イタリアは階級社会であり、一般的に従来から貧富の差は大きいと言われていましたが、今回世界経済フォーラムで公表された報告書で格差が大きくなっていることが明確になりました。最近の経済危機がより一層事態を悪化させていることは明白です。ただ昨年の国民投票でレンツィ政権が目指した構造改革は頓挫したので、具体的な方向性が現在のところ良く定まっていないように思われます。そんな中発表された報告書の内容は、イタリア人が日常的に感じていることを裏付ける結果になりました。
『イタリアの不平等:超リッチ(1%)と最貧困(30%)の所得格差は30倍以上』
ダボスの世界経済フォーラムで発表されたオックスファムのレポート
「99%のための経済」で明らかになった大きな経済格差:フォーブスが調査した8人のスーパーリッチは 世界の最貧困地域の半数(なんと360億人)に匹敵する財産を所有している。 資産家がどんどん豊かになる一方、貧困者はどんどん貧しくなる:世界の富の不公平な分配は大きくなる一方との結果だった。8人のスーパーリッチの財産が360億人分の財産に匹敵するという事を考えるだけで十分だろう。 他方で僅か1%の人が2016年の1年間に残りの99%の人の所得をため込んだ。
オックスファムのレポートには、2016年のイタリア国内の純資産の配分に関して言及している。 この非政府組織によると「現代の巨大なピーマンたちは驚くほど速い速度で豊かになっている、その速さは今後の25年間で最初の富豪(1兆ドル以上を有する個人)の誕生を目にすることができるほどだ。1日に100万ドル使っても2738年もつ額である。」格差拡大の背景には、納税回避の実践と政治の世界で影響力を行使することがある。
オックスファムは「億万長者の財産の3分の1は相続財産で、43%は縁故に関係している」と見積もっている。自分に有利に取り計らってもらうために政治に影響力を行使する億万長者と金銭の使い方には相関関係がある。世界中どこでも政府は会社や有産階級の個人に課せられる税金を切り詰め続けている。」
不平等なイタリアでも状況は大きく変わらない。2016年の1年で、イタリア国内で最も富裕な層1%の資産が30%の貧困層の資産の合計の30倍であり、イタリア人より貧しい貧困層との比較では415倍である。それだけではない、イタリア人の富裕層20%は国の資産の69%弱を有している(額面価格で9兆9730億ドルに相応する)、その他20%が17,6%を占め、貧困層60%が占める資産の割合はわずか13,3%である。
フォーブスのランクに名前が挙がったイタリア人億万長者7人の純資産は貧困層30%の資産に相当する。オックスファム・イタリアの代表ロベルト・バルビエーリによると「保健などの基本的公共サービスと教育は切り捨てにあっている、多国籍な大資産家は被害をこうむらずに国税庁の裏をかくことができる。99%の声は耳を貸されることはない、なぜなら政府は1%の富裕層(大企業や最も恵まれたエリートたち)の利益を優先し過度な不平等と戦う段階にないことを表明しているからだ。」
オックスファムは1988年~2011年間に記録された一人当たりの所得のサープラスの配分を再構成し分析した。レポートによると世界中で一人当たりの可処分所得が約46%増えたのは世界の最富裕層10%で、世界の最貧困層の半数はかろうじて10%手にしたに過ぎない。イタリアの資料から同期間中に増加したイタリア国内の所得は2200億ドル(基準となる2005年度の購入価格に等しい)に相当することが明らかになった。
イタリア国内の一人当たりの可処分所得の45%は富裕層20%に行く、また29%は最富裕層10%に行く。この最富裕層の所得はイタリア国内の貧困層の半数の所得の合計を上回る。1988年~2011年間に、貧困層10%は1%に相当する所得を得た。すなわち年間では一人当たり約4ドルを得たことになる。
特に、仕事の生産性の向上が貧困層のためには何も役に立っていないことは明らかだ:ユーロスタットのデータによると賃金水準は労働者の努力に適正な方法で報いないのみならず、家族に最小限必要な物を保証することも常に削られていく。この観点からイタリアは欧州の平均値から2ポイント低いところにいる。
無情な審判は世界経済フォーラムの「The inclusive growth and Development Report 2017」で取り上げられている経済先進国30か国の中でイタリアは27番目に位置付けられていることからも明らかだ。イタリアの順位がこのように落ちたのはインクルーシブ開発指数の評価が関わっている。通称Idiと呼ばれるこの評価基準は国の経済的な豊かさだけでなく、社会的平等を推進し、十分なインフラの整備や公共サービスを整え、倫理的に適った方法と恵まれた環境で事業を行うことができる能力があるかどうかを測る新世代の経済指数である。
これが国の発展段階を分け、①教育と能力、②公共サービスとインフラ、③退廃、④実経済での投資と融資に対する仲介、⑤企業の特性と資産の形成、⑥職業と仕事の報酬、⑦税金と社会保障という7つの重要な指標で各国を評価する。包括的な成長を達成することの難しさは、経済活動の51%がIdiの指標で最近の5年間で情け容赦なく順位を下げられたことからも伺い知ることができる。その上42%の場合は、一人当たりのGDPの成長率が最悪のパフォーマンスだと記録されている。
原因は、世界経済フォーラムによれば平均6,3%と見積もられた経済活動の77%において増加している“社会的不平等”に起因する。報告書は政府に新しい方法で構造改革を推進し、市民の平均的な生活を向上させることに基づく“経済成長の新しいモデル”をできるだけ早く構築するように勧めている。
世界経済フィーラムのRichiard Samansは「包括的な成長を推進するグローバルな合意があるが、具体的というよりは指標である。」と述べる一方で「有効なやり方で私たちの問題に答えるために、経済的政治は平均的な生活に根差した新しい規則を必要としている、構造改革について再考し実施することを考慮し新しい地図を頭に描く。包括的で誰もが恩恵を受ける成長を最終目標にして。エコノミストはマクロ経済、金融監督、商業的な政治という点をこれ以上考慮すべきではない。」と言う。
提議されなければいけない問題は、未来の世代の負担を軽減するために「世代間の平等性」つまり国の負債を減らすことである。
訳ここまで