Accademia Italiana

本格的に学びたい方のためのイタリア語教室。アカデミア イタリアーナ

RUBRICA イタリアに関する情報とコラムをお知らせします。 時々イタリアでないことも。

唐木 麻美 )

Befana (魔女)のおはなしと、17番のおはなし 

Auguri di buon anno!

あけましておめでとうございます!

イタリアではベルルスコーニ元首相の返り咲き戦略の一環なのでしょうか、メディアに出ずっぱりです。彼はメディア王なので、所有するTV局で毎週のように日曜日のゴールデンタイムに出演するのは簡単なことなのでしょう。先日の新聞に モンティ前首相の 「増税しなくてはならないのは無責任な者たち(前任者のこと)のせいだ」 という言葉が載りましたが、まったくその通りだと思う人は多いでしょう。ただし経済状況がなかなか好転しない中での増税に、分かっていても苦しいというのが民衆の気持ちではないでしょうか。

 

それはさておき、1月5日~6日にかけての夜中、イタリアでは魔女 Befana が素敵な贈り物を携えて子供たちのところにやってきます。

Befana は年を取ったおばあさんの姿をしています。Befana の典型的な姿は

長くて幅広のくすんだ色のスカートにポケットが付いた前掛け

ショールを肩にかけて、

頭には大判のハンカチーフかぼろぼろの帽子をかぶり

使い古しのスリッパを履き、身に着けている物はどれもカラフルな当て布がされている。

ほうきにまたがって空を飛び、たくさんの贈り物をする。時に石炭を贈ることもあるが、邪悪な存在ではなく、

厳しくも寛大な魔女で、人々からとても愛されている。

 

Befana はキリスト教の公現祭(幼いイエスに東方の三博士が訪れたことに由来する、異邦人に対する主の顕現を祝う祭り。カトリックではクリスマス、復活祭、五旬節、Ascensione に並ぶ重要な祭り)の俗称です。しかし Befana の起源はキリスト教より遥かに古く、確実なことは良く分かっていませんが、 Befana にはキリスト教以前のさまざまな土着信仰や習慣、キリスト教的な要素や非キリスト教の要素が混じりあっています。

Epifania はギリシア語で「Manifestazione 顕現」を意味し、Befana という言葉もこれに関係があります。

Befana は女神 Diana (ダイアナ)で植物の成長に関係すると考えられたり、Satia あるいは Abundia と呼ばれた神秘的な神であると言われました。

古代ローマでは1月に Giano (ヤーヌス)神注1や Streina 女神注2に捧げられた祭りが行われていました。

12月から1月は、農耕の暦の中で特に重要な期間にあたります。ローマ皇帝アウレリアヌス( 後 214- 275 )は、12月25日の「太陽の祭り」から1月6日までの12日間はオークの木を燃やすことを絶やしてはならぬ、と布告しました。なぜならオークの木からできた石炭で次の年の運勢を占うことができたからです。 Befana がなぜ石炭を贈るのか、ちょっと分かるような気がします。

また、1月6日には女神 Diana (ダイアナ)が数人の随身(女性のみ)を引き連れて空を飛び、豊かな恵みを大地に授けると考えられていました。

キリスト教時代になって、教会は信仰を厳格に守る観点からこれを糾弾し、悪魔の所業であると決めつけましたが、民衆は納得しませんでした。

このようなことが幾重にも重なって、様々な化身が混じりあい、現在の Befana になったということです。

美しいDiana (ダイアナ)と随身の姿は醜悪に変われども、良き性質は今に残されていることから、Befana がどれほど民衆に愛される存在かをうかがい知ることができます。

 

注1 ヤーヌス神は古代ローマ神の中で最も古い神の一人。始まり、物質、非物質を司る。古代ローマ、ラテン人、イタリコ人の宗教では最も重要な神の一人。過去に Fegato di Piacenza (エトルリア語がかかれた羊の肝臓をかたどったブロンズ)を間違って解釈したため Etoruria の神 Ani と混同された。通常前後に二つの顔を持って表される。一月を意味するイタリア語 gennaio の語源。

注2 何人かの古代の作家によるとサビーヌ出身の女神。祭りの期間中人々は贈り物を互いに交換した。この習慣が後にクリスマスの贈り物を意味するイタリア語 stenna の語源になった。

 

さて、魔女ついでに17番のお話もさせていただきましょう。

数字の「17」は数秘術では無垢、感性、調和、優美、希望を表します。しかし「13」と同じく不吉な数字ともいわれ、忌み嫌われる数字でもあります。

イタリアの俗信ですが、「17=ローマ数字 XVII 」の綴りを、VIXI と置き換えるとラテン語の完了時制の動詞になり、イタリア語にすると「 vissi 」の意味になります。この動詞の形は現在では使われていませんが、vissi が vivere (生きる)という動詞の過去形=死 ということから「厄除けのおまじない」とか「不吉な数字」という迷信が生まれたということです。

しかしまた、この数字はある歴史的な出来事が起こった日にも関係しています。後1307年10月の金曜日、フランス王フィリップ4世はテンプル騎士団を全滅させるように命令しました。この日は13日なのですが俗信の熱狂的な支持者から17日が対抗馬として用意されたのです。

「17」を不吉な数字と見なすには他にも理由があります。旧約聖書には、大洪水は第2の月の17日(=第7の月の17日)に始まるとあります。

ピタゴラス学派も、彼らの考えからすると完璧な数字 「16」 ( 4 x 4 ) と「18」 ( 3 x 6 ) の間にある「17」をひどく嫌いました。

ルイ17世もまた、1795年のフランス革命で命を落としました... 等々

「17」にまつわるイタリアの俗信、実は日本の児童書に記されています。その児童書はファンタジーですが、魔女が唱える呪文はイタリア語かな、と思わせることが多々あります。ハリーポッターに出てくる呪文のなかにもラテン語っぽい響きがあるものがあり、ラテン語やラテン語起源の言葉(イタリア語、スペイン語など)の発音には聞く人を魅了する響きがあるのでしょうか。そういえばオペラ( イタリア語ではopera lirica と言います)の発祥も Napoli (ナポリ)でしたね...

 

 

 

 

 

 

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