世界的に見て親の社会的環境は子供の将来に大きく影響を及ぼします。貧困の連鎖と言われる問題も同様だ思われますが、イタリアのマフィア文化の世代間継承は際立っているかもしれません。イタリア南部、レッジョ・カラブリア州ではマフィアの子供が周囲の環境に将来を潰されることなく生きていけるようにある思い切った対策を講じ始めました。Espressoの以下の記事を見てみましょう。
『大人になってもマフィアにはならない:マフィアから切り離された子供たち』
マフィアの子供たちは小さいうちから拳銃を撃ち、ドラッグをさばいて、マフィアの一員という役割を学ぶ。このような事態に対処するために少年裁判所はンドラゲタ('ndrangheta レッジョ・カラブリア州を本拠地とするマフィアの組織、イタリアでも最も残酷といわれている)ファミリーの子供たちを家族から引き離すことを決定した。父親がマフィアのボスである家族環境から子供たちを遠ざけて子供たちに将来マフィアになる以外の選択肢を与えることが目的である。
子供たちを親のようにはさせない。
レッジョ・カラブリア州の判事はンドランゲタに対して新たな戦いを挑んでいる。実際ここには子供たちをマフィアの両親から遠ざける試みを始めたイタリアで唯一の少年裁判所がある。 現在まで30人の未成年者がコスカ(cosca マフィアの下部組織)から引き離され、北部の地方共同体あるいは家族のもとに預けられている。ボスの子供たちは家族法に従ったこの措置に守られて、もう二度と拳銃を握り、ドラッグと仲良くすることを強要されることはない。
こうして彼らは勉強やスポーツに打ち込むことができる、他の普通の子供たちと同様に。
最年少者は12歳だが大部分はティーンの盛りの年齢だ。
「簡単な措置ではありません」とFederico Cafiero De Rahoレッジョ・カラブリア州検事長は記者に説明した。続けて「家族環境に対する許しがたい介入であると非難する人はいます。でもマフィアのクラン(マフィアの閉鎖的な集団を意味する言葉)は自然な家族とは全く違うファミリーの掟を子供たちに伝授していくという事を理解しなければなりません。」
子供たちが引き離される、これはマフィアたちにとって最悪の侮辱である。なぜならこうして犯罪文化が途切れさせられることを意味するからだ。
例えば娘Bの場合、ンドランゲタのコスカの掟では沈黙と孤独の人生を定められているが、裁判所の処置によって洋服をデザインするという自分の夢を叶えることが許される。
レッジョ・カラブリア州内のある県のボスの娘である彼女は数か月前から州外(場所は不明)で暮らし、そこでようやくやりたいことができる自由を手にした。
検事はある実例を出して説明した「16歳ですでにボスであるかのように振る舞う16歳の少年がいます。両親は二人とも刑務所か逃亡中です。大人を見習って犯罪者になるように放置してしまえと?機を逸してしまえば問題はより難しくなります。」実際、ンドランゲタ・ファミリーという環境で講じられた遮断措置の事例を聞いていると、多くのマフィアの子供たちの運命は環境によって消えない烙印を押されている、という印象を持った。
7歳で拳銃を撃つことを強いられ、少し大きくなるとボス=父親からマフィアの手ほどきを受けさせられる、もしくはグループ間抗争の哨兵にさせられる十代の子供たち。
名誉の子供たちはこうして大きくなる。本当の解決も、他の人生を選択する可能性もない。ボス=父親から人の殺すこと、死、刑務所へ行くこと、強要された犯罪キャリアのステージを訓練される。それが、子供たちが揺り籠にいるときから定められた運命だ。
とはいえンドランゲタの土台はファミリーにある:血の絆は組織内で並外れた価値を持つ、その価値は他のどのマフィアより重んじられている。儀式も存在する、「sumuzzunata」という新生児のための儀式で、ンドランゲタの一員になるための洗礼儀式だ。これはボスの子供だけに許された権利である
「90年代に起訴された犯罪者の兄弟や子供を前にすると、ンドランゲタは世代を超えて継承されていくのだという事を考えさせられるのです」とレッジョ・カラブリア州少年裁判所長Roberto Di Bellaは強い意気込みを見せて語る「2012年から両親の保護者責任が低下することを想定しファミリーから未成年の子供を遠ざける措置をとっています。目的はマフィア文化が継承されることを断つことにあります。」
だが裁判所の措置は無差別ではない。救出措置が取られるのは、犯罪者が子供たちにマフィア教育を施しているという情報を入手した場合のみだ。こういった情報は少年裁判所や法廷の検察官同士で遣り取りされている。情報が入った時点で子供を遠ざける措置に向けて動き出す。
マフィアのレッスン、銃器とドラッグを補完する役目を負う未成年、火器を使って自分の価値を知らしめるよう強要される若いティーンエイジャー、これらは全て裁判所に警戒態勢をとらせる兆候なのだ。
マフィアの主義から若い女も例外ではない。彼女たちは幼いころから命令に従うように慣らされている、沈黙の背後で自らを縛り、力を持つ二つの犯罪集団を結びつけるための結婚を受け入れるように強いられることもしばしばだ。
裁判所の措置はある重要な結果を生み出しつつある。複数の女と当局の関係が活発になったのだ。つまりマフィアの女たちは助けを求め、協力することを決めた。マフィアの掟への反抗は、こうして可能になる。母親たちのグループ、重要なポストにあるマフィアのボスの妻たち約10人が協力するために裁判所の門を叩いた。
「こうするのは子供たちを助けるためよ」と彼女たちは言った。
(訳ここまで)
この措置によって救われた子供たちに豊かな未来がありますように。