コラム

「“マネーロンダリング防止のため現金使用制限見直します”について」

karakimami

マフィア発祥の地イタリア。マフィアとは今や世界中で使われるイタリア語起源の言葉で、イタリアとしては不名誉なことこのうえないですが仕方ありません、真実とは耳に痛いものです。新型コロナ禍ではマフィアなど犯罪組織による不正融資が盛んに行われ、欧州議会は加盟国の自営業者にたびたび警告を発するほど酷いものでした。一方で商業的にマフィア・イメージにちゃっかり便乗する飲食店や食品も数多くあり、コルディレッティの調査によるとその数は今や世界中で300。“Baciamo le mani(手にキスを)”や“Cosa Nostra”にとどまらずファラフェル・マフィアとかナシゴレン・マフィアとかカラオケ・バール・マフィアなど実に国際色豊かなネーミングになっています。

 それはさておき、闇経済がかなり大きいイタリアでは現金使用率がEU諸国と比べてダントツに多いことは良く知られています。いわゆるマネーロンダリングが盛んである、ということですね。このマネーロンダリングを防ぐためにイタリア政府は以前から多額の現金使用は禁止しています。また現金使用上限に関しても年を追う毎に下げています。例えば

「…2008年4月30日以前まで12,500€(約177万円)を超える場合の現金使用は認められなかったが。2008年からは現金使用上限は5,000€になった」(www.notaio-busani.it)とあります。こうして上限は次第に引き下げられ、2020年には3,000€、2021年は2,000€、2022年は1,000€になる予定でした(ミッレプロロゲ令)が、メローニ政権の予算法によって来年2023年は上限2,000€になる見込みで、また与党であるイタリア同胞党は3,000€を目指すと意気込んでいます。

 現金使用上限に関して、イタリア政界の左派と右派は常に争ってきました。現金使用制限について左派は脱税と犯罪抑止に効果的と考える一方、右派は個人の自由を制約し消費を押し下げる要因と否定的です。とはいえこの問題に関して確固たる研究はされておらず、左派も右派も一種の象徴のように扱っているのが現状です。話は変わりますが、その昔(12世紀~13世紀)北イタリアではローマ教皇支持の都市国家や貴族(教皇派)と神聖ローマ皇帝支持の都市国家や貴族(皇帝派)で争いました。中でもフィレンツェ共和国内で両派の争いは熾烈で、イタリア語の父とされるダンテ・アリギエリもこの政争に巻き込まれフィレンツェを追放されてしまいました。故郷から永久追放された恨みをぶつけて生まれたのが「神曲」です。教皇派や皇帝派といっても次第にその本来の意味は失われ、最終的には単なるフラグになってしまいました。現代の現金使用上限を巡る政界の動きもこれと似たようなものではないでしょうか。

 極右政権に分類されるメローニ政権は、上限値を3,000~10,000のどこかにすると言われていましたが現実的に2,000€~3,000€になるでしょう。新型コロナ前から経済は危機的状況にあり、新型コロナで最悪を更新、ようやく経済再開となったらロシアによるウクライナ侵略戦争で天井知らずのインフレに突入してしまいました。11月のガス代は13,7%の値上げと、1年で63,7%の値上がりに国民は震えながら冬を乗り切るしかありません。政府により今年の冬の温度設定は19度と決められたので(通常は20度)、Meteo.itではセントラルヒーティングが一般的なイタリアの家での寒さ対策として未使用の部屋の温水循環バルブをこまめに閉めることや電気毛布の使用などを勧めています。カイロは意外に使われていない、また湯たんぽも特に話題にならず、日本の寒さ対策の常識からするとかなり違いますね。

閑話休題。

メローニ政権はおそらく経済対策の一つとして現金使用制限額を引き上げるわけですが、これがどのような影響をイタリア社会にもたらすか?左派が言う通りになると犯罪組織が元気になって脱税が増える、あるいは右派の言う通り人々の消費活動の刺激になって経済が活性化するか?どうなるか興味ありますね。

ちなみに副首相兼インフラ大臣であるサルヴィーニは電子カード(イタリアではクレカやデビットカードなど支払いできるカードを総称してこう呼ぶ)での支払いの閾値60€に関する質問をした記者に対して「僕は自由主義者だ。人々には支払い方法を選択できる自由があるべきだ。2€のコーヒーの支払いにクレカを使うなんて面倒くさい奴以外の何物でもない。僕だったら現金で払う、お金を下ろしに行くのは好きだからね。」と答えました。確かに2€をクレカで払うのは面倒な客でしょうが、クレカ以外の電子決済が世界中で日を追う毎に普及する今、現金支払いに魅力を感じる一般人がどこまでいるか…何となく、ちょっと違う感があるのは私が経済に疎いからですね。

では

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