イタリアの音楽といえば美しい旋律と、日本語にはかなり訳し辛いロマンあふれるイタリア語の歌詞。ある年代の方たちは日本語で歌うカンツォーネに懐かしさを感じられるでしょう、ちなみにあの時代の日本語訳は本来のイタリア語とは異なっています。イタリア語を正確に日本語にすることは重要ではなかったと思われます。
-閑話休題-
そんなカンツォーネですが、ジョバノッティがラップで売れて以来何か変わってきたようでした。今回紹介する記事によるとイタリアの音楽は変化の時を迎えています。歴史的にイタリアの音楽は世界に大きな影響を及ぼしてきたことからその変化は世界中に広がっていくでしょう。あるいは世界から影響を受けてイタリア音楽が変化しつつあるのかもしれませんね。
⑴ 記事を読む前の予備知識として一般に各世代はこのように分類されます:
1946年~1960年生まれ ベビーブーマー世代
1961年~1980年生まれ ジェネレーションX世代
1981年~1995年生まれ ジェネレーションY世代
1995年以降に生まれた世代 ジェネレーションZ世代
⑵ ジェネレーションZと1997年~1995年生まれの世代の特徴を比較すると:
1997年~1995年生まれの特徴
大学卒業 71% 、コミュニケーション・ツールは文章、会社など組織に帰属する、起業したい 10%
ジェネレーションZ世代の特徴
専門課程に進学を検討する 64%、コミュニケーション・ツールは写真、働くのは個人的利益のため、起業したい 20%
ところで記事中で取り上げられているLil Nas XやBillie Eilishはアメリカの新進気鋭のラッパーですが、似た現象はイタリア国内でも起きています。歌手に限らずソーシャルメディアを使って新しい才能がどんどん出てくる状況に、古い世代は目をくるくるさせているといったところでしょうか。この記事はそのような状況を良く説明していると思います。
『ジェネレーションZはどのように音楽を変えるか?』
流動的な突然変異体の若い世代が生まれたのは1996年~2010年だが、彼らは意志が強く世紀の変わり目に直面していることを良く分かっている。彼らはジェネレーションZと呼ばれる。ジェネレーションZはインターネットと共に生まれた世代というだけではなく、直接的にソーシャルメディアと共に生まれた世代であり、自分たちがカテゴライズされることを嫌悪し、多様なジャンルの音楽と消費者のプラットフォームをミックスする。 新世代の定義はソーシャルメディアと共に生まれた、この新世代はGlobalwebindexによると世界中のインターネットユーザーの13%、アメリカと欧州の9%を占める。前世代(ミレニアルとジェネレーションY)と比較すると、このとても若い世代は言葉を覚えるより先にスマートフォンの操作を覚えた。ジェネレーションZの95%はモバイル経由でネットに接続し、接続時間は一日平均4時間以上である。彼らの両親の世代(ジェネレーシX)がTVの前にいる時間が20時間~13時間であるのに比べてTV視聴時間は少なく、i Gen-Z、Netflix、YouTubeなどのオンデマンド・サービスを利用する時間は両親より多く、音楽ストリーミングサービス・ユーザーを形成する正真正銘の第一世代だ。
IFPIの消費者に関する研究(2018年)では、16~24歳の世代の94%が音楽を聴くためにスマートフォンを使う、81%がストリーミング配信を使う(YouTubeを含む):ミレニアル世代が73%にとどまるのに対して大変高い割合である。とはいえ最新世代はさらに衝撃的だ、レーベルがないのだ。最近ネット上にi-D magazineの興味深い記事が載った。Gen-Z(ジェネレーションZの略)にとって音楽ジャンルの壁のみならず性別の壁は消えつつあり、“かれらの音楽は容易に変わりカテゴライズするのは難しい”現象が起きている。もちろん彼らが聴く音楽の種類に限った話ではなく、新世代のアーティストたちも同様なのである。他のミュージシャンと共作し格付けされることを受け入れる傾向が多少ある。BillboardのインタビューでBillie Eilishは「ジャンル分けする考え方は大嫌いだ。歌が一つのカテゴリーに入れられなければいけないとは思わない」ときっぱり言った。
またi-D magazineはストリーミング配信の爆発的拡大がこの変化の主な原因だと書いている:「Spotfyのような環境では特定のアルバムやジャンルとの関係に比重が置かれたが、新世代は自分たちの好みの歌を選別しプレイリストに加える。」特に注目すべきことは、異なった種類のプレイリストである。Sweety Highが行った昨年の研究では、オンラインの上位はジェネレーションZの若い女の子たちが占め、ジェネレーションZの女性のほぼ97%が「少なくとも5つの異なったジャンルの音楽」を聴いていた。実際「ジェネレーションZの中心は音楽が入り乱れている」「この世代には過去になかったような多種多様なジャンルをミックスする可能性を持っている、ジェネレーションZの子はいろいろなジャンルや好みを混ぜ合わせて新しい音楽を作り出す」とSweety HighのFrank Simonetti CEOは断言する。音楽の好みがより多様になりつつあるのは明らかで、この現象は音楽制作にも衝撃を与えている。ミュージシャン自身が習慣的に様々なジャンルの音楽を聴く場合、多種多様な音の融合が起こることが多い。ソーシャルメディアやファンの共有をミュージシャンは意識している:見事な混成音を作りだすのなら、彼らにとってあらかじめ決められた囲いはなく、音の混合に格付けもしない。ジャンルの掛け合わせと伝統から外れた音を作ることは音楽の独自性を生み出す一つの方法で、これはジェネレーションZのアーティストやファンのお気に入りのやり方だ。アーティストは曲を作って聴かせるためにたくさんのミュージック・プラットフォームを活用し、またアーティストとして第一歩を踏み出して最初のファン層を獲得するSoundcloudから大勢の若いスターがやって来る。
“ネット”と“共有”も重要だ。モバイル技術の活用がいわゆるPSA症の主要要因にもなるほど若い世代にとって決定的な要素だと見なされる。そしてアーティストはインスタグラムが支配するネットの海を泳ぐ。Lil Nas XやBillie EilishのようなジェネレーションZのスターを通じてネットのプラットフォームから音楽が作られ、そして影響し合う。ネット上で同じ嗜好や視点を共有できる人を見つけることができる一方でそれに勇気づけられる。他方では他者と自分自身を区別させることができない。もう一つ鍵となる要素は各プラットフォーム間で汚染があること。例えばLil Nash XのOld Town Roadは歌詞の一節が好評を博したが、その歌詞はもともとTik Tok上で思春期の若者たちが発展させたサーガの一節だった。とはいえ、New York Timesが彼をジェネレーションZの本物の中心人物と評するほどLil Nash XはTwitter上で既に大変有名なアーティストだった。
ネット云々というより創作という点であまりにも無謀な挑戦だ。ジェネレーションZの革命は束の間の現象というだけではなく、進化の過程に奥深い変化を残すだろう。Oxford Dictionaryではないが、2年前に既に“youthquake”という言葉がワード・オブ・ザ・イヤーとして選出されている。2024年にはジェネレーションZがアメリカのマーケットの40%を征服するだろう。分類する事に対してだけでなく環境問題や環境持続性に関してネット上で繋がって、無関心になって、不信を抱く。
ジェネレーションZは世界を変える?
さあ、どうかな。でもとりあえず彼らは曲作りを変えてしまった。
(訳ここまで)
イタリアでは世代を問わずアーティスト同士で共作したり共演したりすることは良くあります。例えば今年のサンレモ音楽祭に出場したIl Voloはクラシック奏者と共演しました。Il Voloは古典的な美しい旋律を得意としているのでクラシックとの共演は自然な流れで素晴らしかったです。現在YouTubeで見られなくなっているようで残念です。またラップとポップの融合などはジェネレーションZ以前の世代でも良くあるので記事で言われるほどジェネレーションZは特異変異体でもない、とはいえジェネレーションZ世代ではソーシャルメディアと曲作りが合体しているという指摘には大いに納得で、今後音楽以外でもジェネレーションZ世代はとても興味深い世代になるのではないでしょうか。