Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

「マリトッツォについて」

 最近Maritozzoマリトッツォについて質問されることが多くなりました。Panna cottaパンナコッタやTiramisùティラミスと同様、メディアとスィーツ業界がタッグを組んで日本市場で血気盛んに名乗りを上げた…ような印象を個人的には持っていますが、マリトッツォはイタリアの古くからある郷土菓子の一つです。ちなみにパンナコッタもティラミスも全てイタリアの郷土菓子です。

 パンナコッタは1900年代に考案されたピエモンテ州のドルチェです。一説によるとピエモンテ州クーネオ市のシェフが1960年代に考案したとか。その後イタリア全土に広がり、イタリアでは一般的にベリーやキャラメルやチョコレートのソースを添えて食されます。

 ティラミスについてはこのコラムの過去記事にあるのでそちらをご覧いただきたいのですが、ヴェネト州かフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州が起源のお菓子です(起源を巡る熾烈な闘いに決着がつく見込みは今のところない)。ところでティラミスのイタリア語Tiramisùは最後のuにアクセント記号ùが付いています。その意味するところは、この単語のアクセントの位置が最後にあること。ですので日本で一般的な発音(単語の最初にアクセントを置いている)を耳にするたび、実を言うと少し複雑な気持ちになりますね。

 閑話休題。

 さて、“2匹目のどじょう”ならぬ“3匹目のどじょう”を狙うマリトッツォ。ローマのお菓子らしくromatoday.itの記事を見て行きましょう。

「マリトッツォとは何か?」

-ローマきっての美味しいドルチェの伝承と歴史-

 昔から変わらず愛されてきたローマの菓子への賛辞と名前にまつわる伝承と歴史。

 水、小麦粉、イースト菌、砂糖、牛乳、卵、バターあるいはオイル。シンプルな素材を使った古くからある菓子だが、間違いなく食べた人を恍惚とさせること請け合いだ。柔らかい小さな丸パンを半分に切って、泡立てた生クリームかクリームを詰めたのがマリトッツォだ。

《生クリームがパンの中心に走る、白く輝くマリトッツォを前に、喉からよだれをダラダラあふれ出しながら愛情いっぱいにうっとりと見つめる。これでお前のコレステロールはうなぎ上りと医者の有難いお言葉。だが俺は言うよ、「愛しいマリトッツォ、君にガブリとかぶりついてから相応の代償を払う」と。》

(「マリトッツォ賛歌 Ode al maritozzo」Ignazio Sifone、Garbatella、1964年)  

 マリトッツォにはヴァリエーションが多くある。伝統的には生クリーム、四旬節には干しブドウと松の実を生地に加えて、チョコレートでコーティングする。甘いものだけでなくブッラータ、トマト、ペースト、バッカラ(ひだら)などを詰めることもある。マリトッツォを諦められない人のために当然ですがグルテン・フリーやヴィーガン・ヴァージョンもある。数少ない他の食べ物と同じように、朝食、午前のおやつ(一般的に10時頃食べる)、ランチやアペリティフ、夕食後のデザートとしてマリトッツォは何時食べても良い。働いて疲れ切った一日の終わりに美味しいご褒美だ。

 それで結局、マリトッツォはお菓子かパンか? どっちだって構わない。

 〔マリトッツォの歴史〕  

マリトッツォの歴史は古代ローマまで遡る。蜂蜜と干しブドウで甘くした小さな丸パンが実在した。妻が夫に愛情をこめて作った滋養に富んだパン。この小さなパンからマリトッツォが生まれたらしい。実際のところ、オリジナルレシピでは干しブドウを加えたと思われる。もっと時代が下ると四旬節(この時期に言う冗句“er Santo Maritozzo(聖マリトッツォに)”)期間中、通常より小さく、砂糖漬けのオレンジピールと松の実と干しブドウをふんだんに使った濃い色のマリトッツォが作られた。

 〔名前にまつわる言い伝え〕

 マリトッツォにまつわる物語や伝説はたくさんある。ローマの伝統に敬意を表する研究者、詩人、芸術家はこの麗しいドルチェに競って賛辞を捧げてきた。ジッジ・ザナッツォGiggi Zanazzo、アドーネ・フィナルディAdone Finardi、ジュセッペ・ジョアッキーノ・ベッリGiuseppe Gioacchino Belliによると、かつてマリトッツォは3月の最初の金曜日若い男性から婚約者への贈り物で、柔らかい中に金の贈り物か指輪が入っていたという。このとき未来の夫になる男性を揶揄した呼び名がマリトッツォだった。(訳注:イタリア語で夫のことをmaritoマリートと言う)  

さらにマリトッツォにシュガーペイントでダブルハートや握手する手、あるいは矢で射抜かれたハートが描かれた(「Usi, costumi e pregiudizi del popolo di Roma」Zanazzo、1907年)。

 この話以外に、ハート形に作られたマリトッツォが若い娘から地域で最もハンサムな結婚適齢期の男に贈られ、男は一番おいしいマリトッツォを作った娘と結婚したとか。

 何世紀もの間にマリトッツォは地域によって違う呼び名になった。カルボニャーノ(ラツィオ州ヴィテルボ県)ではマリテッリ、ヴェトゥラッラ(ラツィオ州ヴィテルボ県)ではパンマリーティ、ヴィニャネッロ(ラツィオ州ヴィテルボ県)ではパンパリーティといった具合に。

(訳ここまで)

 お菓子の中に指輪や贈り物を仕込む、というのは素敵です。知らずにガブっとして歯が欠けた…なんてことを想像するのは野暮ですね。

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