Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

イタリアのハロウィン 

今や日本でも広く知られるようになったハロウィン、

辞書には「ケルト人とアングロサクソン人の伝統的なお祭りが伝わったもので、アメリカ合衆国で10月31日の夜に盛大にお祝いされる。お祭りには様々なバリエーションがある。子供用の仮装をして家から家へと巡り、お菓子といたずらをせがむ。」(部分訳)とあり、

英語の "Trick or treat" をイタリア語で "Offri o soffri" (くれるか苦しみか?)と訳されたこともありました。なかなかおもしろい言葉遊びで感心しますが、残念ながらイタリア語永久市民権を得られなかったようです。

では、

カトリックの国なのにイタリアでもハロウィンを祝うのでしょうか?

15年以上前だったら "No" と答えられたかもしれませんが、近年事情が変わりました。

ハロウィンを祝うことについてイタリア人の間にいろいろな意見があります。その中でも「ハロウィンは死者の祭りである。かぼちゃをくり抜いて中にろうそくを灯し、特別な料理やお菓子を用意する。このときに戻ってくる亡き家族にそれを供え、人々は、時に重苦しくもなる悪ふざけをして愛する死者を偲ぶ。とりわけ子供にとっては亡くなった先祖を思い起こす良い機会となる。今のような形のハロウィンはアメリカ・バージョンだけれど、本来はイタリアにもある伝統的なお祭りである。死者を思い悼む本質を見失わないようにしよう」という意見が多いです。その他「アメリカに毒された単なる商業主義だ」という意見も、もちろんあります。「日本のクリスマスみたいに節操も無く商業主義に踊らされて浮かれ騒いでいるだけ」なんていう辛口な指摘もありました。

それはさておき、日本にも「盆」などのように先祖の霊を祭る一連の行事があることから、「愛する死者を偲ぶ」という人間の心情に国境はないのでしょう。

こうして本来はヨーロッパ起源のお祭りが、アメリカで陽気にパワーアップしてイタリアに逆輸入されました。だから単に表面的な楽しさに目を奪われるのではなく、祭事の本来の意義をあらためて確認しようという意見が多いのです。

ハロウィンの起源については「果実と種子の女神 Pomona に捧げた祭り」や、「Parentalia と呼ばれる死者の祭り」とつながりがあるとも言われますが、より一般的には「古アイルランドから派生しブリテン諸島で代々伝えられたゲール人とケルト人の祭り( Samhain :イタリア語 Samonio )」が関係があるとされています。

Samhain が「夏の終わり」を意味するように、2千年前のイギリス、アイルランド、フランス北部に住む人々の間では11月1日が新年の始まりでした。10月31日は暖かい季節の最後の日、続く11月1日は寒い季節の始まり、基本的に農耕民族だったケルト人にとってはそれは死と結びつく概念でした。彼らは死者の力に頼って次の年の豊作を祈願したのです。

自然のサイクルに深く関わる Samhain は、その後北部ヨーロッパに広まったキリスト教の教えとは異なったものでしたが、13世紀 法王グレゴリウス三世によって Ognissanti 「諸聖人の日」が5月13日から11月1日に移され、同時に Commemorazioni dei defunti 「死者の日」もこの日と定められました。こうしてキリスト教は異教の祭りを途切れさせることなくキリスト教のなかで存続させることに成功しました。

時代を経ても変わらない行事がある一方で、時代と国とともに形を変えていく行事があります。ハロウィンはヨーロッパで生まれ、南米や北米で形を変えて再びイタリアにやって来ました。伝統行事が廃れつつあるといわれる現在のイタリアですが、ハロウィンをきっかけに死者の祭りの本来の意味を再確認することは大変意義あることではないでしょうか。

 

 

 

 

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