2014年5月25日、欧州議会選挙が終わりEU加盟国の選挙結果が出揃いました。当日の Corriere della sera 紙は
「ダービーはレンツィ首相率いる Pd (民主党)が圧勝の得票率40,8%、 グリッロのM5Sを20ポイントと大きく引き離し」このような見出しで選挙結果を報じました。
レンツィ首相自身はこの選挙のことを「un derby tra speranza e rabbia希望と怒りの間を駆けるダービー」に譬えています。そしてこのダービーの勝者は彼マッテオ・レンツィ(得票率40,81%)。2009年結党のジュセッペ・ピエロ・グリッロ氏(通称ベッペ・グリッロ)率いるM5Sは得票率21,16%、ベルルスコーニ氏が頑張るフォルツァ・イタリアは16,82%という結果でした。 一億千百万人以上のイタリア人が民主党を支持し、ベッペ・グリッロ氏の支持者は五千八百万人でした。簡単に計算すれば有権者の4人に1人がレンツィ首相を支持したことになります。
それではマッテオ・レンツィという人物をあらためて見てみましょう。
Matteo Renzi マッテオ・レンツィ(1975年フィレンツェ生)はフィレンツェ州知事(2004‐2009)、フィレンツェ市長(2009‐2014)を務めました。2014年2月からイタリア共和国首相で、Pd( Partito Democratico 民主党)の党首でもあります。イタリア歴代で最も若い首相です。
一方大方の予想を裏切って大敗を喫したM5Sはベッペ・グリッロ氏が結党した政党です。Giuseppe Piero Grillo ジュセッペ・ピエロ・グリッロは(1948年ジェノヴァ生)、活動家でコメディアンでもあります。ガーディアン紙で彼のブログは「2008年度世界で最も影響力のある50のブログ」の一つに選ばれました。2009年 Movimento 5 Stelle (M5S)党を結成し、高い失業率や就職難に苦しむ若年層の不満を吸収する形で勢力を伸ばしてきました。
今回の結果にグリッロ氏は大変失望しました。もっとも選挙前に公言していたように政治家を引退?とはいかないようですが。ちなみにイタリア北部独立を目指す Lega Nord 北部同盟の得票率は6,16%でした。
勝利の 感動渦巻くなか、レンツィ首相のツィートは
「Un risultato storico. Commosso e determinate, adesso al lavoro per un ‘Italia che cambi l’Europa.歴史的な結果だ。感動していると同時にはっきり決心した、今こそヨーロッパを命運を握るイタリアのために働くときだ。」
このツィートは大げさと思われるほどの決意を感じさせます。
なぜか?
それは日本でも報道されたようにEU諸国でEuroscettismo欧州懐疑主義が大躍進したことに関係しています。フランスではマリーヌ・ル・ペン氏の極右国民戦線の得票率は25,1%、イギリスのNigel Farage 氏のUKIP(イギリス独立党)は得票率27,5%と、いずれも歴史的大勝利を収めたからです。
得票率が高ければ高いほど各党は多くの議員を欧州議会に送り込むことができる、すなわち反EU主義(欧州懐疑主義)の議員の数が増えることで彼らの発言力が増す、という結果になります。フランスでは与党の社会党が敗北し、政権維持に大きな支障が出たため内閣改造に踏み切らざる終えなくなりました。
またドイツではメルケル首相のCduキリスト教民主同盟の得票率は35,3%と、Spdドイツ社会民主党の27,2%に勝利したもの反EU党のドイツのための選択肢は7%の得票率を獲得、また極右政党NPDも1議席獲得しました。ここでも欧州懐疑主義は明白に力を伸ばしていることが判ります。
このように反EU主義(欧州懐疑主義)を標榜する政党がヨーロッパ各国で勢力を強めたことに勢いを得て、ル・ペン氏やNigel Farage 氏はイタリアの北部同盟やM5Sに手を差し伸べようとしています。もちろんこの流れはイタリアだけでなく欧州全体に広がっていることは言うまでもありません。
翻ってイタリアの状況は、民主党の圧勝により与党一党で政権維持が可能になると予想されています。経済が低迷しているとはいえ、イタリアが欧州議会で割り振られた議席数はイギリスと同じ73議席です。
① ドイツ 96議席
② フランス 74議席
③ イギリス 73議席
③ イタリア 73議席
④ スペイン 54議席 …
つまりイタリアは欧州議会で相当の議席数を有していると言えます。他国での苦戦を前に欧州議会はイタリアの選挙結果を大いに歓迎しています。そしてイタリア人の大部分も欧州議会でのイタリアの存在感が増したことは良き未来への第一歩として、今回の選挙結果に満足しています。
今後レンツィ首相は果敢にイタリアの経済改革を推し進めていくことでしょう。イタリアで久しぶりに肯定的なニュースが駆け巡った数日でした。