イタリアが大事にするブランド“made in Italy”が危機にさらされているのは、ファッション業界にとどまらず食品も同様であることを前回のコラム「100%イタリア産とは限らないイタリアのワイン、イタリアを蝕む食品偽装①」で取り上げました。今回は実際に起こった事件とワインの偽装方法などを見てみましょう。
記憶に残っている事件は2017年にカラビニエリがカンパーニア州、マルケ州、ヴェネト州、ピエモンテ州、エミリア・ロマーニャ州のワイン製造業者から偽装ワイン400万ℓを押収した件でしょうか。この事件では偽のDOC(Denominazione di Origine Controllataワイン原産地統制名称)が使われていました。単なるハウスワインがプロセッコやモンテプルチャーノなどDOCやDOCGワインとして売られていたのです。この事件では2万€(約240万円)以上の罰金が課されました。
(DOCとは:いわゆる特定の商標ではない。多種多様な製品に共通して付与されるが、原産地と限定された地域で当該ワイン用のブドウが収穫されていることを証明するワイン醸造の世界でも使われている。DOCマークはその製品の身分証明をするもの。ワインに付けられるDOCは選ばれた高品質を示すために使われている。DOCマークは政府に認可された特別な規律を遵守した自然環境や生産者に与えられる。DOCワインは市場に出る前に物理化学の予備検査とワインの味、匂い、色などが規定を満たしているか検査される。規定をクリアできなければDOCマーク無しで販売されることになる。DOCマークは1950年代に当時の農業省の官僚だったローマ出身の弁護士ロナルド・リッチが考案した。 2010年からDOCの格付けはDOCG(ワイン原産地統制保証名称)と同じく、DOP(原産地呼称保護)共同カテゴリーに再編成された。「Wikipediaイタリア語版より」)
2019年6月には偽造ワイン、偽Evoオイル(無添加オリーブオイル、一価不飽和脂肪酸に富む)、汚染米を押収する事件がありました。押収量はなんと1867tと3千万ℓで6千万€(約72億4830万円)に相当!イタリアのカラビニエリとユーロポールとインターポールを通じて78か国が関係したこの事件の捜査は2018年12月から始まり2019年4月に終了しました。偽造食品には健康を害する恐れがある物質も含まれていて、この事件後食品生産のコントロールの重要性が再認識されたのです。
ところで、いずれの場合も流通経路ではネット販売は偽装食品が売られやすいと指摘されています。ネットで食品を購入する場合は十分注意する必要がありますね。
2年前の事件の記事に偽装ワインの見分け方が載っていたので参考までに…
『偽ワインの見分け方』
① 偽ワインは数杯飲んだ後、添加物が原因で厄介な頭痛を引き起こす。軽く口に含み変な味がしたら直ちに飲むのをやめること。
② ワイン購入前にエチケットを見れば偽物かどうかわかる:エチケットに使用されている紙、つづり、色を良く見ること。
③ 高価なワインを買うつもりならば信用できる店に行くこと。
ここで…一応偽装ワインの手口も参考までに幾つかご紹介します。
① 「エチケットの再利用」
新しいボトルに再利用されたエチケットが張り付けられて売られます(注意深い偽造者はボトルも全く同じものを使う)。比較的簡単に低コストでできる偽造です。
対策:ワインの名前や収穫年を記したコルクをチェックすることです(コルクへの細工は少ないため)。
② 「リサイクル」
オリジナルワインのボトル(エチケット付き)に偽ワインを入れて改めボトリングする方法1980年代末に生産者たちが偽造に対抗するために自分たちのボトルを使ってやり始めた。
対策:ワインそのものに証拠がある。代替ワインが高価である場合もあり得る。
③ 「逆偽装」
あまりないが大胆不敵な方法。被害者は名の知れた販売業者からオンラインで本物のワインを購入する。購入者は届いたワインが本物ではない可能性があるということで購入の取り消しを業者に求め、偽造ワインを送り返し本物のワインが送られてくることを待つ。もちろん本物が送られてくることはなく、被害者が不審に思う頃にはオンライン上のショップも跡形もない。
対策:技術的に追跡するのは簡単ではない。
もう何というか…、安物ワインを飲まなくても頭が痛くなる話ですね。