Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

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唐木 麻美 )

「武漢肺炎(新型コロナウイルス)がイタリア全国の刑務所を揺るがす」

 3月9日時点でイタリアの武漢肺炎(新型コロナウイルス)感染者は9172人、治癒者724人、死者463人に達しました。コンテ首相が「不要不急の外出禁止、ただし生活用品の買い物はOK」と記者会見で発言したとたんイタリア中の24時間営業スーパーマーケットには店外にまで溢れる長蛇の列ができました。基本外出禁止でも食料の買い出しはできるのですけれど…スーパーマーケットが閉鎖されるわけでもないしイタリア人は緊急事態に理性的な判断ができないの!?と日本人は言いたくなると思います。でもこれ、日頃イタリアでは行政システムが想定通り機能しないため人々は首相の会見ぐらいでは安心できないのですね。アメリカとは違った意味で自分の身は自分で守らないといけないのです。ですからTVやネットで長蛇の列の映像を見ても「やっぱり群集心理は…」とか考えないでください。イタリアにいたら自分や家族を守るためにとる当然の行動なのです。

 4月3日までイタリアの全学校および大学は休校になり、イタリア人がパスタより好きなサッカーの試合も延期になりました。ロンバルディア州など北部は閉鎖されて各道路では軍ががっちり見張っています。違反した場合は逮捕もするとメディアを通じて規制をかけています。さぞかし街中も火が消えたように寂しいかと思いきや、結構人々は外出していました。コルソ・ブウエノスアイレスではバールのイスに陣取っておしゃべりに花を咲かす人たちの姿や行きかう人たちの姿からはあまり悲壮感はなかったですね。自宅待機なんてなんのその。ローマの週末も平時と比べればもちろん人出は圧倒的に少ないですが、映画館も完全に閉鎖されるわけではなく営業していました。そのあたりに危機感を持ったからでしょう、首相自らが会見で外出禁止と釘を刺したのは。

 さて世界で2番目に感染者が多くなったイタリアですが、泣きっ面に蜂のように別の災難が火を噴き拡大しています。Twitterでも報告しましたがイタリア全土の刑務所で囚人(イタリア全国の囚人数:6万1千人、うち外国籍の囚人は2万人)たちの抗議活動が始まり、次第に深刻さを増しています。いわゆるコロナウイルス・パニック刑務所版は北部の刑務所から南部に瞬く間に拡大の一途をたどっています。一週間のパドヴァの刑務所長は武漢肺炎の影響で「刑務所は今や砂漠のようにひっそりしている。見捨てられたような孤独感が膨らむ」と言っていました(3月4日)。二日前の3月7日には「家族の面会は一時停止」が警察から発表されました。この時看守には刑務所内の囚人のみならず医師や看護師、また面会に訪れた家族にも検温することが義務付けられたのです。ある看守曰く「検温をしなければいけないことは分かっていますが、でも実際どうやってやればいいのでしょう。(検温は)保健省の仕事で私たちの仕事ではないのです。こんな仕事を押し付けるのは全く持って不当です」行政が考えた緊急策に現場が対応できない様子が良く分かります。こうして刑務所を完全に閉鎖することに至ったのですが、現場では事態が悪化することが懸念されてました。事実、3月8日に北部の刑務所から始まった、対新型コロナウイルス緊急措置に抗議する囚人たちの抗議活動は、モデナの刑務所で抗議活動中の囚人1人死亡(死亡原因は不明)を皮切りにイタリア全国で囚人が7人死亡しました。

 ところで2月26日のPalermo Today紙では「新型コロナウイルスが刑務所に入り込んだら、唯一の解決策は脱走すること」と指摘されています。まさにその通り、イタリア全国27か所の刑務所や拘置所で脱走未遂事件が起こりました。La Repubblica紙によると「メルフィ(バジリカータ州)の刑務所で看守5人と医療関係者4人が囚人に監禁されていますが、命の危険はないとのことです。マリーノ・デル・トロント刑務所(マルケ州)にはモデナの刑務所で暴動&医薬品の強奪に関わった囚人41人が移送されてきました。前日起こったモデナのサンタンナ刑務所の囚人暴動&医薬品強奪事件では40歳囚人が麻薬のやりすぎで死亡したようです。ローマの刑務所でも囚人が鉄格子を引き抜き、そこから新聞やマットレス!まで投げ捨てて火をつけました。建物内からは囚人の抗議の叫びが聞こえ、警察は建物周囲の道路を封鎖しています。フォッジャ(プーリア州)の刑務所では囚人50人が脱獄し、36人は直ぐ捕まりました。脱走した囚人は何れにしても敷地内にいて新型コロナウイルスから最大限保護するように要求しているということです。その他ここでは書ききれないほど各地の刑務所で囚人が屋根に上って座り込む、あるいは独房に火を放つなど抗議活動が継続中です。最初に騒動が起きたモデナの刑務所では治安が徐々に戻りつつあると関係者が述べているので、イタリア各地の囚人抗議活動も当局の懸命な努力で沈静化するでしょう。ただ無政府主義者やテロリストの囚人がこれを機に活性化しているようなのでイタリアの治安が心配になりますね。

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