Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

北イタリアの大気汚染 ~最大の原因は排気ガス~

寒い時期、ミラノを遠くから眺めると白い霧のようなものがすっぽりと街を覆っている様子を見ることがあります。詩的な風景に思われるかもしれませんが、実はこれはスモッグで、近郊の工場地帯から流れてくるのです。

イタリア経済の中心地ミラノは、ポー平原の中央にあります。ポー平原は現代イタリアで最も活発に商経済活動が行われているところです。フェラーリなど一流メーカーが生まれたのもここです。

今から2千年以上の遠い昔、南イタリアの実り豊かな大地がまだ新興国だったローマ帝国(当時は共和制ローマ)の食を支えましたが、現代イタリア経済は反対にこの地域なくして国は成り立ちません。 経済活動が活発な地域では、経済と環境保護の両立は容易ではないようです。

北イタリアの大気汚染について幾つか記事があったので今回はそのなかの一つを見てみましょう。

「ヨーロッパとイタリアにまたがる黒い帯、ポー平原の汚染   

~スモッグのために住民の寿命を平均3年縮まっている~

イタリアで最も汚染された地域はポー平原である。複数の研究は、大気汚染によって住民の寿命が平均2~3年失われていると指摘した。

世界保健機関WHO (イタリアでは Oms = Organizzazione mondiale della sanita’ の略称)が定める大気汚染の最低基準を超えたことが原因で、ロンバルディア州(州都ミラノ)では毎年300人の住民が死亡している、そのうち80%(約230人)がミラノに集中しているのである。このデータを見ても汚染の《鋭い》牙のことばかりに考えが及び、最も重要な問題が見過ごされてしまう。

〔忘れ去られた問題〕

自動車の使用制限とセットで自転車の使用やカーシェアリングを推奨する試みはPM10の濃度を18%減少させ、亜酸化窒素の濃度を10%減少させた。このデータや下記の報告はミラノの Fondazione IRCCS Ca’ Granda Ospedale Maggiore Policlinico (フランチェスコ・スフォルツァによって1456年に創設、ミラノで最古の病院、通称 Ospedale maggiore あるいは Policlinico di Milano)主催の「大気汚染の代償、忘れられた問題」会議で注目を集めている。

IEFE ( Istituto di economia e politica dell’energia e dell’ambiente 環境とエネルギーの政治経済研究所):「上記病院の科学長Pier Mannuccio Mannucci の説明によると、人体の肺のバリア機能を透過し血流に入り込むと考えられるブラックカーボン(黒色炭素)が大気汚染の一番有害な特殊要因で、これを減少させることによって大気の質が改善されることが明らかになったことが一番重要です。PM10の総括的な濃度を減少させる効果はないと批判されている日曜日の交通規制でさえも、類似の気象条件で尚且つ交通規制がない最近の日曜日と比較してブラックカーボンを78%減少させるという結果が得られました。」

〔交通渋滞が主因〕

Agenzia europea dell’ambiente (欧州環境庁)のヨーロッパの大気に関する最新の報告書では、ポー平原の大気は改善の傾向が見られるにもかかわらず、ポーランド最大の工業地帯とならんでヨーロッパで最悪の大気汚染である。ミラノでは大気中に放射されるPM10の85%は交通渋滞とCエリアに集中し、Agenzia Mobilita’ Ambiente Territorio ( AMAT ミラノの公共機関、都市環境と発展について継続的に監視及び研究を目的に2009年に設立された)は大気中に放出されるPM10の70%以上が自動車やユーロ3及びユーロ4のディーゼルトラック(自動車の排ガス規制ユーロ3は1999年、ユーロ4は2006年発効、現在は2014年9月のユーロ6で環境規制を厳格化している。現基準はほぼ日本と同じ。)、また2ストロークガソリンエンジン搭載のミニバイクが原因であると見積もっている。」

ところで2014年に世界遺産に選ばれた、美しいブドウ畑が広がるピエモンテ州のランゲ、ロエロ、モンフェッラート地方が位置するのもポー平原です。そのような事からも欧州最悪の大気汚染は気掛かりですが、ミラノ及びその周辺が大気汚染の責任者であると記事では指摘しています。厳格化する排ガス規制で大気汚染を改善できるのか、日本ではアンティークになりそうな古い車が現役を守っていることも多いイタリアですので、ユーロ6の排ガス規制が実際に効力を存分に発揮するにはもう暫く時間がかかるかもしれません。

↑ ページトップへ