コラム

「イタリアでは貧困層への食糧援助が政治の宣伝道具になりつつある」

karakimami

 近年の大不況から立ち直れない現在のイタリアです。それまでかろうじて経済的に自立できていた貧困層が職を失って生活の目途がたたなくなるニュースをイタリアの全国紙や地方新聞が数年前まで盛んに取り上げていました。食費を切り詰めるため安い不法な食品を買う人たちが飛躍的に増加、とか悲しいニュースもありましたが、今回の食糧援助に関するニュースには驚きました。因みに最近は不法滞在者の子供への学用品を支給するとかしないとか、ランチ時に給食費を払わない家庭の子供へはシーチキン缶とビスケットだけを配って物議を醸した学校などが話題になります。先進国なの?と訊きたくなるような状況なのです。実際、貧困地区としてイタリアでも有数のスカンピア・デッレ・ヴェーレScampia delle Veleを検索して写真をご覧になるとあまりの荒廃ぶりにびっくりされることでしょう。今回はそんなイタリアで起きつつある変化を取り上げた全国紙の記事をご紹介しましょう。こういう変化の積み重ねがイタリアを変容させていくのかな、と個人的に深く考えさせられるような内容です。

『パスタの詰まった箱とプロパガンダ』~新貧困層に向けた各政党の福祉活動~

 郊外では270万人が食糧支援を求めている。カーサパウンド・イタリアからPdilまで各政党の“政治がらみの食糧支援”システム  民主党(Partito Democratico通称Pd)は貧困層への支援を充実させるために半世紀前から貧困層を支援しているサンテジディオでさらなる支援を求めた。「愛想笑いはしないで。私はトール・ベッラ・モナカの裏にあるヴィッラッジョ・ブレダ出身よ、今はパリオリに住んでいるけど。」20年前から民主党の社会奉仕活動に従事しているカルラ・フェルマリエッロは即座に貧困地域と気付かれるパリオリ出身者だと思われたくない。それでも彼女の担当地区はスカルラッティ通りの昔からの民主党の勢力圏で、2月に4人の浮浪者(チュニジア人1名、イタリア人3名)をポー通りにあるパスタ工場から提供される夕食付きで3週間迎え入れた。民主党は経済的に恵まれている地区でのみ支持されて郊外や一般大衆と決別してしまったようだったので、これは効果的だった。   

 《疲弊するイタリア》  

 「こうした現実を話題にしなくなりました、それでサンテジディオのボランティアを頼んだのですが、微妙な仕事でした。目に見える以上の事はやらないのです。サン・ジョヴァンニの私たちの担当地区で活動を始めました。」現代性の折り返し地点でローマは衰弱してしまった:イタリアの首都にあっても一月のうち三週間を過ぎると日用品を買う事が難しくなる。食料の小包とスープ1杯が私的な福祉で行われている。国や市町村の手が届かないところに右派同様に左派の政治政党が、昔からカトリックのボランティアが行ってきた奉仕活動をする。だが奉仕の目的や動機はカトリックの活動と大きく異なることもしばしばだ。民主党の奉仕活動はローマ郊外の低所得層地区マリアーナやカザル・ボルトーネのカーサパウンド・イタリアのキャンペーンとは似ても似つかないという事は指摘しておく。旧イタリア共産党の後継者たちが失われた召命を求めて貧困層に接触しようと試みる。飢えと怒りが刻まれたイタリアで、次第に新しい現象“食料を支援する社会福祉政党”が生まれつつある。

 《数》

 統計局によると現在500万人が“絶対的貧困”状態にあり、このタイプの貧困は幾つかの基本的福祉にコンタクトすることができない。不法な仕事によって多少不正確なデータとはいえ、緊急事態である事には変わらない。コルディレッティは2017年イタリアでは270万人が生活のために援助を求める事を強いられていると査定している。食糧援助の必要性は多数の感染源から発生する伝染病で南部に限った話ではない。ミラノではグラストソリオ、コルヴェット、ロゴレード、ォーレンテッジョ、コマシーナ、クアルト・オッジャーロ、ローマではマリアーナ、トール・ベッラ・モナカ、ボルガータ・フィノッキオ、サン・バジリオ、他の都市部の地区の多くが市町村管轄の生活基盤の確保が難しい状況に置かれている。ゴミやセカンドハウスにかかる地方税の脱税はもはや風土病だからだ。こうしてイタリアの郊外は非差別的で一般的な福祉といった基本的生活を支える抗体に欠けた状態であり続ける。近年、食料補助は善意の団体に完全に頼っている、ローマではサンテジディオ、ミラノでは食料銀行が基盤になってイタリア中の契約を結んだ多くの団体に食料を無料配給している。カリタスやイタリア赤十字もそうである。さらに国は新たな必要性に気付きつつある、コンセンサス市場が同時発生的に動くことに。

 サンテジディオは模倣すべきプロトタイプだ。トラステヴェレ地域の善意の一人、ジョヴァンニ・インパリアッツォはサン・ジョヴァンニの民主党との最初に会った時のことを語った:「地区の貧困層を知るために助けてほしいと私たちに尋ねました。私達は数人の高齢者を紹介しました…」昨年の12月から3月までラ・スペツィア通りにある民主党の支部は10人の浮浪者(イタリア人2名、ルーマニア人2名、マグレブ人6名)を迎え入れたBerlinguerの古い肖像画の前の道路下の大部屋にキャンプ用テントとスープを与えた:「こうしたやり方は簡単に駄目になる可能性があります、私達は総括的な方法を提案しました。もちろん他の活動もあります、カーサパウンド・イタリアの事ですが、彼らの対象はイタリア人だけなので。」

 《右派》

 とはいえ、“3千年紀のファシスト”達の部隊は暴力的で卑劣な行動を改めようとしている。トッレ・マウラでロムのためのパンが踏みにじられる事件が起こった時、ルカ・マルセッラは厳しく反論した。「人々はサロンでテレビを見ながら郊外のことを話している間に私達は最貧困層を支え続けている」オスティアのカーサパウンド・イタリアの議員は述べた。オスティアは彼らが幾度も選挙戦で目覚ましく勝ったところだ。「政治家や知識人を招待します。彼らは私達をトッレ・マウラのことで責めたが、何人の見捨てられたイタリア人がカーサパウンド・イタリアで希望を取り戻したか見に来てください。」オスティアでは毎週火曜にプッチ・ボンカンビ通りの活動拠点から貧窮者(イタリア人のみ)のもとに食料の小包が届く。ローマ東部やイタリア中に点在する活動拠点で同じ場面が毎週繰り返される。ミラノでは極右グループのレアルタ・エ・アツィオーネに関係するBran.coが全く同じ活動をし、カタンザーロからウーディネ、フィレンツェからジェノヴァまで約10の都市でこれに準ずる活動をしている。

 《ヴェスヴィオ火山の麓》

 ナポリのスカンピア・デッレ・ヴェーレ(訳注:イタリアでトップクラスの荒んだ貧困地域として知られている)での食糧援助に政党色はない。ジュード・スター・クラブ(柔道クラブ)の指導者ジャンニ・マッダローニがベビーギャングの卵たちを更生させ、カリタス・ディ・ヴォメロと食料銀行から提供された食料を週2回配給する。今ではマッダローニ自身の意思とはかけ離れて莫大な政治資金が入り込み、デ・マジストゥリス市長と論争になることが頻繁にある。ヴェスヴィオ山の麓では寛容な民衆とは対極に位置する存在、エマヌエレ・フィリベルト・ディ・サヴォイア(イタリア最後の王の孫)が政治の世界で大躍進し、ピッツォファルコーネ地区とサンタ・ルチアのパッロネット地区にも食料銀行を組織中だとイル・マッティーノ紙に語った。とはいえこの貴族の末裔が所属していない援助機関の名前で全て行われている。ナポリのカーサパウンド・イタリアもコッレッタ・アリメンターレ(この商標で食料銀行は年に1度食料の寄付を受け付ける)を使って同様の活動をしている。ネオ・ファシストたちは郊外のスーパーマーケットの前で許可なしに商標を使う:ヴァッレラーノで最も寄付集めに熱心だった男たちの一人がフランチェスコ・キリコッツィ(カーザパウンド・イタリアの顧問)でヴィテルボにある事務所内で36歳の女性をレイプした件で逮捕された。レイプ事件の後、事務所が閉鎖されたとき復活祭用の卵のケースがあった。

 《宣伝》

 違法宣伝は残念ながら広まっている。カンパーニア州で食料銀行は12以上の慈善的援助団体への供給を打ち切らざるを得なかった。これらの団体はほぼ全ての政党の宣伝と引き換えに食料を供給していた。食料銀行は欧州系の団体に向かってある規則を定めた:5月26日、来週の土曜日からは倉庫からシーチキン1カートンすらも出さない、各選考前の10日間食料の配給は政治利用を避けるために休止する。結局、この話が始まったサンテジディオの食堂に戻らないといけない、条件も損得も関係ない助けを味わうために。あるいはフィネラオリ通りで火曜日に配られる食料の小包:“調理用”は家にオーヴンがある人用、“調理不要”は路上生活者用でシーチキン缶、豆とビスケットが入っている。だが苦しむ人たちの列にまで、羞恥に目を伏せるような私たちの生活の毒がそっと偲び込む。「ローマ在住のイタリア人が訊くことがますます多くなっています、どうしてあの古着をイタリア人にあげる前に外国人にまで与えるのかって」とあるボランティアは語った。

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