Accademia Italiana

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唐木 麻美 )

3月31日は Pasqua (復活祭)です ①

ここ数日は満開のさくらに陶然と見とれる方々も多いのではないでしょうか。

日本では美しい桜が可憐な花をたくさんつけるとき、イタリアではキリスト教で最も重要な行事の一つ、 Pasqua (復活祭)を祝います。復活祭というのは文字通り、磔にされたイエス・キリストが原罪を背負う人々を救うために3日後に復活したとされる日のことです。日本ではイースターという呼称のほうが馴染みがあるかもしれません。

よく知られているように復活祭の日は毎年違います。また同じキリスト教であってもカトリックは3月31日、ギリシア正教会は5月5日というように各宗派が採用している暦によっても違ってきます。

毎年違うなんて煩わしい…という指摘は多々ありますが、復活祭の日は毎年の月の周期(月相)によって異なります。また四旬節やペンテコステなど他の祭事の日程及び教会暦は復活祭の日によって定められます。

ところで、キリスト教の復活祭の根の一つはユダヤ教にあるといわれます。

ユダヤ教の重要な春の祭事 Pesach (ペサハ) は預言者モーセが奴隷状態のヘブライ人(ユダヤ人)を解放したことを記念して祝われますが、最近の研究でイエスの磔はユダヤ教のペサハの前日譚に一致するということです。

ではヘブライ人がエジプトを脱出するとき何があったのでしょうか?

神の恩寵を受けた眉目秀麗な預言者モーセ。出エジプト記によると、エジプトに戻ったモーセは奴隷状態のヘブライ人を解放するようファラオに求めます。ファラオがそれを拒否したため、十の災いがエジプトに降り注ぎました。最後の十番目の災い、ファラオの子供を含むすべてのエジプト人の男子の初子が死ぬという悲劇にいたってファラオはようやくヘブライ人がエジプトを去ることを許します。

十番目の災いが神によって実行される夜、神はモーセに子羊のいけにえの血が塗られていない家に災いが実行されると告げました。こうして家の戸に子羊の血が印として塗られてる家は神の災いを免れたというエピソードから、ペサハ(過越際)と称されるようになりました。

またヘブライ人がエジプトを脱出する間、無酵母パンを食べたことを記念して現在でもペサハに無酵母パンは欠かせません。このためペサハは別名「 Festa degli azzini (無酵母の祭日)」とも称されます。

ユダヤ教にとってペサハは奴隷状態のエジプトを出て、新たな約束の地へと出立する記念すべき大事な日です。

ですからユダヤ出身のキリスト教徒たちは、セム族(ユダヤ人)のペサハを祝った後でイエスの復活を祝いました。こうして「イエスの復活」という新しい重要性がペサハに付与されました。

その一方で異教徒出身のキリスト教徒は一年の全ての日曜日を大事にし、敬意を表していました。

この両者の違いは大きな混乱と争いを招き、紀元後325年のニカイア公会議にて「復活祭は春分の後の満月の最初の日曜日に祝う」ことが決定し、さらに紀元後525年「復活祭は3月22日から4月25日に祝わなければならない」と定められ、今日のような形になりました。

イタリアの Pasqua では復活祭にチョコレートの卵と焼き菓子 colomba注1 (白い鳩)を頂きます。スーパーなどで売られているチョコレートの卵の中は空洞で、小さなおもちゃやアクセサリーが入っています。大人でも卵を割るときわくわくする楽しい仕掛けですが、かつては本物の卵をカラフルに色付けして贈り物として交換していました。現在では高級なチョコレート卵にイエス生誕を表した深彫りレリーフのような細工を施すなど、食べてしまうのがもったいないようなチョコレート卵もあります。

また最近では日本でも目にすることが多い colomba は平和の象徴の白い鳩を模った焼き菓子です。干しブドウなどを入れて焼いた素朴なお菓子ですが、この時期にしか登場しない時季もののお菓子です。

寒い冬が終わり、暖かい春の匂いを胸いっぱいに吸い込み、新しく芽吹いてきた緑に囲まれていると、「白酒+桜餅」や「チョコレート卵+colomba 」を春の女神に捧げたいとつくづく思います。

 

注1 colomba は平和の象徴ですが、普通の鳩は piccione と呼ぶことが多いです。 piccione は糞によって広場や建物を汚したり衛生上の問題を引き起こすなど、イタリアの都市部では頭の痛い問題です。広場や bar の外でお茶をする時は鳩にえさをやらないようにしましょう。

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