コラム

「武器とイタリア」

karakimami

イタリアが武器を輸出している国だという事は、日本ではあまり知られていないかもしれません。

先日対Isの空爆で使われたのはイタリア製の爆弾でした。これは誤爆だったため結果として子供を含む民間人が亡くなり、イタリアのメディアは「私たちの爆弾が民間人を殺してしまった」と悲痛なニュースをトップで流しました。

明るく陽気なイタリアですが、武器商人としての一面もあります。その武器の個人使用の状況が変わりつつあるようです。

『銃を撃ちたがるイタリア:“狩猟許可証は持っている、でもそれは家を守るため”』

3年間で約30万人が許可証を取得した。

“身を守るために銃を所持するのは難しいのでスポーツのためだと偽る”

日常雑事を乱す才能に恵まれたろくでなし-それはしばしば変化の途上にあるという信号なのだが-その不規則な現象からこの調査は生まれた。その名も「銃所持許可証」。

イタリアは家の下のスーパーマーケットでセミオートマチックの銃を誰でも買うことができるアメリカではない。武器の所持は最高度の取り締まり対象だ。警察や軍隊を除いて、所持ができる銃の種類はとても少ない、銃携帯の種類はさらに少なく小銃と拳銃のみである。 とはいえここ最近の数年間で事情は変わった。武器用の許可証が爆発的に増えた。2015年に発行された許可証の数は126万5484だった。つい3年前までたった100万ちょっと(正確には109万4487)だったことを考慮すると、その増え方は尋常ではない。

何があったのか?

〈恐怖の到来〉

許可証の発行数の推移を考察するのは興味深い。2012年と2013年に増加が見られる、この増加を含むとしても、2014年と2015年には異常な増加現象がより鮮明に表れている。

イタリアでは一人の市民が3つの理由から許可を得ることができる:個人防御のため、狩猟のため、スポーツのため。そこでまさにこの二つの理由で甚だしい増加が見られるのだ。狩猟用の許可証は12,4%増だ。スポーツ用の許可証はなんと18,5%増えた。個人防御用の許可証は数年前から減少傾向にあり変わらない。私たちはみんな突然ヤマシギの愛好家になる、あるいはカンプリアーニ(男子ライフルの選手)のライバルになったのか?

もちろん、違う。 この現象の背後に隠れている恐怖心は現実にイタリアを変化させている。この変化についてイタリア射撃協会(Unione Italiana Tiro a Segno、通称UITS)の会長Obrist Ernfriedははっきりと予見していたようだ:「戸口に武器を設置するという新しい市民感情に結びついた社会の複数の変化が、武器を使いこなすための活動を活発化させるという事になります。」と2015年のUITSの活動報告の書の中に書いている。

大金が動く:市民は射撃訓練に参加するようになる、理由は武器を使いこなす知識は自分の身が安全ではないと感じる時代にあって確かな感覚を呼び覚ますからで、価格は高騰する。 自宅に侵入した泥棒を家主が打ち殺すという事件が起こって沸き起こった議論と、防衛のための法律解釈の拡大を求める動きが勝手に話を進めている。昨年UITSの登録者が11%も増加したので、UITSの会長は将来枕を高くして眠ることができるようになるだろう。

イタリアは、市民が軍隊や警察が当てにならないから武装する国になりつつあるのか?

だがなぜ個人防御用ではなく狩猟やスポーツ用の許可証が増えているのか?

〈カムフラージュ〉

「なぜなら個人防御用の許可証はほとんど発行されないから」と言うのはヴィチェンツァの小事業主で、匿名を条件に小紙にメカニズムを説明してくれた。「狩猟やスポーツ用の許可証の申請のために必要な書類は少なくて用意するのも簡単だが、個人防御用の許可証の申請にはさらに別の書類が必要だ:必要性の動機を明らかにしなければいけない。高価な宝石と共に移動するとか、命を危険にさらす特殊な仕事に就いているのなら通るが、僕のような小事業主はまず無理だね。だったら狩猟用の小銃を家に置いておくほうがましさ。狩りには一度も行かないかもしれない、でも誰かが家に不法侵入しようとして、家族が危険にさらされたら、少なくとも準備はできている。」

ヴィチェンツァの小事業主の動機は、データから見る限り大勢の人の動機でもあることが分かる。ロンバルディア州、ヴェネト州、エミリア・ロマーニャ州が射撃協会に登録した許可証の大部分を占めるとしても偶然ではないだろう。これらの州は最近の数年間で押し込み強盗の被害に苦しみ、そこにある種のメディアの圧力があった。

〈緊急の法律〉

警察署は上記の理由で増加したということは否定している。ライフル選手や狩猟者の爆発的な増加は、もっとも緊急性の高い規則が2013年に施行されたことで、家に武器を保管している人は誰でも武器所有の判断をする医師の証明書を提示しなければならなくなったからと説明する。精神障害の治療中だった人が武器を使用した最近の事件を受けて、個人の武器使用に関する規制強化が強化された。当時メディアは盛大に叩いた。

警察曰く、大勢の人が簡単な証明書を提示する代わりに武器の許可書を更新するか申請するためにそれを悪用する。

ありそうなことか?

ええ、でもこの傾向を裏付ける資料はなく理由もわからない。ありふれた証明書の代わりに、より複雑で費用も掛かる官僚的な手続きに着手する人がいる理由が。

〈狩猟とスポーツの射撃〉

理解を深めるようにしよう。私たちは最近の数年間でイタリアで発行された許可証の数を苦労して調査した(法律でロンバルディア州のイスプラで複数の州にいる狩猟者の存在を監視しているが、現在まで作成された唯一の報告書は不首尾に終わった。たった8州しか問い合わせに回答しなかったからだ。)。

小紙は信頼できる数字を読者に明示できるように全州からデータを集めた:2015年の狩猟者の数は57万9252人だった。最近の8年間で(公式最新データはIstatの2007年)ほぼ4分の1に減少。狩猟者数は年を追うごとに減少する、この危機を前にして、一方で狩猟用許可証は増加したのである。

スポーツ用の許可証の場合も同じであると言う事ができるだろう。最近の数年間でFITAV(Federazione italiana Tiro a Volo イタリア・クレー射撃協会)の会員は400人と大幅に増加した。UITSの会員は(前述のように)増加し、最終的に数千人になった。 FITAVの会員になることが義務付けられていないにもかかわらず、会員登録の有効期限は1年間で、一方許可証の有効期限は6カ月である。

こうした数字は4年間で37万3千人から47万人に増加したと判断するのに十分ではないのか?

新しい法律はどれほど重いのか?

疑問を解決するために別のデータを見なければいけないだろう:イタリアで販売された武器の数。

こうして国内の武器の新所有者の数を計算することができると思われる。だがそれでも狩猟者用以上に、毎年イタリア人に売られている小銃と拳銃の数を追跡するのは不可能である。軽量武器に関する常設観測所(Osservatorio Permanente sulle Armi Leggere)の所長Piergiulio Biattaは事情に通じている:「イタリアではみんな知っています。この数か月間で何台のテレビが売られたのか知ろうと思ったら、分かります。滅茶苦茶売れた洗濯機が何台だったのか知ろうと思えば、分かります。でも売れた武器の数を知るのは不可能です。もちろんですが、追跡方法や技術がないわけではないありません。各武器は登録され追跡されています。仮に政治的思惑が働いてデータが公開されないとしたらとても重大な事態です。」

〈生産と販売〉

唯一の公式データは武器の製造に関するデータで、ブレシアのBanco Nazionale di Prova(ここであらゆる武器が登録されている)から提供された。

登録された武器は売られて最終的にどうなるのか?それを知るのは不可能だ。

「内務省はイタリア人に売られた武器の数を公表していないし、外国で売られた武器の数も明らかにしていません。」とBiattaは言う。

この不透明性が国際的に当惑する状況をも作り出している。例えばイラクでサッダーム・フセインの倉庫の中から3万丁の自動拳銃(ベレッタ)が発見されたが、これはイタリアの財務警察から否認されたものだった。イラクで発見されたベレッタの変遷は、2006年トリノ冬季オリンピックに関する大幅な規定という大海原のなかに押し込まれた小さな遡及法のおかげですぐ忘れられた。

一方、2012年まで外国に輸出された武器を監視する義務すらなかった。 毎年閣僚評議会の議長によって作成される武器製造に関する報告書は広大なグレーゾーンを残している。例えば輸出用に認可されている各製造会社が武器の価格を明示しているが、武器の量は明らかにしていないし、どの国に売ったのかは言っていない。

そうはいっても900万€相当の拳銃がエジプトに売られたとき、世論の興味を引く可能性がある、または国内のテロ活動に使われる可能性があるあらゆる物質の輸出を禁止するEUの規定は有効だった。仮に議会の決定は法で規制されないというのが本当であるとしたら、同様に政治的に正しいのである。

〈欧州で死者多数〉

個人の安全を確保するために武装する市民が暮らす国で独占的に武器を軍隊や警察に販売する国から変わりつつあるイタリアの変化は、とてもデリケートで軽々しく扱われるべきではない。ガーディアン紙で公表された火器使用が原因の死者の統計を分析したデータに落胆した。イタリアは100人あたりの武器の平均が11,9で武器の所持に関しては平均的だが、火器が使用された殺人に関しては10万人につき0,71なのでイタリアはブラックゾーンにいることが分かる。 我々のデータは、しばしば不法に保持している武器を使う組織犯罪が大多数を占めているゆえに数値が高めに改竄されていることは間違いない。だがまさにこの特異性が問題をいっそう際立たせている:

イタリアのように、国が武器を自由化する衝撃を。

                                                                                                                            訳ここまで

今回は意外な記事(La stampa紙)を取り上げました。これを読むとイタリアについての印象が変わるかもしれませんね。

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