Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

「英語より母国語(イタリア語)でワクチンを説明せよ&昆虫食についてどう思う?」

 欧州で再び新型コロナ感染が増加しています。一時24時間の感染者が5万人に近づいたドイツでは感染ピークが過ぎたようで15日の感染者は34,958人です。イタリアでは第4波と呼んでいますが、15日の感染者は5,144人でした。クリスマスを前に政府は追加接種を急いでいます。

 さて、この追加接種を言い表すのにイタリアでは良く“boosterブースター”という英語を使います。日本でも同じような状況ですね。この状況を憂いているのが1585年に創立されたイタリア語の言語学と文献学の専門家が集うAccedemia della Crusca(クルスカ学会)の学会長クラウディオ・マラッツィーニ教授(東ピエモンテ大学イタリア語史名誉教授)です。

 Adnkronosでのインタビューでの教授のコメントを部分訳して見てみましょう:

「新型コロナワクチンに関連で“richiamo”(「早急に呼び戻す」「呼び覚ます」などの意味)の代わりに“booster”を使用する事は害がある。英語の単語を使用することは“不要であり、意味が理解されない”恐れがある。英語を使うと“何について話しているのか”をイタリア人が理解する妨げになる、すなわち“接種したワクチンの効果を更新し、効果を強めるための追加ワクチン”ということが人々に理解されにくくなるのだ。

 メディアの世界では英語“booster”を使うよう事が日増しに多くなっているが、これは“richiamo”を繰り返さないようにするためでもある(イタリア語では同じ単語を繰り返し使うことは良くないとされている)。だが総合的に見るとこれは問題だろう。ワクチンに関して正しく理解されないかもしれないからだ。

 クルスカ学会のIncipitグループでマラッツィーニ自身がこう述べた:「メディアを通じて“booster”という言葉を無批判に盲目的に使う事、しかもイタリア語での表現が可能であるにもかかわらず英語を使うという事が、ワクチンへの恐れや抵抗感を持つイタリア人にワクチンへの理解が進まない一因となっている。何よりもまず、“booster”という言葉の乱用が社会的コミュニケーションの間違いなのだ。」

(訳ここまで)

 マラッツィーニ教授によるとワクチンに関するイタリア語表現では、1900年代初頭から常に“richiamo”が使われてきたということで、正しい母国語以外での表現がワクチンへの理解を妨げていると言います。これを読み、今の日本で頻繁に耳にする“サスティナブル”のことを思いました。英語sustainableのカタカナ表記で、意味は“持続可能な”ということです。日本で十分表記可能ですよね、わざわざカタカナ英語を使う意味が分かりません。サスティナブルと言われてピンとくる人より“?”人の方が多いと思うのです。因みにsustainableはイタリア語ではsostenibile、意味は“支えることができる”です。英語、イタリア語どちらにせよ、アルファベット言語のカタカナ表記は日本人にはイミフだとつくづく思うのでした。

 さて、話はガラッと変わって欧州ではノベルフード(新開発食品)で食用虫が人間用食材として認可されています。イタリアの伝統的食文化には全く馴染みがない昆虫食についてイタリア人自身はどう考えているか、コルディレッティの記事(部分訳)から見てみましょう。

「大部分のイタリア人にとって虫を食べることは文化的範疇外で、食卓に虫が並ぶことに耐えられそうもない-食用イナゴの使用に関する欧州委員会の承認を巡ってコルディレッティとIxe研究所の調査から判明した。虫が冷凍やフリーズドライや粉末状で食品市場に並び、スナックなどの原材料になり得るとコルディレッティは強調する。

 54%のイタリア人にとってこのニュースは歓迎できるものではなく、むしろ反対だ。24%は無関心で、賛成は16%、無回答は6%だった。Novel Food(新開発食品)に関する規則(EU)2015/2283に準拠した食用虫の使用が許可されたことについて調査した結果だ。最初に認可されたのはミールワームだった。乾燥させたミールワームはそのままスナックになる、あるいは小麦粉のように使うことができる。

 欧州の昆虫食市場はEUがノベルフード(第三国からきた伝統食材として多種多様な虫が認可される)規定を認可し施行された2018年1月から始まった。市場には様々なサンプルが並ぶ:パスタ、調理された卵、グリル、カリカリに焼いた中国のムカデの焙り焼き、ラオスから輸入した無着色・保存料不使用のタランチュラのフライ、タイから輸入した巨大ミールワームのフライ。食用虫界の正真正銘の“スター”は、アメリカの蚕、フランス領ギアナのヤシの蝶はフライでも味付けでもいける、タイの巨大水虫もなかなか。パプリカ、カレー、ベルギー製海塩で味付けしたワームのフライ“アペリンセッティ”(訳注:アペリティフとインセッティ(虫)を掛け合わせた造語、イタリア語国語辞典に載る日も近い?)は蚕入りウォッカのつまみに良いかもしれない。」

(訳ここまで)

 欧州委員会で認可されたノベルフードとはいえ大半のイタリア人にとって昆虫食は縁がないようですね。コルディレッティは中国やタイといった第三国から輸入される食材の健康被害を懸念しています。またこのような食材は、何年も危険な食品リストのトップにあるとも指摘しています。日本にはイナゴの佃煮がありますがタランチュラやムカデはさすがに許容範囲外かと…

 ではまた

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