コラム

「Cronaca nera イタリア事件ファイルN.4 ~Emanule Sibillo “Babyboss” の夢と現実~」

karakimami

「ナポリ(フォルチェッラ)、2015年7月2日深夜2時、まだ20歳にもならないBabybossの一人Emanuele Sibilloエマヌエレ・シビッロが路上で背中に銃の一撃を受けて死亡。助けようとした誰かがロレート・モーレ病院に彼を運び、玄関に置き去りにしたが、その時点でエマヌエレは既に息絶えていた。 ナポリの旧市街を舞台にした犯罪組織の縄張り争いと、以前から険悪だった旧市街の街路同士の緊張が高まりこの暗殺事件に至った模様。」

この殺害事件後、エマヌエレ・シビッロに捧げられた曲(Per te君のために)&映像がYouTubeに投稿され今や局地的とはいえエマヌエレ伝説化現象が起こっています。 捜査はカラビニエーリ(憲兵隊)と警察に委ねられました。

「捜査班は、事件がオロンツィオ・コスタ通りで起きたと考えている。この通りはごく最近襲撃を受けたばかりの劇場カステル・カプアーノから遠くないところにある。この仮説は異なった口径の薬莢が13個見つかったことと、複数の住民が拳銃の発射音を聞いたとの証言に立脚している。

これから何が起こるのか?

マフィアの動向に細心の注意が払われている。人々は復讐を恐れている。年齢が若いにも関わらずエマヌエレ・シビッロは地域の新極道連合の間でバランスととることができるカリスマがあり、重要な地位にある男だった。

事件前月の6月9日、エマヌエレ・シビッロは60人の逮捕者を出した一大捜査作戦から逃げおおせた。兄弟のパスクアーレ(通称リーノ)とともに首尾よく手錠を逃れた。エマヌエレは逃亡犯捜索リストの筆頭にいたが、幾つかのライバルグループの殺人犯たちが捜査班より先にエマヌエレを見つけて深夜に背中に一発お見舞いして片を付けたということらしい。」

では、若いギャングのボスの死をだれが望んだのでしょうか?

「この殺人事件の最新の捜査から主犯格に導く仮説が浮かび上がってくる。新芽のように若いbabybossの死を望んだのは一人ではなかったようだ。とはいえ過去にもシビッロ・ファミリーの構成員が標的になった事件があったが、事前に警告がある、あるいは計略が失敗するにとどまっていた。捜査ではヴィンチェンツォ神父のもとに逃れ、兄弟のリーノが命拾いした抗争事件が明らかされた。」

エマヌエレ・シビッロはどのような男だったのでしょうか?

「カリスマがあって、新世代ギャング団(通称:babycriminaliベイビークリミナーリ)」のボス、予審判事曰く「子供たちを率いるトロール船」だった。 恐喝やカモッラ型(訳注:ギャング団のこと、従来のマフィアとは性質が異なる)の犯罪をおこなうグループを組織したとして捜査対象になり、また未成年を管轄する検察庁は武器を使ったいくつかの事件の容疑で彼を捜査していた。例えば復讐のために襲撃犯を送り込んだ容疑や、マッツァレッラ・ギャング団の男を襲撃した容疑、たばこ1本与えるのを拒否したとしてディスコの駐車場で若い男の子を襲った事件を扇動した容疑など。

カモッラの首脳会議を警察が電撃捜査したとき、エマヌエレはまだようやく17歳になったばかりだったが、ギャング団の身分高い構成員が座る席に座っていた。今はエマヌエレ自身の死が捜査対象になっている。」

エマヌエレが死に至る状況とは…

「ギャングの勢力図ではシビッロ団はジュリアーノJr団、伝説的フォルチェッラ・ファミリーの3代目、ブルネッティ兄弟とアミランテ・グループと同盟関係を結んでいた。 トゥリブナーリ通り、フォルチェッラ通り、マッダレーナ通りの区間で闇商売(特にドラッグ、ピザ店への恐喝、行商、売春)を独占的に支配することを狙っていた。その背景には古いカモッラのギャング団マッツァレッラとの決して和解できない衝突があった。」

また次のような憶測もされています。

「警察の手を逃れたエマヌエレはあの晩、報復のために街に戻った。警察の手入れを逃れたシビッロの服従者(シビッロにみかじめ料を納めていた売人たち)の一部が反旗を翻し、トゥリブナーリ地区で捌くドラッグの売り上げから週決めで納めていた上納金をシビッロに払わないことを決めたため、それに対する報復をするために街に戻ったのだ。

それだけではない、数日前に3人の若者が負傷(銃撃された)した後で受けた侮辱への復讐をしなければいけなかった。 エマヌエレは“フラヴレッラのトロール船”の庇護をうけてポンティチェッリ地区のリオーネ・コノカル貯蔵庫、ダミーコ・ギャング団の本拠地に逃げていたがここを出ることに決めた

。エマヌエレは知らなかったが、ここは彼の運命の地だった。ここには仲間である生え抜きの若者のなかに裏切者がいて、躊躇することなくエマヌエレをブオネルバ・ギャング団に密告した。その結果、あの晩ブオネルバ・ギャング団は、タイミングよくエマヌエレ・シビッロの緊急“訪問”があるとの密告を受けて襲撃を準備するために必要な時間があった…」

確かにエマヌエレは非常に若いギャングでしたが、穏やかで明るい若者でもあり、人々を撮影し、インタヴューするのが好きでジャーナリストになりたいと言っていました。 軽犯罪で服役していた共同所にいたとき、そこの定期刊行物“Un po’ di noi”に寄稿した文が残っています。カモッラについても

「カモッラはかなり整ったシステムで、そこは最高の存在パドレーネの掟が絶対だ。カモッラのメンバーは本物の企業家でなければいけない、同時に“自分の素性”を隠すことにかなり長けていなければいけない。違法なことっていうのはもう何年も前から根を張っていて、それを打ち倒すのは不可能だと思うし、ある種の犯罪者の争いから遠くに身を置くようにとても上手に立ち回る必要がある。」

このようにエマヌエレ自身が上記刊行物の2012年11月号の記事に書いています。このときエマヌエレは3年後に自分がこの完璧なカモッラのシステムに殺されることになるとは想像していなかったでしょう。 彼は同誌に自分の共同社会での感想を書いています。若い素直な感想文です。

「エマヌエレと言います。17歳でこの共同所に10か月前からいます。長い期間だったけれど、同時に飛ぶように早く過ぎた時間でもありました。30日後に俺の服役期間は終わります。ここにいた期間は俺にとって自分を見つめ直すために役に立つ経験になりました、特に人間として大人になることができました! 今は、もっと責任感を感じるし、以前に比べて賢くなったと思います。職人さんと培った関係のおかげで、前の暮らし以上の生活を見ることができたし、人は正直に生きることができるんだっていうことが理解できるようになったんです。

出所するときは、俺を理解して心配してくれる人から教わった良いところをいっぱい身に付けて行こうと思います。 あともう残すところ1カ月だけど、できる限り身を正して過ごし、そしてもう一度外の世界に戻ろうと思います。俺が本当に変わったかどうか、まさにそこでわかると思います。ここを出るときはもちろん嬉しいけれど、同時に傍にいて自分を見つめ直すことを助けてくれて、俺を大人にしてくれた人たちと離れることはかなり悲しいです。もちろんこうした人たちに再び会いに来ます。俺の中で忘れられない経験になりました。俺は自分に嘘をつき、犯した罪と引き換えにするようなことは絶対にしないで最大限の敬虔さで自分の罪を償ったことを心の奥底で分かっています。

“自由の身”になることを待つ中で、いつも穏やかでプラス思考になろうと努めています。ここで一緒にいた仲間、特に俺の心を理解して価値を認めてくれた人たちにに何か良いことを残せるように心から祈っています。」(エマヌエレ・シビッロ)

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