コラム

「ウンベルト・エーコの「Il nome della rosa 薔薇の名前」の題名が意味するところ」

karakimami

 今イタリアではTVでウンベルト・エーコ原作のドラマ「薔薇の名前」が放送されています。1986年に公開された映画「薔薇の名前」(ショーン・コネリー主演)のドラマ版です。

でも今回fanpageの記事で取り上げたのは、本のタイトルの意味です。実はこのタイトルも素晴らしく誌的で、隠喩に富んでいるのです。本の内容とタイトルがぴったり一致する、ウンベルト・エーコの抜群のセンスが為せる技です。記事では簡単に説明されているので少し分かりにくいかもしれませんが彼の才能に惚れ惚れするエピソードです。

『TVドラマ版「薔薇の名前」:ウンベルト・エーコ原作のタイトルの意味』

「薔薇の名前」は長い間に幾度も映像化された。ストーリーの舞台は中世、ウンベルト・エーコが自身の小説に登場させた、あるベネディクト会修道士のラテン語の文から始まる。

さあ、謎めいた文をイタリア語に翻訳して発見する旅に出よう:“薔薇の起源は名前の中にしか存在しない、我々はただあるがままの名を所有するのみ…”  幸運なことに生前ウンベルト・エーコは彼独自の解釈を私たちに残した。そのため長い間に様々な種類の”解釈”が出現する恐れはない。今話題にしていることは、世界で最も有名なイタリアの小説の題名「Il nome della rosa 薔薇の名前」の意味についてである。(中略)

1981年にストレーガ賞(年一度イタリアの作家による散文小説に対して贈られるイタリア文学最高の賞である Wiki調べ)を受賞した本が出版されて以来、何年も小説のタイトルの意味について疑問を持たれてきた、特に最後の引用文が幾千もの疑問を生み出した。事実「薔薇の名前」は印刷に回す前のエーコによる手書きの添え書きで終わっている:「Stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus」(ラテン語)はイタリア語に大雑把に訳すと「薔薇の起源は名前の中に死か存在しない、我々はあるがままの名なを所有するに過ぎない」となる。 エーコによって「調合された」引用文は謎だ。この文は12世紀のベネディクト会修道士ベルナール・ド・クリュニーの「De contemptu mundi」にある詩の一文に手を加えたものである。エーコの豊かな才能にその多くを負っている一文をもって、彼は大成功を収めた本の最後を締めくくった。

だが問題は、この一文は偽物、よく言えば調合文だったことである。事実ベルナールのオリジナルの一文は意味的に異なっている、「Stat “Roma” pristina nomine, nomina nuda tenemus」はイタリア語では「古代ローマはその名にしか存在しない、我々はあるがままの名を所有するに過ぎない」となる。すなわちエーコはローマを薔薇に置き換え有名な作品の題名を生み出したことになる。ベルナール・ド・クリュニーの一文は本のタイトルのオリジナルだとエーコ自身も「薔薇の名前の」の添え書きに書いている。 ベルナール・ド・クリュニーはラテン語ubi sunt(イタリア語dove sono、日本語で(彼らはどこ)の意味)を様々なテーマで使った。フランソワ・ヴィヨンのmais où sont les neiges d'antan(フランス語で(去年の雪はどこ)の意味)もここから派生している。 ベルナール・ド・クリュニーは直接的に意味を指し示す言葉(時間の偉大さ、有名な街、美しい姫たち、全て無になる)を文に加える場合を除いて、意味するものは消え失せただ名前にのみ痕跡をとどめる。

「薔薇の名前」は中世哲学から生み出された。2016年にウンベルト・エーコがレプッブリカ紙のインタビュー時に話した説明では「(「薔薇の名前」とシェイクスピアの幾つかの文の間に関係があるとの推測に対して)本のタイトルは最後に挿入した引用に全面的に関係ある」と説明した。 その意味するところは、物事はもはや存在しないただ言葉が残るのみ。シェイクスピアは正反対だ:言葉は何の価値もない、バラは単なるどこにでもある名詞に過ぎない。 文学的に翻訳するとエーコの文は一般的な名詞rosa(バラ)の意味で使ったのではなく、特別なバラの存在を示唆することを強調する意図があった。この場合シャンポーのグリエルモの理論に反している。グリエルモは、普遍的事物は特殊性を超えて存在論的現実であり続けると主張した。オリジナルの意味とは違う意味で使われるようになった言葉:precedente(前の)、antico(古代の)、passato(過去の)、anteriore(先立つ)、primigenio(原始の)、primitivo(原始的)は文字通り哲学的性質の問題に由来する。

                                 (訳ここまで)

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