Accademia Italiana

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唐木 麻美 )

イタリアと経済と文化 ②

厳しい寒さも終わりを告げつつありますが、イタリア経済も切れ者の若い首相の指揮下、春を迎えることができるでしょうか?ある調査では安定しない政治に苛立ちを募らせているイタリア国民の半数以上が生活の貧困化を感じていると回答しています。待ったなしの事態改善のため若い首相の手腕に是非期待したいです。

2014年1月 Federculture (国家の文化活動を促進するために1997年に設立された協会)から発表された2013年度年間報告によると「経済危機の影響で100人中39人が文化的な活動を全くしていないないことが分かりました。しかも1年間で本を1冊も読まない人が3%います。…文化活動をしない人の割合は2012年に比べて3,7%増加しました。…イタリアの美術館や博物館のデジタル化も遅れています。全体の3%しかスマートフォンやタブレット対応のアプリを用意していません。見学者のためのオーディオガイドが用意されているのは全体の6%のみ、またオンラインのカタログがあるのは13%でしかない有様です。このような状況よりさらに遅れているのは南部です。文化的・創造的な活動のための家計からの支出は平均値8,5%をはるかに下回り5,7%でした。」

実は今年の年間報告を待つまでもなく、このようなライフスタイルの悪化に警笛を鳴らすレポートは昨年からありました。 2013年7月のレプッブリカ紙に掲載されたFederculture 関連の記事を見てみましょう。

「イタリア人が映画館や博物館(美術館も含む)から逃げ出している。文化活動のための支出が初めて前年を下回る:年間30億€(約4260億円)の減少。家計の節約と地方法人への交付金の削除が各イベントを直撃。スポンサーも減少。 ちょっと活気がなくなって、ちょっと無知に… こんな風に経済危機は我々を悪化させた。読書を控え、映画館や劇場に行く回数を減らし、クラシック音楽は切り捨てて、展覧会や博物館・美術館からは遠ざかる、美が萎んでいくのを指をくわえて見ているしかないみたいに。我々イタリア人は10年間(経済の低迷に)勇敢にも耐えてきたが、ついに文化活動のための支出まで放棄した。

2001年から2011年にかけて家計の支出はいっせいに26,3%以上増加傾向にあった。2008年の経済危機が始まったばかりの頃や、2011年に国から地方自治体への交付金が削減されたときも、家計の購買力が大幅に減少したときも同様に支出は増加していた。しかし昨年は勝負を投げてしまったのか:12ヶ月間だけで4,4%の減少とは。

市民の文化活動に充てる支出は2011年の720億€(っ約102,240億円)から2012年の689億€(約97,838億円)に後退した。…すべての収支が悲観的だ。劇場へ行く人が8,2%減り、博物館・美術館へ行く人は6%、昨年は平土間責が満席だったクラシックコンサートへ行く人は23%減り、今や4席に1席が空席。公共の文化施設を訪れる人は3,600万人だったが2011年には4,000万人で9,5%の減少した。

他国の首都や大都市と比べると状況はさらに惨めだ。最近ローマで企画された10の展覧会を訪れた人は1,300万人でしたがパリで催された同様の展覧会には3,600万人が訪れ、NY では3,900万人、ロンドンでは4,300万人だった。イタリアという国の魅力が薄れていくということは Country Brand Index(世界中の国の価値を毎年評価している)のトップ10から外れるという結果をもたらした。たった1年で10位から15位に転落したのだ。

いったい何が起こったのか?

収入が大幅に減ったことは自明のことである。支出の見直し作業が文化活動に関係する国の予算を滅茶苦茶にしてしまった。文化活動のため予算は今日では国家予算全体のわずか0,2%しかない。倹約の必要性から2006年から2010年にかけて各地方自治体は8%、州政府では13%予算を削減した。スポンサー市場も2012年は前年比マイナス8,2%と大幅に下落した。とりわけ各企業はスポンサー事業を11%減らし、銀行の基金は18,8%減少した。

それぞれの企画を魅力的にするために必要な財源が確保できていないことは明らかだが、Federculture のロベルト・グロッシ会長は本当の問題は別なところにあると言う

「文化活動を欲する気持ちは存在します」と念を押した上で、「しかし戦略がないのです。この国では何年も前から政治もなければ文化もありませんでした。こんなことを言うのは残念ですが、伝統的政治は後退し、荒廃するに任せ、経済危機の最中にあっても文化は開かれているべきだということを理解していなかったのです。私たちは戦後から抜け出し、G8の仲間入りをした以上、苦労して獲得されたアイデンティティはその見返りであり、文化的成長は経済的・社会的成長でもあります。」

地方自治体への交付金削減の一方で、グロッシによれば最大の官僚政治を通じて文化活動を監視しようとする悪意があったという。「2011年の政令78条について話しましょう、これは地方法人に新しいサービス事業を立ち上げることを阻止するものでした。政府の規定が地方法人の手足を切ってしまったのです。」

Federculture の報告はこう締めくくっている:今、一時も早く目覚めなければいけない。文化の輝きはもはや我々を守るのに十分ではないのだ。「瓦礫の山と化していたベルリンが“永遠の都・ローマ”を追い越して国際的観光都市として脚光を浴びるなんてちょっと前まで考えられなかった。2012年もドイツは雇用・企画・福祉のための創造性に溢れる文化事業に投資し成功した。その結果はドイツ経済に1,370億€(約194,540億円)の付加価値をもたらした。この数字はイタリアの758億€(107,636億円)のほぼ倍である。」

文化はその国の精神であり、一度失えば容易には取り返しがつかないほどかけがえのないものです。経済危機につぶされないで発展する戦略をたてて着実に実行し、この経済危機に立ち向かって欲しいと強く願います。

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