日本では民法で結婚後苗字を統一しなければならないとあり一般的には妻が夫の苗字に変えますが、イタリアでは自由です。苗字の統一を法的に強制されることはなく、従って妻は結婚後も従来通りの苗字のままか、夫の苗字になるかを選択することができるわけです。民法第143条第2項で「妻は自分の苗字に夫の苗字を加えて、未亡人でいる間、また再婚するまでそれを保持する」とありますが1961年破棄院(日本の最高裁に相当)が「妻にはその権利はあるが、夫の苗字を加える義務はない」と明確に規定したのです。
では生まれる子供の苗字はどうなる?
子供は父母両方の苗字を名乗るのか?
今まで特別な事情がない限り夫の苗字が自動的に子供の苗字になっていました。…が、それは男女差別ではないか?ということで弁護団が憲法裁判所で裁判を起こしていたのです。その判決が出て4月28日のニュースや新聞で一斉に報じられたところでは「子どもに自動的に父の苗字を与えることは違憲」でした。Raiのニュースを見てみましょう。
『憲法裁判所:子供には両親の苗字を』
合意がない場合、自動的に両親の苗字を与えなければならない。
現在の法律は「差別的で子供のアイデンティティに有害である」
憲法裁判所は、子どもに父親の苗字を一方的に名乗らせる規則は「不平等で子どものアイデンティティを傷つける」と規定し、両親がどちらかの苗字を子供に与えるか合意しない限り子供は両親の苗字を名乗るということを明確にした。(中略)裁判所は法律婚や事実婚で生まれた子供及び養子に父の苗字を自動的に子供に与える慣例は違法であると定義した…
(訳ここまで)
男女平等の理念に則った判決ですね。また父親の性を一方的に子供に与えるのは母の存在を考慮していないとも述べられています。実際に生むのは母親ですから、実に妥当な判決ですが問題もあります。
誰でも簡単に予想できる問題。
そう、それは世代を重ねるにつれて苗字がどんどん長くなることですね。長い苗字はかなりの混乱を社会に引き起こすであろうことは明白なので、今後政府はどう対処するのでしょうか。
欧州の中でイタリアは男尊女卑が強い国ですが、EUという枠組みに入っていることで近年かなり早いスピードで平等化が進められています。イタリア的外圧とでも言いましょうか、今回の判決も“EUの理念に則った”判決でした。近年登録パートナーシップ制度も施行され、制度を待ち望んでいたカップルがイタリア各地で結婚式を挙げ、ニュースや紙面で彼ら/彼女らの笑顔が幸福に輝いていました。
このようなニュースを見るたびに思うことは、欧州と同じ制度をそのまま日本が取り入れることには賛成できないけれど、それでも多様化する家族形態や男女平等の理念に沿って国の制度を変える必要があるということです。皆様はどう思いますか?