アメリカの映画やドラマでお馴染みのイタリア系アメリカ人、ある世代にはマフィアのイメージが強いかもしれませんね。
イタリア人移民は主に100年前、60年前、50年前に海を渡って成功するチャンスを掴むためにアメリカに渡った人たちです。彼らが新しい言葉や文化と折り合いを付けつけながらアメリカに住み着き、地域の習慣に慣れようとする中で、スラングの〈伊米語〉のような混成語が生まれるのは当然のことでした。
このような混成語は今日まで移民の子孫によって使われています。
外国語の自力学習を応援するBabbel.comは、様々な地方言語と溶け合い、地域共同体で使われるようになったリトル・イタリーの俗語を表にしました。
今回はそれをご紹介します。言葉の成立過程の興味深い一端を見ることができるでしょう。
1.Sciusci(靴磨きの浮浪児)
この言葉はVittorio De Sicaヴィットリオ・デ・シーカの映画のとても若い靴磨きという哀愁漂うイメージを想起させる。単に英語「shoe shine」がイタリア風になまったものとはいえ、それはつまりイタリア語の「lustrascarpe(靴磨き)」と同化しつつあるのだ。
2.Orrioppo
絶滅途上の動物の名前か?いや、違う。「Hurry up」の言い間違えである、いわゆるイタリア語の「Sbrigati!(急げ!)」のこと。
3.Vascinga mascina/ vachiuma clima
イタリア系アメリカ人の主婦は「vascinga mascina」(英語: washing machine、イタリア語: lavatrice、洗濯機)を使い、「vachiuma clina」(英語: vacuum cleaner、イタリア語: aspirapolvere、掃除機)で家を掃除していた。
4.Bisinisse/ giobba/ bosso
新しい bisinesse:ビジネス でも始めたのか?あるいは giobba:上から目線で威張る人 と知り合ったが、この ボス:boss はあなたに停戦を申し込むことはない?これらの言葉は専門用語である。「bisinisse」(英語: business、イタリア語: attività、ビジネス)、「giobba」(英語: job、イタリア語: lavoro、仕事)「bosso」(英語: boss、イタリア語: capo、ボス)
5.Goomba
新しいダンスグループの名前?イタリア系アメリカ人のために改良されたズンバ?答えはいたって簡単。方言cumpà!の英語化である。
訳注①:ナポリで多く使われているイタリア語方言のcumpàの英語化で、意味は仲間、友達のことである。
訳注②:goombah, gumba, gumbahとも書かれる。イタリア移民の子孫を意味する。
6.Broccolini
野菜市場の屋台のイメージが頭に浮かぶが、この場合野菜(訳注:イタリア語のbroccoloブロッコリに似ている)は全く関係ない。ニューヨークの最も有名な地区の一つブルックリンの発音が間違ってできた言葉。
7.Toni
リトル・イタリーの典型的な住人の名前のように思われるが、実際にはイタリアもっと正確にはフィレンツェから第2次世界大戦時に直接もたらされた言葉。 戦争時にフィレンツェの駐屯地でアメリカ人兵士たちがスポーツ着の裏側に、目的地に間違いなく届くように〈To N.Y.〉と縫ったのが起源である。この習慣が残り、フィレンツェではスポーツ着は「toni」と呼ばれるようになった。
8.Carro
「英語: Car」のイタリア語化である。イタリア語Carroの意味は「馬車」なのだが、伊米語のCarroの成立過程とはほとんど関係ない。
9.Wazza mara you
英語の「What’s tha matter with you?」(イタリア語:Qual è il problema?)がなまったもの。
訳ここまで
こうして見ていくと一口にスラングと言っても、一つ一つのスラングには独自の歴史があると良くわかります。成立過程に思いを馳せながら、こうしたスラングに接すると〈興味深い〉とともに〈愛おしさ〉で胸がいっぱいになるようです。