Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

モンティ Monti, ベルルスコーニ Berlusconi そして 税金(Imu)

2月の選挙に向けて、毎日賑やかなイタリア政界です。

ちなみに Berlusconi ベルルスコーニ元首相は il Cavaliere とも呼ばれています。これは1977年に Cavaliere del Lavoro 注1 を授与された名誉称号です。Cavaliere は「騎士」という意味の名詞ですが、これに定冠詞 il を付ける事で彼個人に限定した特別な称号になります。このような例としては、

Lorenzo il Magnifico  = Lorenzo de' Medici  

Lorenzo de' Medici はかの有名なフィレンツェのメディチ家三代目当主(1449-1492)です。

「ロレンツォ豪華王」と日本の辞書にありますが、Lorenzo の短くも華麗で偉大な人生に敬意を表して Magnifico の本来の意味「偉大な」という訳語の方が彼に相応しい気がします。また彼の生きていた時代、フィレンjツェは君主制ありませんので、厳密な意味では王ではありませんでした。しかし彼は典型的なルネッサンス時代の君主の一人として、生前も死後もイタリア史に燦然と輝きを放つ存在です。彼は大知識人であり卓越した政治家でありましたが、とりわけ芸術に深く通じていました。彼の残した詩、バッカス賛歌は大変有名なのでご存知の方は多いと思います。ここで冒頭の一部をご紹介しましょう。

Quant'e' bella giovinezza  (若さとは何と良いものだろう)

Che si fugge tuttavia ! (でも君の手からすり抜けてしまう!)

Chi vuole essere lieto, sia: (たとえ君が幸せでありたいと願っていても)

Del doman, non v'e' certezza... (明日は何も分からぬことよ)

( Lorenzo de' Medici, Canti carnascialeschi, Canzona di Bacco ) (意訳、唐木)

また、ヘレニズム時代のマケドニア出身の英雄アレクサンドロス(アレクサンドロス3世)もイタリア語では Alessandro Magno あるいは Alessandro il Grande 「アレクサンドロス大王」と呼ばれます。このように形容詞に定冠詞を付ける事で、その形容詞はある特定の個人に捧げる、とびっきりスペシャルな名詞(尊称)に変化するわけです。もっともベルルスコーニ前首相が cavaliere に相応しい騎士道精神を持ち合わせているかは定かではありませんが。

 

さて、現在のイタリアでは ベルルスコーニ元首相が減税を売りに盛大にメディア戦を展開し、Monti モンティ前首相はきっぱりと「現在のイタリアの苦境の原因は前任者のベルルスコーニ政権にある」と何度も厳しくインタビューに答えています。これを違う!と言い切れるものはいないでしょう。

原状の責任が誰にあるのか、というちょっと不毛な争い以外に、日本の消費税のようにイタリアの財政赤字を好転させるために考案された税制 Imu (Imposta municipale propria ) も頻繁に話題になります。

Imu とは Imposta municipale propria あるいは Imposta punicipale unica、の頭文字をつなげた頭字語で、不動産に課税される税金(直接税)のことを指します。これは IRPEF ( Imposta sul reddito delle persone fisiche ) 「所得税」 と、非賃貸物件に関係する所得税、建物及び建築可能地と農地にかけられる税 ICI (Imposta comunale sugli immobili ) を一つに統一し、2012年から施行されました。

前ベルルスコーニ政権が2011年(Dlgs. n. 23 法令23条)に導入したのですが、当時は2014年から、主として使用している家屋に応じて限定的に施行すると定められていました。モンティ政権になってから、国の財政の強化・公平性・成長促進( manovra Salva Italia 「イタリア救急戦略」との名称で知られています)を早急に推進するために、ベルルスコーニ時代の法令を変え、2015年からの完全施行を予定して2012年から施行されました。

この税金がイタリア人に重くのしかかるであろうことは明白であり、ベルルスコーニ元首相は再三 Imu を縮小すると明言しています。

1月15日行われたインタビューで、モンティ前首相は Imu について次のように答えました。

「我々(モンティ政権)は、前政権が目指した公的赤字を無くすという意思を、私の前任者(ベルルスコーニ)が確実に施行することが可能かといった問題をふまえて決断したように、(施行を)1年前倒しすることによって実行に移したのです。」と説明し、また「(導入を避ける)状況が整った後で再び導入せざるを得なかった Ici の時のように、選挙戦の最後の山場になってあれこれ紆余曲折するといった事態は避けて、 Imu を縮小することを私自身も望んでいます」と約束しました。

他にも ベルルスコーニ前政権から押し付けられたかのような redditometro 「所得基準」(所得の総合評価をする際用いられる条件の一つ)問題やベルサーニ民主党書記長についても自身の意見を述べました。

また、ベルルスコーニ元首相についてモンティ前首相はこう述べています「ベルルスコーニはすでに3度イタリア人を幻惑した」、「ベルルスコーニが減税の話をするとき、私はハーメルンの笛吹き男の童話を思い起こす、彼はなんとも頼もしい笛吹きだ」

さて、ベルルスコーニの4度目の笛でイタリア人は踊るのでしょうか?それとも現実的な選択をするのでしょうか?

 

注1 Cavaliere del Lavoro はイタリア共和国がイタリア王国より引き継いだ制度。農業、工業、商業、手工芸といった分野での仕事の功績に対して贈られる勲章。日本語の訳語では「労働騎士勲章」とされています。

 

 

 

 

 

 

↑ ページトップへ