コラム

「年金受給開始年齢引き上げと少子化の関係~イタリア銀行の研究報告書から」

karakimami

 誰もが知るイタリアの少子化。経済の低迷、若年失業率の高さ、伝統的家父長制度(今でもマフィアなど犯罪組織に色濃く残る)、男尊女卑などが言われてきました。また若年世代を見習い期間などと称して数年間無給あるいは極端な薄給で働かせることは、非常に悪しき社会慣習と言うことができるでしょう。

若年世代が適切な収入を得られないことで晩婚化や少子化が進んでいる点は社会的に問題視され、イタリアでは若い世代が雇用改革を求めてデモをする光景が頻繁に見られます。

 今回当コラムで取り上げるのはFanpage.itの記事、少子化問題の原因に関して興味深い視点で述べられているので見てみましょう。

『バンキタリアがその理由を説明する〈イタリアでは年金生活に入るのが遅ければ遅いほど出生率が下がる〉ワケとは』

一部の国では年金受給年齢が上昇するにつれて出生数が減少する。これはイタリアにとっても当てはまる。イタリア銀行のある論文で考えられる原因が説明されている:祖父母が頻繁に孫の世話をする事がカップルに子供を作る決断を促す。

 子供を作ることは複雑な選択だ。経済を含め多くの事を抱えることでもある。必要な時に子供の面倒を見てくれる年金暮らしの祖父が一人でもいることが分かっていれば、それがカップルが子供を作る選択を後押しする可能性になる。これは真実だ、特に地中海域の国々にとっては。その一国、イタリアでは子供を持つ人に対する公的支援が少なく、内々に親戚に子供の面倒を任せることが多い。

 イタリア銀行の研究報告書にはこれが年金にとって何を意味するか述べられている:年金受給年齢が上がるほど、すなわち“年金暮らしのお爺ちゃん・お祖母ちゃん”になることが遅くなるほ、子供を作る決断をするカップルが少なくなり、こうして出生率は低下する。経済学者エドアルド・フラットラ署名のこの研究は、地中海諸国では「各成人が子供を持つことを決断する確率が彼らの両親のどちらかが年金受給を始めた直後に上がる」と主張する。

 一般的に全てのEU加盟国では出生率は閾値2,1(すなわち一人の女性が最低2人産むことで人口増加傾向にあるとされる状況)を下回っている。イタリアやスペインのような国々ではこの数字が極端に低く、女性の生涯出生率は1,3以下である。これは、長寿化に加えて、人口の平均高齢化の主な要因である。

 国民が高齢化し、国による年金のための支出も多くなる。このため過去30年間に多くの国では年金受給開始年齢を引き上げた、と研究は説明する。しかし、不測の反作用があったようだ、まさに年金受給開始年齢の引き上げが平均年齢をさらに上昇させていると思われる。寿命が延びて年金受給期間も延長されるに従って、子供の数がますます少なくなり、人口の高齢化に拍車がかかる。

 当然だが親が年金生活に入ると否定的影響があることも明らかだ。例えば年金額は働いていたころの給与より大幅に少ないことも考えられ、したがって子供を助けるための支出を減らすだろう。そしてこれが子供を持つことを躊躇わせるようになる。

 とはいえ欧州11か国を対象にした2014年~2018年のデータ分析をもって結論は明らかだ:家族の絆が一際強く、子供の世話に関して親戚に任せる傾向が非常に強い(公的支援の少なさも原因している)地中海諸国では、「孫を持つ可能性は年金受給が始まって2年後に著しく上昇する」。一方他の国々では、この影響は「統計的にほぼゼロ」。

 また研究では、いずれにせよイタリアの出生率を上げるために年金受給開始年齢を引き下げる必要はないと付け加えている。提案としては、公的資源を子育てにより多く費やすことだろう。

(訳ここまで)

 いかがですか?新型コロナで外出規制があったころ、孫の面倒を一手に引き受けて大活躍したのは祖父母世代でした。メディアでは“複数の孫を預かって病気になりそうなお祖母ちゃん”とか取り上げられました。日本でも孫育てで活躍されている祖父母が多くいることを考えると、この記事はとても興味深いものでした。皆様はいかがですか?

では

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