州毎に危険地域を三種類に分けて対応している現在のイタリア。サルデーニャやラツィオなど黄色地域は最も危険度が低くロックダウンはありません。高校はオンラインでの授業ですが小・中学校は開校しています。比較的のんびりしているとはいえ病院は新型コロナ患者が優先になっているため、緊急性の低い他の傷病者は後回しにされています。不幸にも治療が間に合わず亡くなる場合があり、しばしばメディアに取り上げられています。日本が同様の事態にならないように各自責任をもって行動したいものです。
厳しい規制が効いてきたのか、11月30日イタリアでの新型コロナ感染者は16,377人、死者672人と急激に減少しています。とはいえクリスマスは家族でも大人数で集まるのは禁止、また飲食店は休業する可能性があるので食品卸業者や農業関係者などにとって今年は何とも厳しい年になるのは確実です。日本の初詣同様クリスマスには教会のミサに大勢の人が集まりますが、今年は信者を前にしたミサはなく代わりにTV中継することをEUが勧告しているので、そのようになるでしょう。
さて、今回の話題はナポリの救急車事情に関するfanpageの記事から。もうね、何とも…さすがナポリ。
またイタリアでは州によって状況は違いますが救急車による傷病者の救急搬送(無料)以外に、民間のボランティア団体による有料の救急車兼介護タクシーも活躍していること、日本のように介護タクシーという呼び名や専用車はなく全て救急車で統一されていることを特記しておきます。
『ナポリでは救急車1回利用が1,000ユーロ(約12万5千円)』
「新型コロナで違法救急車がブーム」
新型コロナ禍の救急事態でナポリ及びカンパーニア州では違法救急車が急増している。小さな会社が違法救急車(しばしば保健所の認可を得ていない)を使って病人を搬送し、数百ユーロ請求する。ナポリ赤十字団の委員長は「こうした事業の登記や監督、あるいは介入する機関がない」と述べた。
僅か数千ユーロで中古の救急車を買い、2時間で会社(団体)の登記を済ませるだけ。これだけでプライベート救急車事業に参入できる。規制の弱点や監視体制の不備をかいくぐって儲ける。1回の搬送に数千ユーロ、患者とその家族を極限まで搾り取るのだ。もちろん違法だが実際には数年前から既にあり、ここ数か月の新型コロナによる緊急事態でより活発になった。正規の救急車が搬送の多さで対応できない場合、患者にとって唯一の手段はこれしかない。違法救急車がのさばる現状にナポリのイタリア赤十字の委員長でありPediatrico Santobono-Pausilipon病院の整形外科医パオロ・モナルキオは警笛を鳴らす。
Fanpage「ボッタクリ救急車についてお話しですが、説明していただけますか?」
患者の搬送に関しては特別な許可証を携行した専門の救急隊員が乗る正規の救急車でなくてはいけません。しかし全く関係ない小さな会社、時にはペーパーカンパニーが搬送業務をしているのです。こうした違法救急車の衛生状態、あるいは正しい方法で衛生掃除ができているか、全く保証されていません。特に今のような時期は緊急搬送車及び積まれている機材が次の搬送前に適正に掃除されていることが重要であることは周知の事実です。
Fanpage「このような一種の公共事業は登記されないのですか?」
無数にあるボランティア団体の登記の記録はあります、一般的にそこに救急業務を行う人の名前も記録されています。また各団体は管轄の保健所から認可を得ています。認可を管理する事務所はありますが、この種の搬送業務のために十分有効な認可を得ている団体かどうか利用者が確認できる記録簿はありません。そのため誰でも即席救助者になれるのです。会社を作り、中古の救急車を購入して道路を走らせれば事足りるというわけです(編集者注:4~5千ユーロが元手として必要)。
Fanpage「以前からこの問題はあり、警察に届け出までされているそうですね。」
数年前に違法救急車の問題で警察に届け出ました。違法救急車が正規の救急車を病院に近づけさせないようにロレート・マーレ病院とカルダレッリ病院の前に停まっていたからです。こうした会社の連中が病棟にまで登ってきて、病人から依頼された正規の同業者を蹴散らして脅すことが良くあります。現在も救急車が病院の前に前にいることができないため、廊下で名刺を配るためか中の誰かに呼ばれたかして違法救急車の連中が患者のところに以前と同様に問題なく行くことができます。
Fanpage「救命救急部門に犯罪組織が入り込んでいる可能性があるとお考えですか?」
カモッラに収益が流れる、とか大きな犯罪の巣がある確証はありません。この救急車の問題に関して犯罪組織の関係者が関わっていることは確かです、彼ら独自の流儀で分かりますよ。問題は救急の世界に留まりません、ただでさえ健康不安を抱えて困難な状況にある患者が脅されて、困難は悪夢に変わってしまいます。
Fanpage「こうした会社の救急車を利用した場合の料金は一般にいくらぐらいですか?」
ルイジ・デ・マジストリス市長は1,000ユーロと話していますね。ナポリの同地区での搬送に400ユーロ請求されたことは知っています。おそらく救急外来の前で順番待ちさせられる場合は追加料金を請求されるでしょうから、トータルで1,000ユーロになるのは簡単です。あいにく公共の救急車は少なくてボランティア団体の救急車に頼まざるを得ず、法外な金額を強要する無認可の救急車に出くわすこともあるのです。
Fanpage「赤十字として他の街でもこのような異常事態があるかどうか調べましたか?」
あいにくカンパーニア州だけですね。赤十字の他の団体と比較検討しましたが北部ではこのような問題は浮かび上がってきませんでした。このような制度の悪用を止めるためには、違法かどうか検査する期間、保健所の認可証と運転許可証の呈示を求めれば十分でしょう。私たちと他の正規の団体は一連の管理下に置かれて、複数の必要条件を満たさなければいけません。私たちが求めることは、救急部門の透明性と金儲けの道具にされることを止める事です。
(訳ここまで)