雑用に忙殺されて2か月ぶりにコラムを更新します。ふと気が付くと、とても寒い世の仲になっていました、秋はどこ行った…
ということで12月は恒例「2024年サンレモ音楽祭出場者発表」があります。来年のサンレモ音楽祭は2月6日~10日の5日間かけて行われ、司会兼芸術監督はアマデウスですが、国の内外から毎晩特別ゲストが招かれるので最終日まで大いに盛り上がり、まさに国民的祭典といっても過言ではないでしょう。ちなみに今年の海外からのスペシャル・ゲストはラッセル・クロウ、言わずと知れた映画「ヴァチカンのエクソシスト」でアモルト神父を演じた人ですね。アモルト神父は2016年で亡くなられています(享年91歳)が、それまでのように人目を忍んでエクソシズムを行うエクソシストではなく、国際エクソシスト協会を設立、本を書き、公に発信しつつ現代の最強エクソシストとして積極的に活動した人でした。映画に出てくるエクソシズムはさすがに無かったでしょうが、儀式の最中悪魔に憑かれた人の口から釘などあり得ない物質が出てくることはあると生前インタビューで話されています。不思議ですね。
さて、サンレモ音楽祭の参加者の話に戻りましょう。全部で30組、過去の優勝者、ベテラン、若手などが、過去の経歴は一切関係なく、新曲を披露して優劣を競います。日本の紅白は過去の実績を評価されて出場しますが、サンレモ音楽祭では初出しの新曲が5日間かけて審査されるというわけです。事前に曲が外部に漏れてしまったら大問題で、過去にはフェデツ(フェデス)がフランチェスカ・ミキエリンとのコラボ曲「Chiamami per nome」(サンレモ音楽祭2021で2位を獲得)の冒頭部分をフェデツがSNS上で公開した時は、あやうく出場停止になるところでした。ちなみにフェデツと妻キアラ・フェッラーニは肖像権の問題で度々話題になりますが、フェデツは今年は度重なる病気で入退院を繰り返しました。彼は34歳とまだ若いので来年は病気を克服して元気に活躍してほしいと思います。来年のサンレモには残念ながらフェデツはいませんが、400組の応募者から選ばれた出場者は以下の通りです(3組は12月13日のSanremo Giovaniで選ばれるので現時点では未定)
Fiorella Mnnoia
Geolier
Dargen D’Amico
Emma(2012年優勝)
Angelina Mango
La Sad
Diodato
Il Tre
Renga e Nek(Rengaは2005年優勝)
Sangiovanni
Alfa
Il Volo(2015年優勝)
Alessandra Amoroso
Gazzelle
Negramaro
Irama
Rose Villain
Mahmood(2019年、2022年優勝)
Loredana Bertè
The Kolors
Big Mama
Ghali
Annalisa
Mr. Rain
Maninni
Ricchi e Poveri(1985年優勝)
出場者リストを見ると、アマデウス曰く、出場者は曲の善し悪しを厳密に審査して選出されるといいますが、国民的娯楽としてあらゆる世代が楽しめるように配慮されていることが良く分かります。個人的には1967年にジェノヴァでグループを結成したRicchi e Poveriがどんな曲を披露するか楽しみですし、またAlfaやBigmamaのような2000年生まれの若い感性を持つラッパーの曲も楽しみです。
さて、最後に話を変えます。
最近Giulia Cecchettinという22歳の女性が恋人に殺されるという事件がありました。事件の概要は:
Giuliaは恋人Filippo Turettoと一緒に車に乗っていてヴェネツィアのヴィゴノーヴォで行方不明になり、その後バルチス(フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州ポルデノーネ県)近郊の大渓谷沿いでGiuliaの死体が発見された。死因はナイフによる多数の傷からの失血死。容疑者Filippoはドイツで確保、イタリアに移送され現在取り調べ中である。
いわゆる典型的なフェミサイド(女性が家族やパートナーに殺される事件のこと)です。注目すべき点は、この事件をきっかけにイタリアに根強く残る家父長制度が事件の根本にあるという問題意識が社会全体で公に共有されるようになったことです。実際多くの女性や一部の男性はイタリア各地で沸き上がったフェミサイド根絶デモに参加しました。ところで日本のメディアに責任があると思いますが、「イタリアはマンマが強いよね」とよく言われます。でもイタリアはれっきとした家父長制度の国。イタリアの母は子供を大事にするけれど、社会としては家父長制が人々の意識の根幹にあるのです。そのような社会で2022年は家族あるいは(元)パートナーによる殺人事件の被害者の91%が女性でした。イタリアは、実は女性に優しいわけではないのです。EUの中でもイタリアはフェミサイドが多い国です。ただし、今回の事件をきっかけに社会全体で一人一人が問題意識を持ったような印象を受けました。どの国でも、どの社会でも、人々が生きている限り常に変化するものです。イタリアもまた変わってきていると実感した出来事でした。
ではまた