Accademia Italiana

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唐木 麻美 )

イタリアにやってくる難民 ‐カラビニエーリ創立200周年②‐

イタリアのランペドゥーサにはチュニジアなどから粗末な船に乗った難民が毎日のように何百人とやって来ます。定員オーバーな船が転覆して半数以上が亡くなってしまうなど悲劇的な結末を迎えることも珍しくありません。

今ではイタリアは命がけで海を越えてくる難民の玄関口になってしまい、難民に対して門戸を狭めている他のEU諸国と難民の板ばさみになり、政府は対応に大変苦慮しています。難民受け入れは社会にとって有益なのか、あるいは犯罪の増加など問題を抱えることになるのか、イタリアでも結論が出ない議論になっています。

さて、そのイタリアにたどり着いた難民の多くは不法・合法問わずイタリアからより豊かな経済力のあるドイツやその他EU諸国を目指しますが、もちろんそのままイタリアに定住する人々もいます。2014年6月のIl Tempo紙にカラビニエーリ創立200年記念に関連して移民に関する興味深い記事が掲載されました。

『イタリアにいる移民第3世代がビン・ラディンの後を継ぐ

(記者の質問に答えているのは)ROS (Raggruppamento operativo specialeの略称、カラビニエーリ(憲兵隊)所属の特捜班) のマリオ・パレンテ総隊長。彼は24年間イタリアや外国の組織犯罪&テロと毎日戦ってきました。ROS(特捜班)は1990年に正式に発足し、以来マフィア関連の犯罪、麻薬取引、テロを捜査する中心的な役割を担っています。(中略)

記者:ここ数年でイタリアの組織犯罪はどのように変化したのですか?

パレンテ:最近のマフィアは本来の地理的な縄張りを徐々に失いつつありますが、それと同時により広範囲の国際市場に入り込むために高度に専門化された柔軟な組織に変化してきています。EU諸国やEU以外の国々の(犯罪組織の)的確な協力を得て、イタリアの犯罪組織、特にンドラゲラは国際的に大きな麻薬取引の運営やそこから得られる利益をすばやく組織に取り込むことができるようになりました。また専門化する一方の犯罪を円滑に運用するために技術的にも著しく変化しました。例えば捜査の裏をかくためにインターネットをコミュニケーション・ツールに使うことなどです。

記者:それでは捜査方法もまた変わってきているのですか?

パレンテ:国を股にかけた犯罪が増加する一方であることから、捜査が国境を越えることが頻繁にあり、国際的に協力することが大事なのです。このような方針に沿って何年も前から捜査班が外国の警察と定期的に連絡を取ることはとても意味があります。最近の捜査はFBIや王立カナダ騎馬警察と緊密に連携して行われ、特に麻薬取引分野においては、共通で証拠固めをすることでカナダやアメリカで活動するイタリア・マフィアの実態を解明することができました。外国人の同僚と連携して作業することで、大洋を超えたマフィアの犯罪を再構築することが可能になるのです。

記者:外国の犯罪組織がイタリアの犯罪組織にどのように関わっているのですか?

パレンテ:ここ数年イタリアの犯罪現場では、外国の犯罪組織が様々な不法利益を得るために複数のマフィアと同盟関係を結び、構築的に良く組織された民族的母体である(旧来の)犯罪組織を陵駕していることが明らかになっています。捜査をしていると、このような集団が用いる麻薬や武器の密輸及び人身売買のルートは、明らかに国境の壁を超えた性質の犯罪であることが特に良くわかるのです。 このような状況で、Rosが行った数多くの捜査からも明らかですが、複数の民族間でナイジェリア人のグループが特に重要な役割を担っていることが判明しています。彼らはアフリカの複数の国の村から若い女を徴収しイタリアの様々な地域で性的に酷使する人身売買ルート全体を組織するグループをばらばらに解体しました。他の犯罪集団、特にアルバニア人、コソボ人、ルーマニア人のグループは東欧から連れてきた女性に売春をさせて搾取する以外に、非常に暴力的なやり方で強盗をはたらくなどの犯罪行為をにも手を染めています。

記者:より国際的に、より暴力的になる犯罪に日々立ち向かうためにRosはどのようにしているのですか?

パレンテ:Rosは、二つの県にまたがる組織犯罪を手がける警察、中央本部警察、イタリア全土にすでに配置されていた1970年代にカルロ・アルベルト・ダッラ・キエーザ将軍が作ったテロ対策システムの後継部隊、この3つの部隊を規定する法律とともに1990年に設立されました。 これら3つの部隊を土台に、様々な活動部門において専門化された本部と末端を繋ぐ手助けをすることでRosの権限は徐々に広がりました。 目下Rosは国内・国外のテロリズム、武器の密売、資金洗浄、人身売買、マフィア関係の犯罪と一般的な組織犯罪を扱う部隊に属しています。また近年は社会に大きな影響を及ぼす犯罪、いわゆる「暴力犯罪」に対処する新部隊も創設されました。Rosのあらゆる活動は情報工学やテクノロジー分野の専門家によってサポートされています。部外秘にされていましたが、専門家の助力を得てようやくマフィアの資源を調査し、この5年間だけでも20億€(2、740億円相当)を超える価値の資産を差し押さえることができました。

記者:あなたが指摘したように、様々なRosの任務のなかにはテロリズム対策も含まれているのですね。イタリア国内では現在どのような国際テロリズムの脅威があるのでしょうか?

パレンテ:オサマ・ビン・ラディンの死後、アルカイダはどんどん世代交代し、Webを通じて肥大するジハード思想が蔓延するネットワークでテロを計画し実行するという権力集中的な組織に変化しています。このような進化はヨーロッパで生まれ育った人間(移民の2世、3世や改宗した人たち)がテロを計画実行する、すなわちホームグロウン・テロリズムと言われています。このテロは、計画が早く実行されること、組織との連携を欠くこと、またとても潜行的なので事前に察知することが難しいのです。部隊の活躍によって、ジハードを信奉する単独犯は攻撃する対象を選び、攻撃方法をインターネットで入手し、自主的に行動に移すことが分かっています。

記者:しかも志願兵もいますよね。

パレンテ:ええ、外国人戦闘員と呼ばれる人たちで、これは別の脅威ですね。彼らは戦争で戦った後、戦闘で鍛えられたテロリズムや軍隊経験を携えてヨーロッパの故国に戻ってきます。このような図式をもとに、Rosは国内部隊と共同で過激化する危険がある対象を選別し、イタリアを通過あるいは帰還する帰還兵を監視する、活動を広範囲に行っていくことをになりました。』

病院や滞在のための施設運営など難民受け入れにかかる費用はイタリアが負担しています。大きくなる一方の負担はイタリアの納税者にとってあまりにも重く、先のEU議会でもレンツィ首相は「イタリアだけがEUの国境を守るのはやりきれない」と力説しました。

難民の国籍は様々で、またかれらの出港地は通常はチュニジアということですが、そのときの社会情勢によっても変化します。難民を受け入れることは社会にどのような変化をもたらすのか?難民や移民の第1世代が老齢に入り、第2‐第3世代が社会で活躍するようになった近年、イタリア(もちろん欧州も)では移民の存在価値について果てしない議論が続いています。

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