sはあまり乗り気ではなさそうですけれども…