コラム

「Pino D’Angiòピーノ・ダンジョの80年代大ヒット曲「Ma Qual Idea」とBnkr44によるカバー曲「Ma Che Idea」、両方ともすごく良い曲である件について」

karakimami

イタリアが国を挙げて熱狂する歌番組サンレモ音楽祭は2月11日に始まり2月15日にフィナーレを迎えます。ここで披露されるのは初出の曲のみ。事前の情報が漏れた場合は失格になる場合もある、とても厳しいルールも有名ですね。2021年の音楽祭で2位になったFedezフェデツとFrancesca Michielinフランチェスカ・ミキエリンの「Chiamami per nome」は事前にFedezが最初の部分を漏らしてしまって危うく失格になるところでした。

サンレモ音楽祭ではBigと呼ばれるベテラン部門以外に新人部門もあり面白いのですが、それぞれ参加者がカバー曲を披露したりもします。ここで披露されるカバー曲が良いのです、クオリティが高い。今回このコラムで取り上げたいのが、昨年のサンレモ音楽祭でBNKR44がカバーし、その後配信された「MA CHE IDEA」。

この曲のオリジナルはシンガーソングライターのPino D’Angiòピーノ・ダンジョ(本名Guiseppe Chierchia)の「MA QUALE IDEA」はイタリアで最初のラップとファンクのフュージョンと言われていて、ダンジョ自身がインタビューで話しているように、この曲は「自分のディスコでのうぬぼれた振る舞い」を題材にしています。要するに「女にウケると思ったけれど実は嫌がられていた」と。とはいえ80年代を代表する大ビット曲になりました。

ちょっと最初の歌詞をみてみましょう。()内は意訳です。

L’ho beccata in discoteca  (ディスコで彼女にちょっかいを出した)

Con lo sguardo da serpente (蛇のような目つきで)

Io mi sono avvicinato (俺は彼女に近づいた)

Lei già non capiva niente (彼女はもう全然分かってなかったな)

L’ho guardata, m’ha guardato  (俺は彼女を見つめて、彼女は俺を見つめて)

E mi sono scatenato (そして俺ははっちゃけた)

Fredo Astaire al mio confronto (俺と比べてフレッド・アステアは)

Era statico e imbranato (間抜けで木偶の坊だったな)

Le ho sparato un baccio in bocca (彼女にキスをお見舞いした)

Uno di quelli che schiocca (閉じている唇を素早く開かせる、ああいうキスだ)

Sulla pista indiavolata (悪魔のような激しいダンスホールの上で)

Lì per li l’ho strapazzata (よろめく彼女を)

L’ho lanciata riafferrata (俺は突き放し再び掴んで)

Senza fiato h’ho lasciata (息つく間もなく彼女を放し)

Tra le braccia mi è cascata (彼女は俺の腕の中に倒れ込んだ)

Per i fianchi l’ho bloccata (彼女の腰にがっちり手をまわして)

E ne ho fatto marmellata (彼女をメロメロにしてやった)

とまあ、今では立派な犯罪行為?女性からすると、見知らぬ男からこういうことをされて嬉しいか?こんな風にされて相手に好意を持つ???疑問符が激しく頭の中を行き交います。

で、当然ながら女性は嬉しくないわけですね。こうして曲は「勘違い男にこんなんやられてマジ腹立つ、身の程を知れ」という感じに展開していきます。ダンジョ自身も「この経験から相手をリスペクトすることを学んだ」と話していますけれど。

とはいえ男の妄想が砕け散る歌詞はけっこう面白く、また曲そのものも斬新で当時大ヒットしたことも納得です。Youtubeでhttps://youtu.be/nnC_1y9ba60ご覧ください。

また、ダンジョは大病を繰り返したことでも知られています。昨年の2024年7月6日(享年71歳)に突然亡くなったことを家族が公表にしましたが、原因は持病によるものでした。咽頭癌の手術6回、肺癌の手術2回、心筋梗塞、心肺停止により体にはペースメーカーと7つのステントが入ることに。でも「人生というのは、激動の時も、困難な時も、複雑な時も、美しすぎるよ」と話していました。彼は声帯なしで歌う世界で唯一の歌手でもありました。

で、この曲をカバーしたのは若い歌手の6人グループBnkr44、彼らのジャンルはポップ、ギターポップ、ポップラップ、ドラムンベース。2019年トスカーナ州エンポリ、当地の若いアーティストたちの溜まり場(Bunker、Bnkrはこの場所から取った)で結成されました。彼ら曰く、決まったメンバーはいないので、新しいメンバーも、古いメンバーも自由に出入りでき、7人目のメンバーに溜まり場のオーナーもマネージャーとして名を連ねています。良い意味で、自由で拘りがなく縛りがない様子(ユル~いとも言い換えられそう)に今の時代を感じると思うのは筆者だけでしょうか。

彼らのカバー曲は「Ma Che Idea」というタイトルで配信されています。ダンジョの低い声との共演がとても良いです。オリジナル曲が今風に軽やかになった感じですね。

Youtubeでhttps://youtu.be/nv2wblCeb5Qhttps://youtu.be/9YCsacJ6WVEがお勧め。

それにしてもダンジョは年季が入って実に渋くて良いと映像を見るたびに思います。享年71歳とは、50歳のとき肺癌で6か月の余命宣告されたわりに長生きですが、やはり早いですね。とても残念です。心からご冥福をお祈りします。

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