コラム

「イタリア事情あれこれ」

karakimami

 飲食店が再開して初の週末を迎えてイタリアはようやく遅い春が来たみたいな勢いで明るい雰囲気が街中を満たしています。一日の感染者数の半数を占めていたロンバルディア州も減少に転じたので社会を覆っていた不安も軽くなってきました。本来であればこの時期は外のテーブルでコーヒーを飲むのに一年で最も良い季節ですからね、この週末は多くのイタリア人が外で自由とコーヒー&ワインを満喫するでしょう。ここまで明るくポジティブなニュースが続きましたが、そろそろ現実が甘くない姿も見てみましょう。

 パンデミックの恐怖が後押ししたのか3月の銀行預貯金は3倍に増えました。武漢ウイルスへの恐怖が増大した3月、多くの人が安全な場所に資産を隠すことにしたため同月の預貯金全体の金額は168億€(1兆9721億8925万円)に達し、2019年の同月比ではなんと254%増でした。社会が不安定になると先行きへの不安から貯金に走るのは、日頃歌ってばかりいるようなイタリアでも変わりません。

 ロックダウン中は裁判も滞り、判決数はなんと半分に。ローマだけでも1万4千件が判決先送りになったということです。ちなみにナポリは1万件、トリノが5千件でボローニャが3500件。ナポリの件数が地方都市の中で突出して多いような気がするのは気のせいですね、きっと。

 ホテルI Palazziは保健所スタッフや医療関係者に2000泊をプレゼントすることにしました。先日は北部トレンティーノ・アルト・アディジェ州が全国の保健所や医療スタッフが同地で過ごす休暇を無料にすることを決定しましたし、命がけで頑張った医療関係者を労う、こうした社会全体の動きは素晴らしいです。

 コルディレッティの調査によると経営難に陥った約2,500店の飲食店が犯罪組織の手に渡ってしまう恐れがあるとか。資金ショートする店が最後にすがるのは闇金だからです。ちなみにイタリアでこのような犯罪を追うのは財務警察で、年間に少なくとも数回大掛かりな組織的賄賂事件を摘発し紙面を賑わせます。毎回十人単位の逮捕者、しかも元市長や現職の政治家などが逮捕されるので驚きです。さて、コルディレッティの記事を見てみると「犯罪組織やカモッラは経済危機に乗じて法外な利息で脅す、あるいはイタリア国内や外国で再建途上の経営を乗っ取るなどして大胆に入り込む合法な経済活動に大掛かりに侵入する。武漢ウイルスによる緊急事態が原因で様々な経済分野で起きている資金不足によって暴利や恐喝に弱くなっている」とあります。フランチャイズの店や地方で単独で営業しているレストラン、トラットリア、バール、ピッツェリアに至るまで犯罪組織のターゲットになるそうです。実際再開したところでも売り上げ80%減と本当に前途多難です。またレストランやバールでは感染防止策として生垣を使うところが急増しています。

 5月の記録的暑さで80%のジェラテリアが解禁を待たずに営業再開しました。イタリアにはジェラートを売る店が3万9千店あり、そのうちジェラート専門店は1万店、バールやレストランは2万9千店です。同業界で働く人は15万人とかなり大きな業界なのです。ジェラートは安価で美味しいのですが、武漢ウイルス禍以前でも経済低迷で自家製ジェラートを作る人が増えていたので今夏は自家製ジェラートが一層発展するかもしれません。

 最後に、28年前の5月23日今でも語り継がれる事件が起きました。Strage di Capaci(カパーチの虐殺)と呼ばれています。当時反マフィアの急先鋒だったジョバンニ・ファルコーネ判事、夫と同じく判事だった妻、彼らを警護していた刑事3人が乗った車に仕掛けられたプラスチック爆弾が高速道路上で爆発して亡くなり、23人が怪我をしました。犯行を企て実行したコーザ・ノストラのボス、サルバトーレ・リイナは2年前に心臓の病気のため獄中で死にました。リイナは1930年シチリアのコルレオーネに農夫の子供として生まれ、13歳の時に土中に埋まっていた不発弾から火薬を取りだして売ろうとしたところ爆発し父と弟が死亡しました。同時期にマフィアの構成員と知り合い小麦の盗難を教わって次第にマフィアの構成員になっていったのでした。叔父もマフィアの構成員という環境で彼のクリミナル・ライフはなるべくしてなったのでしょう。話がそれましたが、ファルコーネ判事の劇的で痛ましい死をイタリアは今でも忘れず、毎年追悼式が行われますが今年は式や行列はありません。そのかわり前日22日パレルモでは大勢の人がメッセージを書いた白いシーツをバルコニーから垂らして彼の死を悼みました。

ではまた

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