Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

「ddl Zan(Zan法案)を巡って揺れるイタリア社会」

  ようやく秋らしい季節感を肌で感じて馬肥ゆる秋になりました。イタリアも、もちろん美味の季節ということでトリュフの取引価格や詐欺事件がメディアを騒がす時期です。巨大ポルチーニも時々話題になりますが、個人的にはあまりにも巨大だと味も大雑把なように思ってしまうのは日本人だからでしょうか。とはいえ世界的に原材料となる食料は値上がりし、イタリアでも小麦粉の価格からパンの価格まで何と10倍に跳ね上がる(コルディレッティ調べ)など秋の味覚を堪能したい庶民の心を裏切るかのような動きに胸が張り裂けそう…というのは大げさですが残念なことです。悪天候により世界的にワイン生産も7%減少(コルディレッティ調べ)したので、このようなニュースに接すると温暖化を阻止しなければ将来の食糧危機は免れないと切実に感じます。個人では大きなことはできません、でも地球環境を守るために身近でできることを地味に続けていきたいと思うのです。

 さて最近イタリアの主要都市で大きなデモが行われていました。これはZan法案(ddl Zan)が上院で“審議不受理”になってしまったからです。Zan法案(名称は代表者であるアレッサンドロ・ザンAlessandro Zan議員(民主党)に由来)は犯罪に対する罰則の強化以外に、LGBT+に対する差別、女性や障碍者に対する差別、人種や民族や宗教での差別に対する罰則を強化する法案です。昨年から激しい議論を巻き起こし混迷していましたが今秋ようやく上院で審議される運びになった途端、北部同盟とイタリアの同胞党がタッリオーラ(望ましくない法案を廃案に持ち込む政治手法)を使って“審議することを受け入れるか否か”を問う投票に持ち込み、投票者154人のうち拒否131票、棄権2票、棚上げ23票という結果になりました。

 こうしてZan法案案は事実上廃案とまでいかなくても凍結されてしまったことになります。これを受けて各都市で数万人規模の大勢の市民による抗議デモが起きているというわけですね。また著名歌手フェデスFedezやエロディElodie、Fedezの妻でファッションブロガー&インフルエンサーであるキアラ・フェッラーニChiara Ferragniらはネット上で抗議しています。

 では一般のイタリア人はこの法案についてどう考えているのでしょうか?

 多国籍市場調査コンサルティング会社イプソスの調査報告を見てみましょう。

 以下同会社のサイトから部分訳します。

 まず差別全般についての質問:

(問)性的指向、人種、民族、宗教に発する差別がイタリアにあると思うか?

(答)“客観的に差別は存在する”が54%、“少数の知識人が提議するトピックだと思う”が30%、“この件に関する明確な意見がない”が13%だった。

次にZan法案についてイタリア人はどのくらい知っているのかを探るための質問:

(問)最近話題のZan法案について知っている事を教えてください。

(答)Zan法案について知っているのは“審議対象の法案である”が59%、“同性愛者のカップルが子供を養子に迎えることを可能にする措置と思う”が5%、“同性婚を推進する案”が6%、残り30%は聞いたこともないし何も知らない、だった。

上記の回答を精査した後、Zan法案について賛成か反対か尋ねた:

(問)人種差別に対する罰則の適用範囲を人種差別的行為あるいは性別、性的指向、ジェンダーアイデンティティに基づく暴力行為へ拡大するZan法案についてあなたの意見を聞かせてください?

(答)インタビュー対象者の49%がZan法案は妥当であり“イタリアにとって有用である”と回答。一方、31%はZan法案は必要ないとして“人種差別への罰則は現在の法律で十分”と回答した。残り20%は“Zan法案に関して確たる意見がない”あるいは“答えたくない”だった。

(最後の質問)同性愛カップルの養子不可に賛成することをどう考えますか?

(答)52%は“思想の自由による産物で、単なる意思の表明にすぎない”と答え、38%が“同性愛者に対する暴力もしくは犯罪行為を教唆しかねないフレーズ”と回答。残り10%は無回答だった。

 調査結果から、激しい政治的議論を誘発するホモフォビアに対する罰則を定める法案に関して世論が分裂していることが一層顕著になった。また政治的議論は同時に出されたZan法に反対する法案(Ronzulli-Salvini)によってさらに激しさを増した。

(訳ここまで)

 江戸時代的観点から見ると、LGBT+を激しく執拗に嫌悪することに共感することは難しく感じます。

 この法案はこれで終わりにはならないでしょう。どのような変遷を辿るのか興味深いですね。

 では

↑ ページトップへ