コラム

ヴェネツィアの誇り高き職業 ~ゴンドラ乗り~ ②

karakimami

 

Gondoliere (ゴンドラ乗り)というと想像されるのは

 

短気で喧嘩っ早い、悪賢くて礼儀正しい、疲れを知らぬ雄弁家にして哲学者…

人生とヴェネツィアを愛し、ヴェネツィアを悪く言う者はけっして許さない…

 

ゴンドラ乗りはかつては貴族階級に仕えていました。給料や住居が保証された生活をし、雇い主の秘密に通じていましたが口が堅く大変信頼できる人々でした。

 

ゴンドラが他の船と大差ない時はgondoliere という名称もまたありませんでした。ゴンドラ乗りもその他の船の船乗りも一様に barcaiolo と呼ばれていました。ゴンドラが改良されるようになると、美しく優美な姿に敬意を表して gondoliere と呼ばれるようになりました。

 

15世紀から16世紀に書かれた Marin Sanudo の Cronachetta という旅行記によると、最も優秀なゴンドラ乗りは「肌の黒いサラセン人か、その他の種族」で、彼らは奴隷あるいはその類の者と見なされていました。大昔は改良前の初期のゴンドラを浅黒い肌色のムーア人に押させていた、と言われています。実際幾つかの昔の絵がそのことを証明しています。

貴族階級に採用されたことでゴンドラの地位が向上し、それにつれてゴンドラ乗りたちもまたヴェネツィアにとって欠かせない存在になりました。日頃から貴族階級と触れ合うことから、ゴンドラ乗りたちも洗練され、一種の特権を持った職業集団になっていきました。

 

ところで、美しい声と話術で観光客をウットリさせるのは男性だけの専売特許ではありません。

2010年に24歳の女性( Giorgia Boscolo )が史上初めての gondoliera (女性のゴンドラ乗り)になりました。24歳とはいえ結婚もして2児の母である Giorgia さん、900年も続いた男性社会のタブーを打ち破りました。素晴らしい快挙です。

最後の試練は、 Canale Grande (大運河)から小運河へゴンドラを操るというものでしたが、この試験について、「夢が実現した」と言う以外彼女は一切話しません。話してはならないという鉄の掟があるためです。

 

2007年、ゴンドラ乗り志願者のドイツ人女性がゴンドラ乗りライセンスを得るための試験を Giorgia さんと同じように受けました。残念ながら幾度も失敗し、ついに機会均等法に違反する人種差別だとして法廷に訴えました。その後彼女はホテルでのプライベートボートの仕事もやめてしまったという悲しい出来事があったのですが、 Giorgia さんの快挙がその悲劇を払拭しました。

 

Giorgia さんが弾みをつけたゴンドラ乗りへの道。今後も多くの女性ゴンドラ乗りが増えていくことでしょう。

 

うれしい話とは一転、実は今月初め芳しくない姿が Youtube に投稿されました。

 

「ゴンドラ乗りたちのしごき」

そこにはゴンドラ乗りの試験の一つ、 ganser のテスト( ganser とはヴェネツィア方言で「ゴンドラから乗り降りするのをアシストする人」の意)で受験者が裸になって運河の水に入っていく様子が収められていました。

 

ゴンドラに乗ったり降りたりするのをアシストするのに裸になる必要があるのか?

 

これはヴェネツィアで大変な問題になり、ゴンドラ協会の会長 Nicola falconi 氏はこの問題に関して「過度なテストはやめにして、麻薬検査を実施する」という声明を出しました。

 

またゴンドラ乗り代表 Aldo Reato 氏は「 ganser テストは義務ではない。彼(裸になってテストを受けた人)がやったことは個人的なことで、本人もそのように認めている」としてスキャンダルを収束させようとしました。

 

しごき以外にアルコールや麻薬の問題もまた、ゴンドラ乗りたちと無縁でないことは一般の仕事と何等変わりありません。

 

伝統ある仕事とはいえ、様々な観点から改革が必要なのかもしれないと思わせる出来事でした。

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