Accademia Italiana

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唐木 麻美 )

電子タバコと喫煙

先日の報道で電子タバコに課税する案が検討されていることを知りました。翌日には課税案に反対する記事が掲載されたので、このタバコがイタリア人の間に幅広く浸透していることが窺がえます。

電子タバコは近年イタリアでティーンも含めて流行している器具です。一見すると普通の紙巻タバコですが、充電式バッテリーが内蔵され、専用のソリューション液を熱して蒸気を吸引するための道具です。ソリューション液の中身は水、プロピレングリコール、グリセリン、ニコチン、各種ハーブです注1。蒸気は従来のタバコに似た風味がありますが、タバコを燃やして吸引するものではない(燃焼過程で出るタール、多環芳香族炭化水素などがない)ため理論的にはガンになるリスクが低いといわれています。

さて、この電子タバコについて

イタリアの高等医療機関( Istituto Superiore di Sanita' )によるとまったくの無害とはいえず、4月2日付けの規定でそれまで16歳以上に販売認められていた年齢を18歳に引き上げました。また若年層まで巻き込んで近年稀に見る一大ブームを引き起こしているこのタバコについて見解を述べています。

しかもこのブームは新しい動詞 "svaporare" (電子タバコの蒸気を吸引すること)まで生み出しました。

一年前のデータによると人口のたった5%しか電子タバコを試したことが無かったのに、その数ヵ月後には7、3%に上昇、現在では疑いもなく数値は更に上がっているでしょう。またヨーロッパの主だった輸入業者の2012年度の売り上げ(イタリアのみ)は8千万ユーロだということです。イタリア全土で専門店は1100店以上、スターターキット(バッテリー充電器、お試し用ソリューション液、電子タバコ本体のセット)の値段は最低30ユーロです。

なにしろ従来のタバコに比べてとてもヘルシー、煙は出ないし、灰も残りません。約10種類のソリューション液から好きなもの選択できます。また喫煙者全体の3%ほどですが、ニコチン抜きのハーブ風味を楽しんでいます。しかも現行の法律でタバコを禁じられている場所でも "svaporare" できます。ただし幾つかの公共の施設、Trenitalia (イタリアの鉄道機関)、Alitalia (アリタリアで)は電子タバコの喫煙を制限しているのでご注意を。

イタリア人喫煙者でも禁煙したい人や今までのタバコに飽きてしまった人が電子タバコに乗り換えることも多く、さらには親が害が無いということを確信して子供に買ってあげることもあるそうです!14%のイタリア人はこの新しい蒸気吸引機が健康に害を及ぼすのではないかと危惧していますが、47%はまったく無害だと考えています。でも本当にそうなのでしょうか?

長期的且つ客観的なデータが少なすぎる現状ですが、高等医療機関の見解は「電子タバコは公共医療にとってやっかいな問題を引き起こしています。電子タバコは従来のタバコに通じる道への最初の一歩になりかねません...」また European Respiratory Society は「これらの製品は健康にとって大変危険です」といっそう厳しい見解をとっています。なぜならソリューション液に含まれている物質にさまざまな毒素を含まれている可能性があるからです。

ところでイタリアでは従来のタバコの喫煙人口は年々減少しています。15歳以上のイタリア人の喫煙者の比率を見てみましょう。

2011年 22,7%

2012年 20,8%  

このように一年でかなり減少しています(2010年から2011年も-1,8%)。また一日の平均喫煙本数は13本で、この数字も減少の一途を辿っています。1965年から1990年代まで男性の喫煙者が急激に減少する一方で、それと反比例するかのように女性の喫煙者が増えました。しかし2000年ごろから男女問わず喫煙者全体が減少傾向にあり、年々最小数値を更新しています。

健康に向けて着々と歩みを進めるイタリア、もう喫煙者が多くて先進国なのに第三国みたいと嘆く必要はありません。もっとも2012年3月の新聞記事では、「頑固なタバコ愛好家はたとえ経済状況が苦しくても... 家計を何とかやりくりするために削らなければいけないリストの最後から2番目にタバコが載っていても、タバコを止める気はさらさらない」ということですが。

従来の喫煙者は忠実な愛好家をのぞいて徐々に減っています。でも減少している数値の中には電子タバコに乗り換えた人も多く含まれていると思われます。さらに従来のタバコを知らない若年層も巻き込んで、イタリアの電子タバコ市場はこのまま拡大し続けるのでしょうか?

電子タバコの健康に及ぼす影響に関するデータが十数年後に現在よりはっきりと分かったとき、人々はどのように反応するのでしょうか?

 

注1 日本ではニコチンを含まないハーブのソリューション液のみ販売されています。

 

 

 

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