コラム

「コーザ・ノストラの大ボス、マッテオ・メッシーナ・デナーロ逮捕!」

karakimami

 2023年1月16日、イタリア政府が特別手配をかける10人の一人マッテオ・メッシーナ・デナーロの約30年間の逃亡生活が終わりました。パレルモのプライベート・クリニックで治療中にカラビニエリの特別捜査班が逮捕されたのです。司法府との見事な連係プレーで実現したマフィアの大ボス逮捕のニュースにマッタレッラ大統領は内務省に祝電し、メローニ首相はパレルモに行き今回の逮捕の立役者たちと面会し「(メッシーナ・デナーロが逮捕された1月16日は)歴史的な日。マフィアの犠牲になった人たち、その家族、真っ当な人たちのための祝福された日。マフィアとの戦いで亡くなった多くの英雄たちの犠牲は無駄ではないのだから。」と称賛しました。イタリアでは大変有名なこの逃亡犯の逮捕はメローニ首相の言う通り「歴史に残る日」で、まさにイタリア全国が湧いています。ではここでメッシーナ・デナーロについて簡単に説明しましょう。

マッテオ・メッシーナ・デナーロ(通称ウ・シック(訳注:「瘦身」の意味)またはディアボリク)は1962年4月26日シチリアのトラーパニ県カステルヴェトゥラーノで生まれました。コーザ・ノストラのボスの一人(訳注:コーザ・ノストラはマフィアの組合なので各地区にボスがいる)。カステルヴェトゥラーノ地区及びトラーパニ県のマフィアのボスで、アグリジェントやパレルモにも影響力を持つコーザ・ノストラで最強のボスの一人です。

 マッテオ・メッシーナ・デナーロの父フランチェスコ・メッシーナ・デナーロ(通称ドン・チッチョ)もまた80年代初頭からカステルヴェトゥラーノのコーザ・ノストラのボスで複数の殺人に関与したとして8年間の逃亡生活後1997年終身刑になりました。兄弟サルヴァトーレは1998年ベリチェ作戦にて逮捕された24人のうちの一人です。当時サルヴァトーレはアグリジェント県シャッカのイタリア商業銀行に勤務していました。また10歳下の妹アンナ・パトリツィアはラ・スタンパ紙によると兄メッシーナ・デナーロの連絡係としてコーザ・ノストラと深く関わっていました。彼女は2016年最高裁で14年半の懲役が確定しています。

 メッシーナ・デナーロは約10件の殺人事件で終身刑になっています。彼が関わった殺人事件の中には、警察に寝返った父の代わりに誘拐(当時12歳)されて2年に及ぶ酷い拷問・虐待の後に殺されて死体は酸で溶かされたジュセッペ・ディ・マッテオ殺人事件も含まれます。

 逮捕時には3万5千ユーロ(約500万円)の高級腕時計&高級服を着用していたことから逃亡中とはいえ贅沢な生活をしていたことが窺えます。彼の推定資産は40億ユーロ(約5635億円):生涯にわたって行ってきた麻薬売買、恐喝、様々な異業種のマネーロンダリング、公金横領が富の源です。

 逮捕に至るきっかけはメッシーナ・デナーロの健康問題でした。彼は2021年にシチリアのトラーパニ県マザーラ・デル・ヴァッロの病院で結腸癌の手術を受けました。そして治療のためにパレルモのマッダレーナ・プライベートクリニックにアンドレア・ボナフェーデという偽名を使って化学療法の予約をした時に逮捕はこの時と決められていたようです。なぜなら当局はメッシーナ・デナーロと親しい複数の家族の通信を傍受して、彼の健康状態を把握していました。傍受から得た情報と癌の治療記録と照合した結果、アンドレア・ボナフェーデがメッシーナ・デナーロであると密かに特定していたのですから。逮捕時メッシーナ・デナーロは化学療法を受ける直前で、決まった住所はなく、素直に本当の名前を言ったそうです。因みに彼の運転手も逮捕されました。

 こうして逮捕後すぐに軍用機でペスカーラの空港まで送られてアクイラの刑務所に収監されました。そこでがん治療も継続するということですね。体調が思わしくないとも言われています。

 特捜班は逮捕後、メッシーナ・デナーロの隠れ家を家宅捜索しました。出てきたのは…コンドーム、バイアグラ、レストランのレシート。また彼に名を貸したアンドレア・ボナフェーデにはカンポベッロ・ディ・マザーラに家を買うことを許可し、弁護士の姪を立会人にしました。

 「国(警察)に協力は一切しない」とメッシーナ・デナーロは検察官に言ったと日刊紙は伝えています。また収監されているカモッラのボスたちの一部からは「メッシーナ・デナーロは誰かに売られたかもしれない」の声が出ているようです。下っ端たちは「スパイがいた」と騒ぐ一方でボスたちの独房を支配するのは今なお有効な“沈黙の掟”…何となく格の違いを見るような気がするのは私だけでしょうか。因みにアクイラの刑務所には同じくコーザ・ノストラの一員で有名な殺人者ジュセッペ・グラヴィアーノが終身刑で服役中です。

 ところでメッシーナ・デナーロには娘がいます。その名はロレンツァ・アラーニャ、1995年生まれ。人生で一度も父と会った事はなく、母と一緒にカステルヴェトゥラーノで育ち、現在は同地でパートナーと息子と暮らしています。父の逮捕に「父の事は何も知りたくない」とコメントしました。逮捕前日まで彼女の家の前にあった警察の監視車両もようやく姿を消して、マフィアのボスを父に持つ重荷が少し軽くなったかもしれませんね。マフィアのボスを親に持つ子供たちは、生まれた時から重い十字架を背負っているようなもの。現代とは思えないような“マフィアのボスの親同士が決めた結婚”を強制させられるなど“ヤクザの掟”や周囲の社会的な問題から、自由に生きることはなかなか難しいのが実情です。中にはそんな状況に絶望して自殺してしまう子もいるほどです。そして、悲しいけれど“マフィアの子はマフィア”、実際メッシーナ・デナーロも父の代からマフィアでしたね。ロレンツァ・アラーニャ、その息子、マフィアの血の呪いを断ち切るために頑張ってほしいと思います。

では

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